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 本は私の人生の友・・・

『坂の途中の家』

2016年01月11日 | 
著者 角田光代

刑事裁判の補充裁判員になった里沙子は、子どもを殺した母親をめぐる証言にふれるうち、いつしか彼女の境遇に みずからを重ねていく.....

>ごく ふつうの人に見えるからこそ、その事件は実際にあったのだと、里沙子は じつに生々しく実感した。そのことが おそろしかった。

>里沙子は先週から続く日々のことを思い出す。水穂という他人を、自分とは切り離して新たに思い描く。それでも やっぱり、彼女が子どもをブランド品のように思っていた鬼のような女には、里沙子には どうしても思えなかった。間違っているかもしれないし、自分の意見など反映されないかもしれないけれど、それでも、そのことを言いたかった。いや、言わねばならないと、この場に参加しなければならないと里沙子は今、思っていた。

>終わったのは裁判であるのに、そのようには思えない。何かが、たった今 終わった。終わる前には戻ることは できない。永遠に戻れない。里沙子は その喪失感と虚脱感の大きさに、静かに たじろぐ。

里沙子は幼い娘を義父母に預け、大変な思いをして裁判所に通います。
裁判員の中で里沙子だけが幼い娘を持った専業主婦で、被告人に生活環境が似ており、段々と被告人に自分を投影していってしまいます。
今まで疑問に思わなかった夫との関係などを深く考えるようになります。
キッカケは補充裁判員に選ばれたことですが、選ばれなかったら夫たちに疑心暗鬼な思いを抱かず、子育てをしていたことでしょう。
子育ては目まぐるしく1日が過ぎて行くので、深く考え事をする余裕も無いでしょうが、今回のように補充裁判員に選ばれなくても、いつか何かが起こって夫との関係を深く考えることがあるかもしれません。
補充裁判員に選ばれた出来事 しかり、人生には あるとき突然 何かが起こったりします。
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