私は小学生の頃、
太平洋戦争オタクだった。
その原因は、当時放映されていた
『決断』 というアニメーションに夢中だったからだ。
但し、このアニメは戦争を美化したものではない。
もしも当時、
夏休みの宿題で自由研究みたいなものがあったならば、
スゴイ戦争論を発表できたと思う。
『決断』 全26話の中で、
いちばん感慨深い回は、戦艦武蔵の最期を描いた
第21話レイテ沖海戦(前編) である。
この回には、
精神論に対するアンチテーゼが秘められている。
このアンチテーゼは、
日本社会全般が陥りやすい集団心理を突いていて、
福島第一原発事故にも通じるところがある。
戦艦武蔵とは・・・・
戦艦大和の栄光の影に、戦艦武蔵の悲話がある。
武蔵は超ド級大和型戦艦の2番艦である。(大和が1番艦)
戦艦武蔵は、
三菱重工長崎造船所で秘密裏に建造された。
全長260mを超える巨大な船体は、
進水式の時、船台を滑り降りる勢いが強すぎて、
対岸の家々は高波で床上浸水したという。
1944年10月24日、
武蔵はフィリッピン・ブルネイに集結した栗田艦隊に所属し、
レイテ沖海戦に出撃する途中で最期を迎える。
レイテ沖海戦とは、
フィリッピンの防衛とレイテ湾に集結した米輸送船団を
撃滅するために発動された 捷一号作戦 である。
この時の武蔵艦長は猪口敏平少将。
猪口艦長は決戦直前に、
なぜか、武蔵を他の艦より明るい銀鼠色に塗り替える。
乗組員たちは、
「艦長四代 副長二代の 四ニ(死)装束」 と理解したという。
栗田艦隊は、レイテ湾に向かう途中、
シブヤン海で米軍機の猛攻を受ける。
米軍機のほとんどは、
いちばん目立つ色の大きな船体をした、
美しい死装束をまとった武蔵に殺到した。
武蔵は、
爆弾44発、ロケット弾9発、魚雷25本を受けて沈没する。
猪口艦長は、
他の艦長が押し進めようとする、
艦隊決戦(軍艦対軍艦)の不毛を見抜いていた。
既に戦争は航空決戦の時代だ。
航空機の護衛のない艦隊は裸も同然。
艦隊決戦に突き進もうとする上層部の決定は
もはや、現実を無視した精神論だったのである。
捷一号作戦は必ず失敗に終わることを予期しながら、
戦艦武蔵を預かる猪口艦長にできることは・・・・
栗田艦隊の他の艦船を温存させるために、
武蔵を目立つ色彩にして、敵機の攻撃を一身に受け、
犠牲になることだったのではないだろうか?
武蔵の艦内で割腹自決を遂げた、
猪口艦長の真意は今でも謎であるが・・・・
そしてもうひとり、
艦隊決戦の不毛を見抜いていたのは、
栗田艦隊の栗田健男長官だろう。
レイテ湾に突入するという無謀な特攻攻撃によって
多くの艦船や戦闘員を無くすことは、
栗田長官にとって、
耐え難いことだったのではないか?
事実、
栗田長官は情報不足の中、
艦隊を温存させるためにレイテ湾直前で反転の決断をする。
優れた決断である。
レイテに上陸しようする米軍への打撃と、
戦艦大和を旗艦とする栗田艦隊の全滅は、
どう考えても割が合わない。
栗田長官は、
猪口艦長が武蔵に施した 死装束の意 を
いちばん理解していたのではなかろうか。
戦艦武蔵の猪口艦長が死して残したメッセージを、
栗田長官は、重く、痛く受け止めた。
『決断』 第21話レイテ沖海戦(前編)
第22話レイテ沖海戦(後編)に続く
話は変わるが、
この話は、現代でも通用するだろう。
精神論で突入を図ろうとする集団社会に対して、
面と向かって異を唱えられない立場にいるものは、
捨て身で阻止する以外にない。
そして最も重要なことは、
捨て身で阻止した者の意を、
集団のリーダーが拾えるかどうかだ。
福島第一原発事故での吉田所長も然り。
吉田所長の捨て身の行動に呼応する
リーダーはいったい誰になるのだろうか?
もしや、福島第一原発事故のリーダーは
不在なのではなかろうか?
第22話レイテ沖海戦(後編)
安倍はアンダーコントロールなんて胸を張って大見得を切り、オリムピックを招致した、とはしゃいで居るが、無邪氣に喜んで居る人達は別として、北叟笑むで居る下種な人種は早速今の反動的な政府の支持を表明し、支持率の増加に寄與して居る。
正論を申す田中正造の様な政治家は、もう日本には現れない、と思ふと、明治維新に幇間に成って、維新の金權政治家から金を巻き上げてやれ、と開き直った江戸っ子に倣ほふかと思ふ。
得体の知れない怪物とは、欲を満たしたい者の集合体である。
欲を満たしたい者の集合体に悪玉ポピュリズム菌が蔓延る。
悪玉ポピュリズム菌が蔓延る民主主義は必ず破滅に向かう。
さてさて、この民主主義列車から飛び降りるか?
それとも、幇間に成って破滅を愉しむか?
どちらにしても、面白い世に巡り会ったものだ。