ソーシャルワークの TOMORROW LAND ・・・白澤政和のブログ

ソーシャルワーカーや社会福祉士の今後を、期待をもって綴っていきます。夢のあるソーシャルワークの未来を考えましょう。

要介護度認定の見直しに係る検証・検討会の結末について

2009年08月12日 | ケアや介護
 4月から始まった新たに要介護認定について、大幅に改正され、一部の基準は4月以前に戻すことが、7月28日に開かれた要介護認定の見直しに係る検証・検討会で決まった。私自身も3月に「介護保険を維持・発展する1000万人の輪」として、凍結を舛添厚生労働大臣に要望した立場からすると、考えさせられるものがある。

 今回の検証・検討会の結論は、ある意味では画期的なことであり、別の意味では反省すべきことの多いものであった。画期的なこととは、国が一度決めたことをここまで変えるのかという驚きである。このようなことはあまり見たことがなく、良い意味では、国も事実に合わせて柔軟な対応ができるものと評価できるし、悪い意味では、プリテストもなく新制度の実施に踏み切った慎重さを欠いたことが非難されることになる。

反省すべきことには、こうした制度改革には、ユーザー参加の下で、慎重な審議の下で進められなければならないことが、第1に挙げられる。第2に、今回の改正は、地域による要介護度認定のバラツキを少なくすることが目的としながらも、万が一要介護度の軽度化を意図していたとするならば、これは戒めなければならない。要介護度はそのものが国民にとって現状ではファジーなものに映っており、これを操作することで、財源の抑制を図ることになれば、国民から介護保険制度に対する基本的な信頼を失っていくことになると考える。

 但し、介護保険においては、財源問題は極めて大切なテーマである。これについては、正々堂々と、保険料、公費負担、要支援者、自己負担といった国民に見えるテーマで議論し、国民が納得いく形で財源問題の解決を図っていくべきである。

 ただ、要介護認定については、まだまだ課題が多い。本当に利用者のための介護保険制度にしていくために、短期の課題、中期の課題。長期の課題に分けて整理しておきたい。

 短期の課題は、10月から新しい要介護認定制度を活用することになるが、これで本当に適切な認定がなされるかかのチェックが不可欠である。今回は、軽度者について、従来に比べて軽度に出る部分に焦点が当てられたが、重度の要介護者と軽度の要介護者が逆転していないかや、それぞれの要介護・支援者にとって適切な認定結果に収まっているか、の検証を続けていく必要がある。

 中期の課題は、今回の要介護認定の改正の基礎には、従来の、利用者の能力から要介護度を判定する基準から、「介助の方法」(どの程度介助が必要か)という名称で、介護の必要度を調査項目に入れたが、このような判定基準はとりわけ、在宅の高齢者にとっては不可欠であり、評価するものである。しかしながら、こうした項目をもとにすると、家族の介護力が間違いなく大きく影響することになる。そうすれば、従来介護保険においては、理論上は家族の介護力に関係なく、サービスを利用できるとしてきた理論上の問題について、どのような対応するかの議論が生じてくる。その結果、「保険か税(消費税)か」といった議論にも繋がっていき、国民のコンセンサスを得るためには、社会全体で議論することが大切である。

 長期的な課題では、要介護認定制度そのものの必要性についてである。基本的に、ケアマネジャーも財源を適正に活用するためのゲートキーパー(門番)的な役割を果たしており、同時に要介護認定制度を実施することは、二重の門番制度をもっていることになり、効率的な仕組みではない。さらに、この検証・検討会に稲城市での在宅者の支給限度額と実際の利用額を比較したデータが資料として提出されていたが、現実には要介護2で47.5%と最も高いが、要介護5では17.9%であり、ほとんど大多数の利用者は支給限度額にははるか及ばない利用実績である。こうした実態からしても、要介護認定制度の在り方を見直すべく、検討が必要である。

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