豪雨も一休みらしい。徐々に残暑が復活。
『俳句脳』(角川ワンテーマ21新書)は、脳科学者の茂木健一郎と俳人・黛まどかの共著。
俳句づくりの効能を脳科学の視点から解説したもの。俳句をつくることは、あの「アハ体験」をすることなのだ、というのが主旨。
3部構成の第1部は「俳句脳の可能性」
冒頭の言葉はありきたりだが、脳科学者がお墨付きをくれると、うれしいものだ。それは、
「ひとつの言葉を知るということは、ひとつの宇宙を知ること」
まさしくその通りだと経験的にも思う。新しい言葉によって過去を振り返ることもできよう。
言葉を知ることは、基本的にはよいことだし重要なことだが、不都合と思えることがあるにはある。それが新しい言葉によって、人を分類したがるレッテル張りだろう。
茂木氏はまた次のようにもいう。
「『意識は脳の中でどのように生まれているのか』を解き明かすこと、それが私のライフワークでもある。今回・・・(中略)・・・ある言葉に真正面から向き合うことでも、この「知覚の正体」へと近づくことができるということ・・・・・・それが、俳句であった。」と。
そしてさらに
「普段、日常で得ている『情報』を手放し、『体系性』から離れ、『現状維持』という考え方から離れることで得られる喜びが俳句脳の本質だ・・・」
「俳句的思考の特長である『小さなものへの慈しみ』や『ふとした瞬間の気持ちを的確に捉えること』は、論理的思考を優先する西洋近代には見られない、独自の伝統である。」
第2部は「ひらめきと美意識 俳句脳対談」というお二人の対談。
中表紙の写真
さくらさくらもらふとすればのどぼとけ まどか
正直、この対談は今一つ。1部での考察が興ざめというほうがいいか。
しかし、茂木氏の科学者の視点での発言は参考になった。やはり、別世界の人の視点で分析するというのはよいことだと思う。
黛氏の発言は俳句をかじった人であれば、失礼ながら、知っているし、まぁ考える類の内容である。
要するにお二人の志は素晴らしいのだが急いで作った本というのがわかってしまうのだ。
普通、こういう対談を噛み合っていないというのだろう。
それぞれの発言は良いのに、調和していないのだ。
3部は「俳句脳 -ひらめきと余白-」
大変納得のいく俳句論。黛氏らしい俳句の有り様を語ったわかりやすいものでした。(思わず敬体になってしまった)
俳句をかじった者ならば、ほぼ納得のいく内容。彼女の俳句へのあつい情熱がわかります。
となると、2部の対談がどうもということになりますか。
ともに人気のある科学者と俳人の「二物衝撃」は、うまくいったのかなぁ~。
俳句に興味のある人はぜひ読むべき本です。