原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

【書評】木下智史=伊藤建「基本憲法Ⅰ 基本的人権」(日本評論社)

2017-02-20 | 書評

【総評】

現時点で存在しうる,最も優れた司法試験(予備試験)憲法「論文」対策の「学習参考書」であると思う。

 

【構成】

・序章は,よど号ハイジャック記事抹消事件を素材に,最高裁がいかに憲法判断をしているか俯瞰する。

・第1講~第14項は,各人権につき,「権利保障の意義・内容」,「権利の判断枠組み」,「権利をめぐる具体的問題」が記述されている。「権利保障の意義・内容」はいわゆる教科書的な解説。ただし,非常にコンパクトでポイントを押さえた記述になっており余計な(過剰な)記述がない。「権利判断の枠組み」は最高裁・主要な学説の違憲判断の枠組みが紹介されている。「権利をめぐる具体的問題」は判例の紹介である。基本的には数行~十数行のコンパクトな紹介(もちろんポイントは押さえている)であるが,中にはかなり掘り下げて記述されているものもある。数としては,相当数が掲載されており,十分と言える。この点で,人権分野の短答対策としても効果があると言える。

・第15講は憲法事例問題の解法について概説されている。ページ数は多くないので,「概説」である。司法試験受験生ならば当然に知っておかねばならないレベルの話が記述されている。

・各講に判例を素材とした演習問題とその解答の指針(答案形式ではない)が記述されている。「解答の指針」部分は,コンパクトではあるが,優れた記述となっている。

 

【雑感】

・私が読んで特に優れていると感じたのは,財産権(第10講),平等(第4講),政教分離(第6講Ⅱ)であった。

・上述のとおり,全体的にコンパクトな記述になっており,ある程度予備知識のある者が,あるいは,講義と並行して副読本として読むに適している。純粋な初学者が独学で読み進めるには少し不向きであると思われる。たとえば,序章(よど号ハイジャック記事抹消事件を使った憲法判断の方法の俯瞰)において,処分(適用)違憲の話も出てくる。

・対司法試験という観点からは,次の2点につき思うところがある。①審査基準(目的・手段審査)につき,司法試験委員会は,「厳格審査の基準」,「中間審査の基準(厳格な合理性の基準)」,「緩やかな基準(明白性の原則と結びついた「単なる合理性の基準」)という3つのレベルの基準の存在を前提としている(平成26年趣旨・実感等)。実際に判例が定立する基準と司法試験委員会が提示する基準との関係につき,突っ込んだ説明があってもよいか。②経済的自由の規制目的につき,平成26年趣旨は,「第三の目的」という表現も用い,本書とは少しニュアンスの違う捉え方をしているように思う。

・個人的には,処分(適用)違憲の判断方法(規範定立方法)につきより深い言及があるのを期待したが,残念ながら「深い」とまで言える記述はなかった(第15講,序章に説明としての記述はある。)。ただ,体系的に説明できる事柄ではないし,私の期待が過剰だったかもしれない。

・総じて,「学習参考書」としては極めて優れており,特に憲法に苦手意識ある受験生に強く勧めたい。4月から始まる私の基礎講座でも受講生に勧めようと思う。

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