※参考記録

日本百名山山頂宙返りを敢行中の【雪崩★マン】が綴る社会学的山岳エッセイ!

蔵王へ行きましたvol.3

2005年10月25日 | 山【mountain&climbing】
*世界の登山史上最高級の料理

 熊野岳は標高1840.5m
たいした高さではないが、東北の山だけあって冬の積雪量はかなり多い。
稜線上は風も強いし雪も多い。そんな山の山頂近くに避難小屋がある。
ここで昼食。東北の山の避難小屋らしく、外壁は石で出来ていた。
広さは標準的な避難小屋。10人ほどでいっぱいになる。
驚いたことにストーブが置いてあり、灯油も入っていた。

 レインウェアや手袋、ザックカバーなど万全の用意はしてきたが、
この雪と風でかなり凍えてたどり着いたので、
この小屋のつくりとストーブは心底頼もしく有り難かった。
otakumin氏にいたってはザックカバーも手袋も持ってきていなかった。
当然ザックの中身はびしょ濡れだ…。

 今回僕は招待された御礼に、誰も食べたことのないような
豪華な登山食をご馳走しようと考えていた。
たいていは携行性と保存性に優れたフリーズドライの食品が中心だが
日帰り登山だと荷物が少ないので食料に金も手間もかけられる。
生ものだってOKだ。
かつて避難小屋で「焼き肉」を焼いていた登山者に会い、おすそ分けをもらい
嬉しかったと同時に羨ましく、いつか山でそういう贅沢なものを食べてみたい
と思っていた。そして今回、焼き肉に勝るとも劣らない豪華メニューを考えた。
それが「しゃぶしゃぶ」
僕は山形だけに豪華な米沢牛のしゃぶしゃぶでもしましょう、と
otakumin氏に提案したが、彼は僕に気を遣ったのか牛肉を食べたくなかったのか
「豚しゃぶのほうがいいんじゃ…」と言うので、
前日に新宿伊勢丹で3種類の高級黒豚をぞれぞれ200gずつ合計600gも
購入した。加えて、春菊、白菜、エノキ、豆腐、うどん…などの
国産高級食材もゲットし、食材だけで3kg近くを持ち込んだのだ。
もちろん食器や保冷材、料理器具なども僕の担当。
ザックは10kgほどになったが、それでも普段行なっている
縦走登山に比べると格段に軽い荷物。
お互いほとんど酒を飲まないので、その分も軽く出来た。
代わりに食後のレギュラーコーヒーをふんだんに持ち込んだ。

 避難小屋内はストーブを囲んで豪華なランチパーティーの開催
次々に肉や野菜をつぎ込んで食べ尽くした。
 かつて僕は我が家で友人としゃぶしゃぶパーティーを開催したことがある。
そのときは松阪や近江などの高級牛肉を数種類、しかも
100gで500円くらいのものから数千円する超高級肉までそろえたが、
ある程度“肉らしい”食感、つまり硬さが無いと美味しく感じないことを
実感していた。
今回もそれは同様で、3種類の肉のうち、一番安い肉が美味しく感じた。
otakumin氏も同じ感想だった。

 嵐のなか、避難小屋でのランチ。外と中の状況を対比させながら
至福の時を過ごし、食後のコーヒーを飲んで15時頃帰路についた。
帰りも降る雪の勢いは弱まっていたが、相変わらず悪天候には変わりない。
全く眺望の無い、つまらない山行だ。これでしゃぶしゃぶが無ければ
嫌な思い出しか残らなかっただろう。
 ロープウェイ乗り場には30分で戻れた。
避難小屋で予定よりのんびり過ごしてしまったので
下山は16時を過ぎると思っていたが、なんとか16時前に下山でき、
麓の蔵王温泉に入浴して、19時前のバスで山形駅へ向かった。

 山形名物のそばを食べようと話していたら、ちょうどバスの車内広告
(アナウンス)で、駅前の蕎麦屋が紹介されていたので
そこへ行ってみることにした。駅の最終の新幹線の指定席を取ってから
そば屋へ。みなさんに紹介したいが残念ながら店名を失念した…。
ただし、場所は説明しやすく、アナウンスされていた通り、
山形駅前のNTTドコモビルの向かい
コンビニのローソンがあり、その斜向かいともいえよう。
なお、ローソンでそのそば屋の場所を聞いたが、若い男女の店員二人は
なんと知らなかった…。地図まで出して4人で顔をつき合わせて探したが。

 店の前には7~8台停められる駐車場があり、建物も綺麗。
店内は座敷とテーブル席合わせて40~50席くらいか。
気持ちよかったのは、店主らしきおじさん、ほかに店員のおばさん二人の計三人
みんな愛想がよく、薬味のおかわりも自由だった。
我々は名物だという「板そば」を注文。
これはつなぎを使っていない「十割そば」だが、大盛りを注文しようとすると
おばさんが「小でも普通のそばの大盛りくらいありますよ」というので
ビギナーの我々は『小』を注文した。さらにお腹が空いているというと
おばさんは「お得な『げそ天板そば』というのもありますよ」と。
板そば小は¥1,300だが、結構な量のげそやししとうの天ぷらの付いた
げそ天板そばはたった200円増しの¥1,500。迷わずこれにした。
 さて、出てきた「げそ天板そば」はおばさんの言うとおり大盛りで、
まさしく“板”というか、木製の長方形のお盆にそばを盛っている。
げそ天も量が多く、抹茶塩も付いていた。
付け合せの「わさびの漬物」も美味い!
肝心のそばはもちろん美味く、僕が今まで食べたどんな十割そばよりも
歯応えがあった。今までの十割そばはそばの香りはよいが、つなぎがない分、
ぱさついた感じがしてあまり好きではなかった。

 日本には他にそばの名所として「信州」がある。
僕は北アルプスへよく行くので、帰りに信州そばをよく食べる。
信州そばは板そばよりも柔らかく、麺が細い。
板そばは硬くて太い麺だ。そして気のせいかもしれないが、
信州のものより色が黒い気がした。
“うどんの国”で育った僕にはこちらの山形の板そばのほうが
口に合っている。
お昼にたらふく肉を食った我々だが、あまりにそばが美味いので、
つなぎを使った二八そばの「ざる」も追加注文し食べてしまった。
こちらも歯応えは十分♪

 帰宅したのは夜中の1時頃で、今朝(昨朝?)うちを出てから
19時間後だった。

蔵王へ行きましたvol.2

2005年10月25日 | 山【mountain&climbing】
*熊野岳周辺はかなりの積雪
 ちょっと露出をミスして暗い写真になってしまった

 いつもと同様ほとんど寝ないまま出発。始発の新幹線だからねェ。
行きはいつも興奮しているし、今回は同行者がいるから目は冴えている。
天気予報は「曇り時々雨」という、これまた“いつも”と同様でかなり悪い。
関東地方は「晴れ」で、車窓からは右側に朝日を抱いた筑波山が見えた。
宇都宮を過ぎた辺りから曇り始め、福島県へ入れば雨、
山形県へ入った辺りからはさらに強く降り始めた。はあ~

 山形駅前からバスで蔵王温泉へ。所要時間は約40分。
素人otakumin氏を気遣い、今回はらくらく登山を計画した。
蔵王はスキー場があることからロープウェイが3本も運行しており、
その中でも最も山頂に近い「蔵王ロープウェイ」を使用した。
蔵王ロープウェイは山麓線、山頂線と二つの路線を乗り継いで稜線へ出る。
特に昨年リニューアルされた山頂線は「フニテル」という
最新型の「自動循環式」のロープウェイで
二本のワイヤーを使用したもの。ちょうど人が手を上げて
頭上の二本のワイヤーをつかんでぶら下がったような格好で走行する。
山麓線は通常の「交走式」という一本のワイヤーからぶら下がるタイプ。
さらにフニテルは循環式で、これは下と上の各駅で停車後、
来たワイヤーを通ってまた引き返す交走式とは異なり、
停車後はカーブを描いて“反対ホーム”に入り戻っていく。
グルッと回って帰っていくのだ。うーん、動作を説明するのは難しいな。
あっ、そうそう、山手線(大阪なら環状線)と同じ動きのロープウェイってこと。
車体は18人乗りの小型で、それが数台あり、常にぐるぐる回っているので
交走式のように時刻表があり、数分か数十分毎にしか動かないわけではない。
ということは待ち時間がほとんどなく乗れる。
さらに、二本のワイヤーで支えているので安定性がよく、
風の強い山岳地帯ではその有能性を発揮するのだ。

 山麓線の上の駅は標高が1300mほどで山頂線へ乗り換えるとき少し外を通る。
そのとき下界より風が強いことを感じたが、山頂線を降りたら風はさらに強かった。
標高は1680mくらい。そして驚いたことにその景色は冬山だった。
真っ白である。積雪だ。下界では雨だったがここではそれが雪に変わっているし。
駅の周りは所々地面や登山道、木道も見えているが
蔵王最高峰の熊野岳へ向かって登り始めると10cmほどの積雪で、
風下で陰になるところでは20~30cmの積雪箇所もあり、歩行が困難になった。
駅ではこの雨の中、普通の格好をした観光客が数名凍えながら傘を差して
周辺をウロウロしていたが、登山道に入ると誰とも会わない。日曜なのに…。
だが、しっかりした踏み跡があるので、
今日熊野岳へ向かって歩いた人がいるのだ。
登山に招待されたとはいえ、行き先を選び、山行計画を立てたのは僕だし、
素人のotakumin氏を連れていく責任を負っているので
「やめましょうか」と聞いてみたが、彼はドンドン歩を進めている。
真冬には数mの積雪になるだろうが、今なら登山道が判別できるし踏み跡もある。
それに、山頂まで計画では50分ほどで着くというこれまで一番楽な山。
もちろん僕独りなら躊躇なく計画を実行している状況。
迷わず、行けるところまで行こうということになった。
そしてあっさり12時過ぎに登頂成功