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竜の末裔 第104話

2010-06-06 | 小説
耳をつんざく様な咆哮、同時に銃声。
一拍遅れて巨体が奥の茂みから躍り上がった。
蒼い光沢をたたえた美しいフォルム。
空の芸術と讃えられるその生物は、腹部よりの出血で朱に染まったまま上昇していく。
「ヤマト!」
ブランの叫びに被せるように、再び銃声が響く。
今度はサーガの足元の礫が弾け飛んだ。
「!」
怯えたシパックが逃げ出し、舞い上がった砂が視界を奪った。
更に追い討ちをかける銃声、サーガとフェンは身体が中に放り出される感覚を味わった。
「むぅっ。」
視界が晴れると、ブランの足元の砂が血を吸っているのが目に飛び込んできた。
とっさにブランが二人を突き飛ばしたのだ。
「大丈夫ですか!?」
「かすり傷だ。」
どうやらブランの右肩をかすめたらしい。
「そろそろ出て来い!私が相手になってやろう!」
ブランの怒声が響くと、茂みを掻き分けて四つの人影が現れた。

そのうちの二人が銃を持っている。
背の低い、拳銃を携えた男が口を開いた。
「ドラグナーズ部隊長兼龍皇国護衛兵長ヒルデブラン・エツィールだな。その首貰い受ける!。」
「人に名前を聞くときは、自分が名乗るのが筋ってもんでしょーが!!」
なぜか当人ではなくサーガが憤慨しながら応じた。
「我々はエイシア軍特務実行軍“七つの牙”。君たちみたいな不穏分子を暗に始末するのが役割であってね。」
拳銃男の傍らに立つ長身の男が、舌なめずりをしながら自己紹介を行う。その肩には背丈ほどの長さの銃を引っ掛けている。
「君たちをヴァルドに行かせるわけにはいかない。という命令を受けてね、排除しに来たのだ。それと、名高きヴァルドの護衛兵長の腕前を試しにね。」
「スナイプ兄弟か・・・。」
右肩を手早く布で縛ると、ブランが呟いた。
「知っているんですか?」
問いかけつつもブランの怪我に気を向けている。優しい少年なのだなと場違いなことを考えながら続けた。
「かつては名のある賞金稼ぎだ。あまりに残虐で討伐されたと聞いていたが。」
スナイプ兄弟は拳銃を使用する兄スコルピオ・スナイプとライフルを使用するスネーク・スナイプの賞金稼ぎ兄弟である。
狙った獲物は必ずしとめることで評判だったが、手段を選ばないことでも有名だった。
群集の中をを逃げ惑う賞金首に対して、拡散性の高いショットガンを発砲し、民間人に多大な被害を出した事件で賞金稼ぎから賞金首になった。
その後、討ち取られたという噂が流れていた。


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