原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

法曹(裁判官・検察官・弁護士)のことがだいたいわかるコラム~1

2013-08-12 | 新司法試験制度・情報など

タイトルの通りのコラムを書いてみようと思い立ったので、今日からスタートします。何事も、思い立った時に始めるのが一番ですから。

 

かようなコラムを書いてみようと思ったのは、私自身、法曹を目指そうと思った時から、実際に法曹になるまで(正確に言うと、合格して修習に行くころまでかなぁ)、実は、あんまり法曹についてわかっていなかったんですね。今、思うに。父が法曹だったら、法曹ってどんなものかわかったのでしょうけど、うちの父は、学生服屋のオヤジでして(笑)身近に法曹界に詳しい人もおらず、「なんとなくこういうもんだろう」っていうイメージを持ちながら勉強していった記憶があります。実際に弁護士になってみてイメージ通りのこともあれば、そうではないところもあります。ちょっと「謎めいた」法曹界を、イチ弁護士として少しずつ紹介していこうかな、と思いました。

 

…とここまで書いて、最初に何を書こうか迷いだしました(笑)法曹三者、すなわち、裁判官・検察官・弁護士が何者か(どういう仕事をするのか)といった本格的な内容は、次回以降にして、今日は、私が思うに、法曹と一般の方と最も認識を事にする点について紹介します。

 

それは、「解決にかかる時間」です。

 

依頼者は、何か困ったことがあって、弁護士のところに相談に来ます。その時、弁護士に頼めば解決してくれる、それも速やかに解決される、と期待します。こう思って頂けるのは、弁護士として、実に有難いところです。我々は、その期待に応えるべく尽くさなくちゃいけない。実際、弁護士が介入すると電話一本で解決する(示談がまとまる)ケースもあります。

 

…ただ、そういうケースはあまり多くない。依頼者が弁護士のところに来るまでには、通常、自分で交渉して、それでニッチもサッチもいかないから、弁護士に相談するわけです。そういったケースで、弁護士が相手方と交渉してすぐに「はい、わかりました」ということにはならないものです。

 

よくある事件、それも単純な事件、「XがYに100万円を貸したが、Yが返してくれない」という場合に、どういう事件処理がされるかを紹介します。

 

Xから相談を受けた弁護士は、さしあたり、Yに対して内容証明郵便で返済の催告をします。その内容証明郵便には、「本書到達から2週間以内にお支払いなき場合には、訴訟提起をします」みたいなことを書きます。

 

2週間経ってみて支払いがなければ、訴訟提起に向けて動き出します。訴状を起案して、裁判所に訴えを提起します。

 

裁判所に訴えが提起されると、第1回の口頭弁論期日が指定されます。だいたい、訴状提出から1か月半程度先の日が指定されます。

 

第1回口頭弁論期日において、相手方が争う姿勢を見せると(例えば、「そもそも借りていない」とか、「贈与としてもらったのだから返さなくていいはずだ」とか、「もう返した」とか、色々な争い方があります)、裁判は続行されます。第2回目の口頭弁論期日が、1か月~1か月半くらい先に指定されます。

 

双方が和解に応じず、徹底的に争う場合、口頭弁論を1か月~1か月半に1回のペースで、数回~十数回繰り返し、それで判決に至ります。

 

こう考えると、解決までに1年以上を要する事件があるのも、現在の仕組み上、やむを得ないことになります。

 

…、弁護士と言う立場を離れれば、個人的には、時間がかかりすぎだと思います。しかしながら、法曹には法曹の言い分があって、裁判所からすれば、他の事件もたくさんあるわけで満遍なく期日を設定しなきゃいけないという事情があるし、弁護士からすると、相手方の反論に対し、こちらが再反論するためには事情聴取や調査の時間が必要なわけで、あまりに短いスパンで期日を設定されてしまうと追いつかないという事情があります。こういった諸事情をがあって、現在のペースになっていったのだろうと私は思います。

 

でも、「諸事情」は、「法曹の」諸事情ですから。迅速な事件解決のために、我々は努力しなくちゃいけません。早く解決したいと思っているんです。ですが、今の仕組みの中では、どうしても時間がかかるもんなんです。

 

以上、法曹の言い分です。なかなか理解されないんですが、理解してもらうより、理解不要になる(迅速に解決される)ようになればいいなと思います。


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