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俳人の夏井いつき氏の『子規365日』という最新刊の新書本を購入した。ありそうでなかった内容の本だろう。(研究書や地方出版物の中にはあるかもしれないが)
この時期に出版されたのは、来月が子規の祥月にあたる関係であろうか、などと思いながらざっと目を通した。
子規の句の中で人口に膾炙しているのが、たぶん「柿食へば鐘が鳴るなり法隆寺」であろう。
私がこの句を知ったのは小学生のときで、兄の修学旅行のお土産に書かれていたからだ。なんともおかしい(ユーモラスなということ)言い方(俳句という言葉も知らなかった)だなと漠然と思った記憶がある。
正直、だからなんだ、ということでもある。この思いは俳句に初めて接する小学生に共通の思いではないかと思う。十七音で何が伝えられるのだ?俳句ってどこが面白い?という思いなのだ。
この思いは真面目に生きていけば、いずれ改まる類の幼い思いである。人生の修行のなかで俳句のよさに気づくのである。だから俳句に熱中する方には高齢者が多いのだろうと思う。
その俳人の人生を知らずとも、己の人生のフィルターによって十七音を解釈できるようになるからだ。
さて、実は本書にはこの「柿食へば」の句は採用されていない。以下の柿の句が採用されている。
十月八日 柿
句を閲すラムプの下や柿二つ
十月九日 熟柿
カブリツク熟柿ヤ髯ヲ汚シケリ
そして子規が「柿食へば」の句を作ったとされる10月26日の頁では、以下の句が採用されている。
いなご
余所の田へ螽のうつる日和哉
夏井氏が「柿食へば」の句を外した訳は、有名な句はあえて採用しなかったということだろう。もっといい句が他にもありますよ、ぐらいのサービス精神からだろう。
「写生」の概念を俳諧に採用し「俳句」を創りだした子規の役割は極めて大きいものがあったのだ。
子規は35年に満たない人生で、約24000句を詠んだといわれている。
なお、夏井氏は子規と同郷のかたで、俳句甲子園などで有名な方である。