美島奏城  豊饒の海へ

豊饒の海をめざす、教育と文芸と風流に関する備忘録

日乘  小島なお 讃

2007年01月04日 | 歌人

 

平成19年1月4日(木)

 

 今日の日とおそらく何もかかわらず小島なお氏をかく語るかな。

 1度,この若き歌人(?)について書いておきたかった。 

 才能は磨いて初めて光るのだという証左のために。続く

  ※画像は角川短歌賞受賞の頃のもの

 

50回角川短歌賞受賞作「乱反射」50首より

エタノールの化学式書く先生の
            白衣にとどく青葉のかげり

なんとなく足早で過ぐ
         陽差し濃く溜れる男子更衣室の前

制服のわれの頭上に白雲は
           吹きあがりおり渋谷の空を

靴の白 自転車の銀 傘の赤 
            生なきものはあざやかである

 

噴水に乱反射する光あり性愛をまだ知らないわたし

名を呼べばふりむく猫の目に映る
             部屋とわたしとおだやかな今日

最終の電車は不思議な匂いして
           たとえば梅雨どきすぎた紫陽花

たくさんの贈り物にかこまれている夢をみる孤独な六月

 

角川短歌賞受賞第一作「深呼吸」30首より

 

ひっそりと鏡の中を影うごく冷たい雨の降る秋のあさ

みあげれば空いちめんのうろこ雲
             秋は巨大な魚となりぬ

 

クロワッサン  (産経新聞・平成18年3月19日付)

 

ふきぬける突風のなかのぼりゆく春の地下鉄A3出口

焼きたてのクロワッサンがおすすめです
          窓のかがやく喫茶店の春


予定のない日曜日朝はけだるくて
          日差しの溜まるソファーにすわる

 

 

 小島なおさんの短歌は,不定期(月に1度程)ながら産経新聞に掲載されている。母親の歌人・小島ゆかり氏が「産経歌壇」の選者の関係であろう。

 

 


日乘  宮柊二忌

2006年12月11日 | 歌人

 

平成18年12月11日(月)

 

冬晴れや飛行機雲に気を預く 奏城


 現代歌壇において,今もっともきらめく女性の一人・小島ゆかり氏,その小島氏の師にあたるのが戦後歌壇に大きな足跡をしるした宮柊二である。
 今日はその宮柊二の命日。昭和61年行年74,つまり今年は没後20年という節目になる。

 氏は大正元年,新潟県魚沼市(旧堀之内町)に生まれた。本名は肇といい,両親は書店を営んでいた。
 20代(昭和8年)で,北原白秋の秘書となり,昭和14年,27歳で支那大陸に「万葉集」を持参して出征し4年後に帰還。
 昭和21年処女歌集『群鶏』刊行。昭和28年(41歳)にコスモス短歌会の代表として,歌誌「コスモス」を創刊,生涯13冊の歌集を刊行した。
 全国各地に歌碑がつくられるなど,そのあたたかく叙情性の高い歌は今でも多くの人から愛されている。
 故郷魚沼には宮柊二記念館がある。

 

夢に立つ山紫水明雪白き八海山と清き魚野川

亡き父のありし昔の声のごと魚野川鳴るその昔恋ひし

冬の夜の吹雪の音におびえたるわれを小床にだきしめし母

  写真
  戦地にて 

『山西省』より

波の間に降り込む雪の色呑みて玄海の灘今宵荒れたり

まどろめば胸どに熱く迫り来て面影二つ父母よさらば
    

おそらくは知らるるなけむ一兵の生きの有様をまつぶさに遂げむ

麦の秀の照りかがやかしおもむろに息衝きて腹に笑こみあぐ

あかつきの風白みくる丘蔭に命絶えゆく友を囲みたり

ひきよせて寄り添ふごとく刺ししかば声も立てなくくづれをれて伏す

 

 




日乘  家持と布袋葵

2006年08月28日 | 歌人

 

平成18年8月28日(月)

 

民法テレビスタートの日(昭和28年,日本テレビ放送開始)
バイオリンの日
気象予報士の日

大伴家持 忌(歌人・,『万葉集』撰者 行年67 旧暦)
道元禅師 忌(禅僧・曹洞宗開祖 行年53 旧暦)
淺井長政 忌(戦国武将  行年28 旧暦)
足利義昭 忌(15代室町幕府将軍  行年69 旧暦)
十返 肇 忌(評論家・小説家  行年49)
上林暁 忌(小説家  行年77)
ミヒャエル・エンデ 忌(独:小説家『モモ』『はてしない物語』 行年65)



石瀬野に秋萩しのぎ馬並めて初鳥狩だにせずや別れむ
(いはせのに あきはぎしのぎ うまなめて はつかりだに せずやわかれむ)
 (巻19-4249・大伴家持)
 
 
  石川寒巖「歌仙」(大伴家持) 水垣所蔵  
↑高岡市にある銅像              ↑石川寒巖画「大伴家持」

 

 画像はホテイアオイ(布袋葵・布袋草)。アメリカの熱帯・亜熱帯の原産で,布袋のお腹のような空気をふくむ袋ができるので,ホテイアオイ。夏には旺盛な繁殖力を発揮して,水面を覆い尽くす。水質を浄化する働きもあるので沼などでもよく見られる。

  私は毎年,数株を残し,あとは肥料としている。冬場の寒さに縮まった姿からは,夏場の勢いは感じられないが,また暑くなれば・・・・・・である。
  金魚鉢などにいれておくと,その根毛は魚の食料になり,すっかり根がなくなっているといったこともある。
  ・・・・・・そうそう,ためしに植木鉢に植えると,袋はしぼんでしまった。

  花はヒヤシンスに似ているので,英語では“ウォーターヒヤシンス”というようである。
 
 
 ↓夜撮ったもの

 
PS:ホテイアオイをどれほど集めたら人を浮かべることができるだろうか?
これ「トリビア」になる?