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ショートストーリー

今は懐かしいフリッパーズ・ギターの音楽を聴いていたら
マンガを描きたくなったのですが、
ストーリーマンガは余裕がないと描けないので、
絵物語風にします。
彼らのファースト・アルバム「three cheers for our side」の
冒頭の曲、「Hello ハロー/いとこの来る日曜日」が
軽やかでリリカルな佳曲です(歌詞は英語)。

ある初夏の日曜日、母親が言う。
お前のいとこの女の子が駅まで来るから迎えに行きなさい、と。
自転車に乗って、森を抜け、丘を越えて行く。
歌を口ずさみながら。
お行儀よく「こんにちは」なんてあいつは言わないぞ。
僕のほっぺたをつねってから、やっと挨拶する。
そんな子だよな、あいつは。
夏の初めの空気の中を、うきうきとそんなことを考えつつ
僕は駅に向かう。

こんな歌をマンガ風に。

駅に着いたが、彼女は見えない。
「まだ来てねえのかよ。ルーズだな。まったくもう。」
ベンチに腰かけて、待つ。
後ろで口笛が一つ。
振り向いたら、


そんなのが挨拶かよお。



とまあ、こんな風によろしく始まりまして、
彼女は、しばらく僕の家で夏休みを過ごすことに。
もうそれは積極的にあちこち行きたがる子で、
近所のお祭りやら何やら連れて行くことに。
ほとんど振り回されている状態。



そしてある日、海辺のシーサイドパークに行くことに。
張り切る彼女。



水族館を見て、アイスクリームを食べて、
アトラクションの乗物に乗って、
食事をして、
そしてアシカやイルカのショーを見る。
水に濡れないようにポンチョを着る彼女。
格好つけて「平気だよ」とそのままの僕。
そこへイルカの大スプラッシュ。
ずぶぬれになった二人(彼女の服は大丈夫)を、
「撮ってあげるよ」と僕のカメラで撮ってくれた人がいた。
彼女は写真を撮りまくっていたのに、
僕は照れて、一枚も撮っていなかった。
この写真だけが、僕の手元に残った。




何十年も経ったある時、
この写真を僕は見つける。
彼女はどうしたんだっけ。
そうだ、アメリカに行った、って聞いてる。
元気にしているだろうか。
もうこんなことは忘れているだろうな。
でも今から思えば、
あんなに、心の中まで青空が広がったような日々は
その後もなかったような気がする。
一枚の古い写真を見ながら、僕はそんなことを考えていた。



ストーリーマンガにすれば、数十ページの作品になるだろう。
でもストーリーマンガは、時間と労力が必要で、
今の私にはその余裕がないので、
こんな形にまとめてみました。
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