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 本は私の人生の友・・・

『王とサーカス』

2016年01月26日 | 
著者 米澤穂信

2001年、新聞社を辞めたばかりの太刀洗万智は、
知人の雑誌編集者から海外旅行特集の仕事を受け、
事前取材のためネパールに向かった。
現地で知り合った少年にガイドを頼み、穏やかな時間を過ごそうとしていた矢先、
王宮で国王をはじめとする王族殺害事件が勃発する。
太刀洗はジャーナリストとして早速取材を開始したが・・・

>「タチアライ。お前はサーカスの座長だ。
お前の書くものはサーカスの演し物(だしもの)だ。
我々の王の死は、とっておきのメインイベントというわけだ」

>「お前の心づもりの問題ではない。
悲劇は楽しまれるという宿命について話しているのだ。
人々はなぜ綱渡りを見て楽しむのか。
演者がいつか落ちはしないかと期待しているからだと思ったことはないか?
ネパールは不安定な国だ。そして昨日、演者は落ちた。興味深いことだ。
これが他国で起きたことなら私も楽しんだかもしれない」


この本を読む前に、
同じ著者の『真実の10メートル手前』
(同じく太刀洗万智を主人公にした短編集)を読んでいました。
なので、主人公のジャーナリストとしての真摯な態度・考え方や、
そのために悩んだりすること(哲学的に思えました)を知っていました。
というより、著者のジャーナリストとは如何にあるべきかという思いを、
太刀洗万智の心を借りて表現しているように思いました。
王族殺害事件(実際にあった事件)の他に現地で起こった殺害事件を
主人公が推理して犯人を問い詰めますが、
『真実の10メートル手前』での主人公の推理も見事でした。
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