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竜の末裔112話

2014-08-15 | 小説
大仰に名乗った甲冑男の全身から蒸気が湧き上がる。
「暑くないんですか?」
戦闘の最中ではあったが、先ほどからの疑問がつい口に出てしまった。
「暑い!暑いとも、少年!だが、暑さは気の持ちようでどうとでもなる!いまはこの戦いを楽しもうじゃないか!フェン・ルイム!」
ざわっと皮膚の下を何かが這いずり回るような悪寒。
なぜこの男は自分の名前を知っているのだろうか?
浮かび上がった疑問は、ランスローの振り上げた大剣の唸りにより霧散した。
とっさに後ろに飛び退る、と同時に大量の砂が巻き上げられる。
(これだけの重量の剣を軽々と・・・)
地に向かって降り注ぐ砂とは対照的に、高速の鋼が振り上げられる。
そして、まるで生き物のように上から、横からフェンの急所に飛びついてくる。
あたりの砂塵がおさまったとき、息一つ乱していないランスローと、急所こそはずしてはいるが、全身を朱に染めたフェンの姿があった。
「私の斬撃をこうも交わすとは・・・ やはり只者ではない・・・。だが、次は皮膚だけではすまんぞ!覚悟!」
(せめて武器があれば・・・)
一つ一つの傷からの出血はたいしたことがないが、傷口が多すぎた。
重たくなっていく頭で、フェンは解決の糸口を探していた。


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