人生の裏側

人生は思われた通りでは無い。
人生の裏側の扉が開かれた時、貴方の知らない自分、世界が見えてくる・・・

ネコ人間の生態(前)

2018-04-14 11:41:09 | 創作
私は探偵天野若彦。ある人物の素行を調べている最中で、早朝ある公園に来ている。
この男下照氏は、依頼人の話によると、いつもこの公園で何か恍惚の表情を浮かべて、ケッタイな動きをしているそうな...何でも絶対に姿を見せないという要人から、怪しい"ブツ"を仕入れて服用しているらしい...とのこと。
ベンチで彼が訪れるのを待っていると、いきなり姿を表したので驚いた。
ほとんど足音を立てず、スッ、スッと早足で歩くのだ。まるで忍者、いやネコだ。
ベンチに座ると、リラックスしながらもじっと周りの観察を怠っていない様子...こんなところもネコ染みている。
やっ...ポケットから何かを出すぞi 例のブツか...と思いきや、缶コーヒーだった。
そこに何かを混ぜるでもなく、安上がりの憩いの一時を楽しんでいるだけの様子だ。
瞑想か何かをしているようにも見える。すると、何やら首やら上体が勝手に動き出したではないか...と思いきや...ただ眠りこけてるだけであった。
そして、しばらくして目覚め、ネコのような大きなノビをして、スッ、スッと引き上げてゆく...それを観察していたら、"ワオi" 曲がり角で振り向いたのでビックリ...やはりネコみたいだ。

昼過ぎ、某所にある中古レコード店に姿を現す。
彼は非常に音楽鑑賞に熱心なようだ。LPレコードだ。中々、彼にしては不相応な貴族趣味じゃあないか?
目当てのもの以外は全く眼中に無いらしく、サッ、サッと素早く物色している...すると...とびっきりのエサを見つけたのか? もう、分かりきったような台詞が思い浮かぶ...「あ、あったぞi 目っけたぞi」
し、しかし...ジャケットを見ながら何故か固まってしまい、中々レジに向かおうとしない...
あ、財布の中身を確認したりしている...イヤ、ホントにビンボー貴族だな...迷っているのか、慎重なのか? やたらとその時間を費やすので、見ていてイラッとしてきそうだ。
して...私は衝撃的な場面を目撃したのであるi そのエサのレコード盤を別のセクションのコーナーに映し変えたのであるi 何というセコさであろう。
さしずめ、スイング.ジャズのコーナーから前衛ジャズのコーナーに移したかしたのだろう。
まるでネコがエサを砂で埋めて隠すのにソックリではないかi
結局、この度は観察、洞察を深めるだけで、そこを引き上げてしまった。

数時間経ち、再びそこに向かう彼を追っかける。"スタッ、スタッ"イヤ、その足の早いのなんの...脇目も振らず、店に入ってゆく...
金銭の都合が付いたのか、一大決心が付いたのだろう...一旦決心が付いたら迷いが無いようだ。何かに吸い寄せられるように、そのエサの隠し場所に赴く...こういうところがまるでネコ人間だ。ネコは実に慎重で無闇にエサに飛びかかろうとしないが、ある一瞬全心身を集中してその捕獲に取りかかるのだ。ネズミたちは行路のネコの攻撃をかわすことは出来ても、油断して帰路のネコの奇襲に不覚をとってしまうのだ。
し、しかし...
どうやら予期せぬ事態に見舞われたらしい...その台詞はこんなのに決まっている...
「な、無いi、な、何故だi、そ、そんなバカなi」
何度も、何度もその同じフェイクを施したコーナーを探している...「いや、待てよ、隠す場所を間違えているのか?」
その周辺も探している...執念深いというのか、諦めが悪いというのか...
やがて...天を仰いでため息をついた。「ああ、オレのエサなのに~」
結局、彼はネコのように狡猾な策略に溺れて、まんまとエサを"ネコババ"されてしまったのだ。
放心した様子で又も手ぶらで引き上げてゆく...
ポーカーフェイスのようで、あんな分かりやすい性格の人間も居ない。ネコ人間は何より表と裏の二面性があるのだ。

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