原孝至の法学徒然草

司法試験予備校講師(弁護士)のブログです。

法科大学院定員削減のニュースについて

2014-07-03 | 新司法試験制度・情報など

司法試験に参入して間もない方、あるいは、これから参入しようと思っている方は、この背景を知らないと思うので、私なりに説明します。

 

昨日、今日と報道されていることは、「来春の法科大学院の入学総定員数は、ピーク時の5825人の45%にあたる3175人まで削減された。法科大学院自体の数もピーク時の74校から54校までに減少する。」というものです。

 

もっとも、これは驚くべきことではなく、はじめから予想されていたことではあります。

 

司法改革の一環として、平成16年に法科大学院が開設されました。当初、それはそれはすごい人気でした。当初のフレコミは、「法科大学院で3年(既修なら2年)勉強すれば、間違いなく法曹になれる。司法試験の合格率は、7~8割とする。ただ、5年3回の受験制限を設ける(三振制)」というものでした。法曹界に多様な人材をということで、社会人もどっと押し寄せました。当初、法科大学院入試は、激戦でありました。

 

ただ、「合格率7~8割」というのは、はじめから辻褄の合わないものでした。法科大学院の入学定員が5825人に対し、司法試験合格者数は順次増えて行きましたが、最大でも2000人強。どう考えても、合格率7~8割にはならないわけです。

 

むしろ、合格率は低迷し、20%前半まで落ち込みました。司法試験の回数を重ねれば浪人生が増えるので、合格率が下がっていくのは当たり前です。さらに、「5年3回(三振制)」の受験制限のために、失権者も増えました。合格率が20%代なのですから、多くの失権者が出ることも自明なのです。法科大学院進学→司法試験受験はかなりリスキーなものになっていき、特に、社会人からは敬遠されるようになりました。

 

もっとも、このような状況は、当初から予想されていて、「法科大学院は自然淘汰が進む。」などとも言われていました。今日、その通りの状況になっています。

 

ただ、予想以上のことがあるとすれば、平成23年からスタートした予備試験の人気沸騰です。当初、予備試験は、経済的に法科大学院に進学することができない人に向けた制度で、法科大学院の補完的役割を担うはずでしたが、蓋を開けてみれば、法科大学院を経ずに司法試験を受験するショートカット・バイパスルートになりました。予備試験の合格者には、現役大学生、法科大学院在学生が多数を占める状況となったのです。

 

法科大学院は制度としてスタートしたものだから、中途半端に終わらせるわけにもいかず、何とかして法科大学院に人を呼び込まなくてはいけない。そこで、「5年3回制(三振制)」の撤廃、司法試験に受験科目の削減(短答3科目化)などの制度改革がなされておりますが、私としては、これらが法科大学院の人気回復に直結するとはとても思えません(そもそも法科大学院の人気回復を目的とする改革ではないのですが)。

 

かくして、現在、法曹を目指す人の意識は、「できれば予備試験。だめなら法科大学院経由で司法試験合格を目指す」というものになっています。予備校講師としてアドバイスするなら、「それでいい」と思います。ただ、予備試験に固執した場合、結果として法科大学院経由よりも長い時間を要することにもなりかねないので、どこかの段階で法科大学院経由に切り替えることも必要です(法科大学院に進学できる環境であれば)。

 

いずれもしても確かなのは、予備試験ルートにせよ、法科大学院経由にせよ、しっかりと法律の勉強をして、予備試験、法科大学院既修者試験、その先の司法試験に備えることが何よりも重要だということです。


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