原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

論文答練の利用法

2012-01-04 | 勉強法全般
まもなく,スタ論・第2クールが始まりますね。第2クールから参加するという受験生の方も多いかと思います。採点・添削者の立場から,答練の利用法について少し。

答練を受ける目的の1つとして,自らの位置を確認する,ということがあろうかと思います。スタ論の場合は,母集団が大きいのでこの目的はかなりの精度で達成できると思います。私も受験生の時に散々受けまして,その時の点数と本試験の点数は,かなり一致しておりました。この点,採点・添削者の立場から言うと,「1点刻みで正確な(試験委員基準で)採点をすることはできないが,合格の経験があれば,例えば,40点台前半,40点台後半といった括りでならばかなり正確な採点が可能だ」ということです。自らの受験経験で把握した絶対的評価基準と,他の答案と比較した相対的な評価基準の組み合わせで,だいたいそれが可能になるものです。

答練の評価は,そのように把握するとよいと思います。ただ,それだけでは合格の確実性は高まらないわけで,重要なのは,その評価が,自らの手応えと一致することです。要するに,どのような答案を書けばどれくらいの評価がされるかという見通しが立たなくては,確実な合格は狙えない,ということです。ですから,答練が終わったら,まずは,採点基準抜きに自己評価をしておくとよいです。40点台後半かな,などの大雑把な評価です。その後,解説冊子の採点基準に従って自己採点をしてみます。この2回の自己採点(自己評価)の結果が乖離するようでは,まだまだ知識不足だ,と認識してください。乖離の原因は,枠をはずしたということが多いからです。その上で,この2回の自己採点(自己評価)と,採点結果と対比してください。ほぼ一致すれば,自らの基準と合格経験者の基準が一致したということで,その基準は正しいものであった,と理解してよいです(悪いところが悪いと認識できていれば修正は容易であるので,やや低い点数での一致の場合も,合格の可能性は大きい)。他方で,自己採点(自己評価)と実際の採点結果の乖離がある場合は問題です。採点官に問題がある場合も皆無とは言えませんが,実際にやってみると,それはあまりないのではないかと思います。1通しか採点しないならまだしも,同じ問題で多くの答案を採点しますから,評価ブレは考えにくいと思われます。ですから,「自分では良いと思ったが,合格者(実務家)が見て評価されなかった,採点者には伝わらなかった」という場合が圧倒的多数ではないかと思います。これは,本試験でもよくあると言われる現象です。「この科目はできたと思ったのに,低い評価で愕然とした」という感想はよく聞きます。これをなくしていかなくてはいけない。「えっ?なぜこの評価??」を3回繰り返せば失権してしまうわけですから。この場合は,よくよく分析をする必要があります。

答練は,合格力を高めるツールですので,うまく利用してください。ちなみに,私は,スタ論・第2クール・刑事系3の解説講義を担当させていただきます。

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5 コメント

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憲法答案について (受験生)
2012-01-05 15:31:05
憲法答案について質問させてください。記事と無関係で申し訳ありません。


「私見を厚く書くこと」が憲法合格答案の条件だとよく聞くのですが、私見を厚く書くコツなどあれば教えてください。


私はいつも、問題文中の原告側に有利に使えそうな事実をすべて原告の主張で書ききり、
また被告側で使えそうな事実を被告の反論で書ききってしまい、
私見のところで、確かに原告(被告)の主張→しかし被告(原告)の反論→そこで両者の調和から~
といった形になってしまい、どうしても私見が薄っぺらくなってしまいます。


ぜひアドバイスを頂ければと思います。よろしくお願い致します。
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Unknown (はら)
2012-01-05 23:03:55
出題趣旨等から考えて,私見の部分に最も点数があるということは,そのように捉えて構わないでしょう。

原告の主張は,「一方当事者の」最終準備書面のイメージで,成り立ちうる最も極端な(最も原告に有利な)構成をしていくことが一つのポイントです(ただし,判例・通説の見地からおよそ成立しない無理筋を主張してはいけない。平成23年出題趣旨等参照)。あてはめの部分においても,1つ1つの事実を原告に有利に捉えていく。

他方で,被告の主張は,基本的には問題点の指摘にとどめるくらいで丁度良いです。出題趣旨等を見るに,被告の主張にはあまり点が振られていません。

私見の部分は,まずは原告の主張の欠点・適切ではない点を徹底的に指摘します。趣旨・基本原理に遡って指摘します。平板に指摘すると,当事者の主張の上塗りのようになってしまいます。あてはめにおいても,ある事実に力を入れて述べると,メリハリが付きます。ある事実について,原告の(その事実の)評価法を正していくイメージです。他方,被告の主張は,敷衍して述べるイメージです。その上で,基本的に被告に軍配を上げて合憲とするか,被告の主張についても反論をして違憲に持っていくかは,事案ごと異なります。

私は,こんなイメージで書いておりました。
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Unknown ()
2012-01-17 20:29:29
法的三段論法について質問させて下さい。記事と関係ない質問となってしまい申し訳ありません。

法的三段論法について、「問題提起→規範定立→当てはめ」、という説明がよくなされています。

しかし、三段論法といえば、「規範(定立)→当てはめ→結論」だと思うのです。

仮に、「問題提起→規範定立→当てはめ」が法的三段論法だとした場合、「問題提起」は、大前提、小前提、結論のどれに当たるのか不明で、悩んでいます。

それとも、そもそも「三段論法」という場合と「法的三段論法」という場合では、意味が違うのでしょうか?
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Unknown (はら)
2012-01-28 23:08:15
白さん

問題提起は,法的三段論法の「外」という説明が適切でしょうかね。問題点を特定して(問題提起をして),法的三段論法に従って事案を解決していく,それが法律論文・法律答案です。司法試験の場面では,三段論法と言えば,法的三段論法のことを言います。
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Unknown (Unknown)
2013-06-06 07:38:29
原先生

先生

 こんにちは。最近、短答合格ファイルの判例を読んでいて疑問点が出てきたのですが、予備試験ルートで司法試験を受けたので、聞ける人が周りにいなくて、少し困っています。もしよければ、教えていただけないでしょうか。
 具体的には、類似事実による事実認定について、平成24年9月7日に前科証拠による犯人性の立証の判例がありました(短答合格ファイルp239)。そして、和歌山カレー事件の大阪高判平成17年6月28日の判例がありますが、後者は、必要性・合理性・相当性の規範を用いていました。今後、後者のような事案の場合、最高裁としては24年の規範を用いて判断するのでしょうか。それとも、前者の判例は前科証拠が対象で、後者は前科証拠が対象ではないので、別の判例とみるのが正しいのでしょうか。
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