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似顔絵(原節子・「生命の冠」有村絢子) (portrait SETSUKO HARA)

伝説の女優・原節子がデビューの翌年に出演した
「生命(いのち)の冠」(内田吐夢監督)のDVDが
月刊誌「新潮45」3月号の特別付録として発売された。
雑誌を買わなければ手に入らないので、3月号は1万部増刷したそうだ。
早速見てみる。
10代の原節子は、山中貞雄監督の「河内山宗春」と
山本嘉次郎の「ハワイ・マレー沖海戦」で見たことがある。
戦後の原節子しか知らない人には想像できないほどの美女である。
戦後だって美人だったのだが、何と言うか、
10代の若々しさと美貌が、天性の気品とあいまって、
この世のものとは思えない美しさである。
ちょっと、動いている姿でないとうまく伝えられないかもしれない。
しかし、遠目にも品の良さがオーラのように立ちのぼっていて、
ああ、これは伝説の女優になったのも無理はない、と思うのだ。
今回の映画は、樺太のカニ缶詰工場の物語で、
良心的な経営者である兄弟の妹役として、ごくつつましい演技をしている。
しかし、無言の演技にすら、15歳とは信じられない深い表情を見せて、
あの小津安二郎監督がヒロインとして使いたがった理由も納得するのである。
映画自体は縮約版らしく、どうにか筋が辿れる、といった程度のもので、
内田監督の力量からいって、カットされている場面にも
相当いいものがあっただろうと、それが残念でならない。
確かこの映画のスチール写真には、このDVDには無い、
広い大地に、赤子を抱えた原節子が佇んでいる写真があったように思う。
今は見られないシーンの原節子の姿を想像して、ああその姿を描きたかったなと思う。
今回は、数少ない登場シーンから、兄が工場の整理を決意し、
しかしまた新しい一歩を踏み出そう、という力強い言葉を聴きながら、
徐々に心強い気持ちになっていくという、無言のシーンでの表情。
これで15歳である。大女優だったのだな、と感じ入る。
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