「馬鹿にしないでよ!!」
部屋の中には女の金切り声が響いた。
女の正面に座っている婚約者の男は、ただ黙って地面を見つめている。
「いまさらうちの娘との結婚式を取りやめてくれなんて、どういうつもり!?」
「もう会場も予約してしまったし、招待客も呼んでしまったんだ!取りやめたいで済まされると思っているのか!?」
ヒステリックに怒鳴っている女の両隣では、彼女の両親も血相を変えて矢継ぎ早にまくし立てている。
しかし、男は黙って俯いたままだ。
「自慢じゃないけど、うちは会社をいくつも経営しているし、この子は才色兼備。もともとあなたなんかとつりあう相手じゃないってことぐらいわかっていたんでしょ!?」
「生まれが悪いと人間まで悪くなるんだな!なんていう腐った人間だ。裁判に持ち込んでがっぽりふんだくってやるから覚悟しろよ!」
それでも男は黙って耐えていた。
唇をかみ締め、こぶしを握り締めながら、ただ頭(こうべ)を垂れていた。
「何とか言ったらどうなの!?それとも他に好きな女でも出来たのかしら!?」
それまで、黙って話を聞いていた男は、この言葉を聞くとバッと顔を上げた。
「君がそんなセリフをはくのか!君の名誉のために黙っていようと思ったのに!!」
男の顔は、怒りのためか強張っている。
「最近、君の様子がおかしいと思って、ここ2・3日、後をつけさせてもらったんだ。」
そういうと、男は胸ポケットから何枚かの写真を取り出した。
その写真を見た瞬間、今までの勢いはどこへやら、女は凍り付いてしまった。
写真には、女が父親の経営する会社の役員と、ホテルから出てくる場面や、路上でキスをしている場面などが、はっきりと写されていた。
「本当はお父さんやお母さんには知らせたくなかったんだ!これは君と僕の問題だから・・・。それでも、君が幸せになれるならと思って身を引いてやろうと思ったのに!」
母親は青ざめ、写真と娘を交互に見比べている。
間違い探しでもしているのだろうか。
しかし、ただ写真の女が間違いなくわが子だと確認しただけに終った。
父親は、ただカッと目を見開いて娘の方を凝視している。
口元からは泡と共に言葉にならない言葉が吹き出ている。
「裁判ですか?望むところです。これではどちらが勝つか一目瞭然ですがね。ちなみに今の暴言の数々も録音させてもらいました。会社の信用もがた落ちですね。」
「貴様・・・、脅そうというのか・・・?」
「僕に何かしようと思っても無駄ですよ。僕に何かあったら、弁護士を通じて警察に連絡が行くようになってますから。この写真もネガは信用の置けるところに預けてあります。では、法廷で会いましょう・・・・・」
「ま・・・待ってくれ・・・」
立ち上がりかけた男の服の裾を父親が掴んだ。
「この通りだ、裁判沙汰だけは勘弁してくれ!金ならいくらでも出そう!好きな額を言ってくれてかまわないから・・・頼む・・・。」
「そんなことを言われても困りますよ。娘の教育を間違えたのはあなた方でしょう?しかし、そこまで言うなら考えないでもないなぁ。では、これだけの額を用意してもらいましょう・・・」
そういって男が提示した額は総資産の三分の一ほどもあった。
「いかがです?これで手を打てないというなら出るところに出ますが・・・?」
「・・・・・わかった・・・・・。言うとおりの額を出そう・・・。」
「では、この日までに指定の口座に振り込んでおいてください。その後は私にとってもあなた方にとっても会わないほうがいいでしょう。」
そう告げると男は婚約者の家を後にした。
玄関のドアを閉めるときに中から言い争っている声と、物を投げるような音が聞こえてきたが、もはや関係ない。
男は手帳を取り出すと、女の名前に線を引いた。
そのページには別の女の名前がいくつも連ねてあった。
「よし、一仕事終ったぞ。浮気性の女を見つけて結婚の約束さえ取り付ければ、あとは大金が転がり込んでくるということだ。後ろめたいのは向こうだから警察に通報することも無いしな。しかし、こういう女の親に限って娘の本性を知らないんだな。全くやりやすいぜ。」
部屋の中には女の金切り声が響いた。
女の正面に座っている婚約者の男は、ただ黙って地面を見つめている。
「いまさらうちの娘との結婚式を取りやめてくれなんて、どういうつもり!?」
「もう会場も予約してしまったし、招待客も呼んでしまったんだ!取りやめたいで済まされると思っているのか!?」
ヒステリックに怒鳴っている女の両隣では、彼女の両親も血相を変えて矢継ぎ早にまくし立てている。
しかし、男は黙って俯いたままだ。
「自慢じゃないけど、うちは会社をいくつも経営しているし、この子は才色兼備。もともとあなたなんかとつりあう相手じゃないってことぐらいわかっていたんでしょ!?」
「生まれが悪いと人間まで悪くなるんだな!なんていう腐った人間だ。裁判に持ち込んでがっぽりふんだくってやるから覚悟しろよ!」
それでも男は黙って耐えていた。
唇をかみ締め、こぶしを握り締めながら、ただ頭(こうべ)を垂れていた。
「何とか言ったらどうなの!?それとも他に好きな女でも出来たのかしら!?」
それまで、黙って話を聞いていた男は、この言葉を聞くとバッと顔を上げた。
「君がそんなセリフをはくのか!君の名誉のために黙っていようと思ったのに!!」
男の顔は、怒りのためか強張っている。
「最近、君の様子がおかしいと思って、ここ2・3日、後をつけさせてもらったんだ。」
そういうと、男は胸ポケットから何枚かの写真を取り出した。
その写真を見た瞬間、今までの勢いはどこへやら、女は凍り付いてしまった。
写真には、女が父親の経営する会社の役員と、ホテルから出てくる場面や、路上でキスをしている場面などが、はっきりと写されていた。
「本当はお父さんやお母さんには知らせたくなかったんだ!これは君と僕の問題だから・・・。それでも、君が幸せになれるならと思って身を引いてやろうと思ったのに!」
母親は青ざめ、写真と娘を交互に見比べている。
間違い探しでもしているのだろうか。
しかし、ただ写真の女が間違いなくわが子だと確認しただけに終った。
父親は、ただカッと目を見開いて娘の方を凝視している。
口元からは泡と共に言葉にならない言葉が吹き出ている。
「裁判ですか?望むところです。これではどちらが勝つか一目瞭然ですがね。ちなみに今の暴言の数々も録音させてもらいました。会社の信用もがた落ちですね。」
「貴様・・・、脅そうというのか・・・?」
「僕に何かしようと思っても無駄ですよ。僕に何かあったら、弁護士を通じて警察に連絡が行くようになってますから。この写真もネガは信用の置けるところに預けてあります。では、法廷で会いましょう・・・・・」
「ま・・・待ってくれ・・・」
立ち上がりかけた男の服の裾を父親が掴んだ。
「この通りだ、裁判沙汰だけは勘弁してくれ!金ならいくらでも出そう!好きな額を言ってくれてかまわないから・・・頼む・・・。」
「そんなことを言われても困りますよ。娘の教育を間違えたのはあなた方でしょう?しかし、そこまで言うなら考えないでもないなぁ。では、これだけの額を用意してもらいましょう・・・」
そういって男が提示した額は総資産の三分の一ほどもあった。
「いかがです?これで手を打てないというなら出るところに出ますが・・・?」
「・・・・・わかった・・・・・。言うとおりの額を出そう・・・。」
「では、この日までに指定の口座に振り込んでおいてください。その後は私にとってもあなた方にとっても会わないほうがいいでしょう。」
そう告げると男は婚約者の家を後にした。
玄関のドアを閉めるときに中から言い争っている声と、物を投げるような音が聞こえてきたが、もはや関係ない。
男は手帳を取り出すと、女の名前に線を引いた。
そのページには別の女の名前がいくつも連ねてあった。
「よし、一仕事終ったぞ。浮気性の女を見つけて結婚の約束さえ取り付ければ、あとは大金が転がり込んでくるということだ。後ろめたいのは向こうだから警察に通報することも無いしな。しかし、こういう女の親に限って娘の本性を知らないんだな。全くやりやすいぜ。」
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