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1942年の映画「アラビンナ・ナイト」はユニバーサル初のカラー映画らしい。楽しい映画である。不勉強で良くわからんが、砂漠の印象とかも手伝って、なんだか「スターウォーズ」なんかにも影響を与えているような気がした。そういえば、アメリカ映画「スターウォーズ」は、イスラム世界を思わせる舞台での話――異国ものである。アメリカにとって、西部劇は、日本でのチャンバラみたいなもので決して「聖戦」を描くところまでいけない。当然である。国内の殺しあいだからである。帝国主義は、資本主義と同じく外部と必要とする。イスラム世界は文化的表象として、帝国主義にも一定の影響があるのかもしれない。それはわたくしの妄想だとして――、映画「アラビアン・ナイト」でいいのは音楽と馬の演技で、もうハリウッド映画って、ここらで完成しているんだな、と思われた。
それにしても、水木しげるの『総員玉砕せよ!』なんかを読むと、異国に来ているのに、楠木正成のまねをして決死の戦いとか玉砕とかを敢行する我が国の軍隊が描かれており――我々には何か恐ろしく狂ったところがあるように思われてくる。確かに、聖戦とか美女をおっかけまわすのも大したことのように思えないが、精神が死んでいるよりましであるような気がする訳である。
アラジンとお姫さまは、長い間たのしくくらしました。そして、王さまがおかくれになった時、二人はとうとう、王さまとおきさきさまになりました。そして国をよくおさめました。いつまでもいつまでもその国はさかえたということであります。
「アラビヤンナイト――一、アラジンとふしぎなランプ」(菊池寛)
こういうハッピーエンドをきちんと作ったことがない国というのはあまりよくないと思うのである。素朴なものの輝きが分からない訳で。改元の時だけ帝国ごっこをやって日常に帰り着く我々は根本的にアイロニカルでいじけている。