虚無交換日記

神戸大学将棋部の住人たちによるブログ

令和3年度秋季個人戦振り返り①

2021-10-18 11:06:18 | Nの本
 2年くらい前のことになりますが、かつてコロナが蔓延する前には、某大学将棋部様が他大学との合同合宿というものを企画しており、私もその合宿に参加させていただいたことがありました。
 その合宿では棋力順に、A級、B級、C級で参加者を分けてリーグ戦を行っていたのですが、(ちなみに私はB級で参加しました)A級でかなりの好成績を挙げたX大学将棋部のYさんのとある発言が、私を大変驚かせました。

 「このメンバーとの将棋、全敗しても全く不思議ではなかった。」

 彼ほどの実力者が、なんという謙虚さでしょうか。否、謙虚さというより油断も隙もない、ああ、私は彼に一生勝てないのだとそのとき悟りました。

 大学将棋に戦う人たちは、皆揃って実力者です。決して相手を侮ってはいけません。しかし、だからといって自ら萎縮する必要はありません。だってあなたも...。

 
 


 さて、こんにちは。N本です。今回は令和3年度秋季個人戦の振り返りをしていきたいと思います。今回は大学生活で最後の個人戦となりましたので、老害らしく、長々しく紙面を使って書こうと思います。

 1回戦はシードだったので2回戦からの出場となりました。

 2回戦のお相手はK大学のK田さんでした。K田さんは昨年の王座戦で大活躍されており、格上だという認識で挑みました。私が後手で戦型は角換わりに進み、先手のK田さんが右玉に囲っていくという展開となりました。



 ここでは、先手は▲4五桂からの攻めを狙っていますので、△4二玉としましたが、後の展開を考えると△4四歩もありそうです。以下、進んで次の局面。



 ここで恐れていたのは▲6六銀でした。以下△8六歩▲同歩△同飛に①▲5五歩や②▲7七桂とされると分かりませんでした。ちなみに①▲5五歩に△6五歩は▲9七角で王手飛車がかかってしまいます。これは後手の玉の位置がいけませんね。
 


 本譜は▲6六銀に代えて▲6八銀から先手が雁木右玉に組んで行きました。



 上図は後手が手損ながらもなんとか雁木中住まいを目指そうとしている局面ですが、このタイミングで▲8五歩とされると嫌でした。以下△同桂▲8九飛△8四歩で局面は一応収まりますが、そこで▲4五歩と突く手があります。以下△同歩なら▲8五桂△同歩に▲4四桂が厳しいですね。



 この局面では堂々と①△4五同歩▲8五桂に△4三銀とする手や、②△1五歩と右玉の弱点である端を攻める手、③△7七桂成▲同金に堂々と△8五歩と突く手などがあったようですが、対局中は全く頭になく、上図の局面は後手厳しいかと思っておりました。しかし、本譜は先手が冷静に▲8七歩と収めたので一安心しました。以下、進んで次の図。



 今、先手が▲9八香と上がって9筋の端攻めを見せたところですが、ここで慌てて9筋を受けようと①△8四角とするとすかさず▲8六歩と突かれ、今度は打った角を目標にされてしまいます。ここは悪くなっても攻め合いになれば勝機はあるとみて、本譜は堂々と②△3三桂としました。



 ここでは▲9五歩△同歩▲9九飛を本線に読んでいました。さすがに①△1五歩とはいけませんので、②△8五桂に期待していました。以下、放っておくと△7七桂成▲同金△8八角がありますので、▲8五同桂と取りますが、△同飛▲7七桂と使わせて△8四飛でどうか。これは後手も戦えそうです。



 よって先手は▲9九飛と力をためるのですが、ここで△1五歩と攻めていきました。後手玉は1筋から遠いので思い切った攻めができるのです。以下▲同歩△1七歩としました。



 振り返ってみればこの局面が本局最大の山場だったと思います。ここではやはり▲9五歩と攻め合われる順を警戒していました。以下、単純に攻め合うと、△1五香▲9四歩△1八歩成▲9三歩成△1九と▲8二と△1一飛▲9一香成△2七成香に▲5九玉と引く手が好手で後手がまずそうです。



 そこで後手はどこかで変化しなければいけませんが、対局中は全く分かっていませんでした。有力な変化として、例えば△1五香と歩を取る手に代えて△1八歩成▲同香△2七角と打つ手があったようですが、これが見えたかどうか...。▲9五歩ならまずいなと対局中は悲観していました。戻って後手は△1七歩に代えて△1六歩とし、▲9五歩には△1七歩成とと金にして次に△2七ととする変化が有力だったようです。



 しかし、本譜は▲1七同香でしたので、△2六角と打つことができ好転を感じました。次に△2五桂が厳しい一着となります。



 進んでこの局面(盤面反転してあります)ですが、ここで決め手があります。






 銀を引いてもまだ後手優勢だと思いますが、甘い手を指し続けると大学将棋はいくらでも粘られます。-3000点からの逆転などざらにあることです。ここでは後手の陣形を支える7八の桂馬に目を付けて△7七歩としました。(銀を引く以外の手なら優勢を維持できます)以下▲同玉に△8五桂で後手の攻めが繋がりそうです。以下は無事に寄せきることができました。

 正直に申し上げると、この内容は出来すぎで、後手の駒組みには問題点が多いように思われます。仕掛けに関しても精彩を欠いており、自分の甘さが出なかっただけよかったと思います。その甘さは3回戦に露呈することになるのですが...。

 
 次項に続く。







 

 

 
 

 
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