原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

平成23年本試験・採点実感公表

2012-01-08 | 新司法試験制度・情報など
実に,「ひっそりと」公表されました。

中身をざっと読んだところ,例年以上に,①説教調である,②かなり具体的に「正解」を提示している,③かなり具体的に評価基準を示している(どの程度で「一応の水準」になるか,など),という点に気付きました。「そこまで言うなら予定模範答案を出してくださいよ。2時間で書けるかどうか検証してみたいです。」という感想(希望?)は,今年も変わらず(笑)

受験生の皆さんは,早速プリントアウトして読んでください。私も,じっくりと分析をしていく予定です。

今日は,東京本校(18:00~19:30)で,LS志望者向けの講演です。

最新の画像もっと見る

7 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
どうしても気になるところ (匿名@横浜)
2012-01-09 02:37:31
労働法です。申し訳ありませんが、この場を借りて質問させてください。

就業規則該当性と客観的合理的理由の要件の関係がわかりません。

労働法
3 採点実感、6段落目「最後に」のところです。

辰巳の優秀答案、水町演習、大内演習(最近出たもの)をすべて確認したのですが、詳しい説明などがなくて困っています。信頼の置ける水町、大内答案とも微妙に書き方が違っております。なお、優秀答案はそのあたりの区別がされてないような気がします。

私は、当時存在した水町演習と同じように答案を書いたところ、そこまで悪い評価は貰いませんでしたが、試験委員のいう書き方とは何なのでしょうか?

来年は同じ問題は出ないと思いますが、懲戒が問題になるようであれば、同様の疑問が発生すると思います。

あと、就業規則の変更において、労働契約法でさまざまな判例の要素が条文化されましたが、個々の条文の要件については、そのまま当てはめてもよいでしょうか?条文の文言は、一般的に趣旨などを踏まえ解釈したあと、あてはめを行うべきだといわれたりしますが、条文が判例をもとにしている以上、三段論法を気にしなくてもよいのかなとおもいました。

すみません。どうしても気になった点なので・・
返信する
公法系第一問 (A)
2012-01-10 20:02:57
今回の採点実感は例年以上にかなり踏み込んだ内容だという感想を持ちました。

それと同時に、こうするな、ああするなと外堀ばかりを埋めて、じゃあどうしたらいいか、という核心には相変わらずあまり触れず、受験生に行間を読みとらせようという姿勢に、多少のいらだちも感じました。

『「原告側の主張」と「被告側の反論」において極論を論じ,「あなた自身の見解」で真ん中を論じるという「パターン」』

『原告の主張を展開すべき場面で,違憲審査基準に言及する答案が多数あった。違憲審査基準の実際の機能を理解していないことがうかがえるとともに,事案を自分なりに分析して当該事案に即した解答をしようとするよりも,問題となる人権の確定,それによる違憲審査基準の設定,事案への当てはめ,という事前に用意したステレオタイプ的な思考に,事案の方を当てはめて結論を出してしまうという解答姿勢を感じた。そのようなタイプの答案は,本件事例の具体的事情を考慮することなく,抽象的・一般的なレベルでのみ思考して結論を出しており,具体的事件を当該事件の具体的事情に応じて解決するという法律実務家としての能力の基礎的な部分に問題を感じざるを得ない。』

『「被告側の反論」の想定を求めると,判で押したように,独立の項目として「反論」を羅列する傾向が見られる。むしろ「あなた自身の見解」の中で,自らの議論を展開するに当たって,当然予想される被告側からの反論を想定してほしいのにもかかわらず,ばらばらな書き方をするために,かえって論理的な記述ができなくなっている(あるいは,非常に論旨が分かりづらくなっている)という傾向が顕著に
なっている。』

『あしき答案の象徴となってしまっている「当てはめ」という言葉を使うこと自体をやめ
て,平素から,事案の特性に配慮して権利自由の制約の程度や根拠を綿密に検討することを心掛けてほしい。』

といった記述は、過去数年分の多くの合格答案がとっている形式面すら否定しているようにも見えます。

答案の形式にこだわり過ぎて、事案の内容に即した個別的・具体的検討ができないのは良くない、というのはとてもよくわかります。

しかし、受験生としては、過去の合格答案を分析し、おそらく多くの人がこう書くであろうという視点で、書き負けないようにと身につけてきた答案作成の戦略が、過去は合格できたけど来年からはもう通用しないのかと不安になってしまいます。

といいつつも、せっかくここまで踏み込んだ採点実感が出たのですから、答案戦略に有効に生かしたいと思っています。

採点実感の分析会などは御担当されないのでしょうか。
ぜひ原先生にご説明していただければと思います。
返信する
Unknown (はら)
2012-01-10 22:18:58
匿名@横浜さん

採点実感の点は,上位答案等を含めて,検討した上でお答えします(ちょっとお時間をください)。

労働契約法10条の点ですが,これは判例の規範を条文化したものですので,そのまま適用してよいものです(これ以上,具体化,下位規範化しようがない)。ただ,判例の言うところの,「代償措置その他労働条件の改善状況」については,条文化されていません。これについては,例えば,「労働者の受ける不利益の程度」に含めて考えるならばその旨を示した方がいいでしょう(水町先生の教科書はこの立場)。

Aさん

私が受験生であっても,相当にいら立つ内容です。法的三段論法を守れという反面,「原告の主張を展開すべき場面で,違憲審査基準に言及する答案が多数あった」ですからね。この点は,頭を抱える受験生の方が多いのだろうと思いますので,近いうちに,少し私なりの解釈をお示ししようと思います。ポイントは,「原告の主張を展開すべき場面で,違憲審査基準に言及する答案が多数あった」とは言うものの,それ自体が「悪い」とは言っておらず,試験委員が批判しているのは,あくまでも「事前に用意したステレオタイプ的な思考に,事案の方を当てはめて結論を出してしまうという解答姿勢」であると読める,ということです。

採点実感の分析講義は,本日時点において,担当する予定は入っておりません。申し訳ありません。。。
返信する
横からすみません (東京人)
2012-01-11 02:54:25
>法的三段論法を守れという反面,「原告の主張を展開すべき場面で,違憲審査基準に言及する答案が多数あった」

という点について質問させてください。
先生はこの指摘が矛盾しているという意味でおっしゃっているように読めますが、よく理解できませんでした。もう少し教えていただけないでしょうか。
もしかしたら私のような人間が憲法の試験委員を怒らせているのかもしれませんね…。
返信する
ありがとうございます (A)
2012-01-11 16:57:33
早速のお返事ありがとうございました!

ご指摘の通り、採点実感を見てまさに頭を抱えております。

当ブログで解釈を加えてくださるとのことで、記事を今後も楽しみにしております。
返信する
ありがとうございました (匿名@横浜)
2012-01-13 02:04:45
判例法理を条文にした労働法の書き方について、確認ができました。ありがとうございました。

もう1つの点については、お時間が許すようでしたら、よろしくお願いします。

今年は上の方が言っているように、「では、どう書けばよいのか?」ということを、考えさせられます。
返信する
Unknown (はら)
2012-01-28 23:04:49
東京人さん

法的三段論法というとミスリードでした,すみません。過去の出題趣旨・採点実感等においては,原告の主張はフルスケールで書け,とありまして,違憲審査基準の実際の機能は次の記事で述べた通りなのですが,法的判断の上では,はやり審査基準を定立しないといけないはずだ,ということです。次の記事にこのあたりは詳しく書いてありますので,読んでみてください。
返信する

コメントを投稿