![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7b/3a/3dd5dbca75520359711d6e736a849ee3.jpg)
五日、六日の夕月夜は疾く入りて、すこし雲隠るるけしき、 荻の音もやうやうあはれなるほどになりにけり。御琴を枕にて、もろともに添ひ臥したまへり。
萩の音がするからといって、お琴を枕にしてはなりません。そこの二人ちゃんと練習しなさい。
かかる類ひあらむやと、
よく分かりませんが、音楽を二人でするのはそもそも非常にエロチックなのです。ベートーベンの後期の曲に妙に色気がなくなったのは現実の女子と連弾しないで、ミューズを「永遠の恋人」とみなす境地に達したからではないでしょうか。光源氏……、色男の「類ひ」である。
「馬鹿、乱暴はよせ。男類、女類、猿類、まさにしかりだ。間違ってはいない。」
もう半分眠っているくらいに酔っぱらっているのでした。手向いしないと見てとり、れいの抜け目の無い紳士、柳田が、コツンと笠井氏の頭を打ち、
「眼をさませ。こら、動物博士。四つ這いのままで退却しろ。」
と言って、またコツンと笠井氏の頭を殴りましたが、笠井氏は、なんにも抵抗せず、ふらふら起き上って、
「男類、女類、猿類、いや、女類、男類、猿類の順か、いや、猿類、男類、女類かな? いや、いや、猿類、女類、男類の順か。ああ、痛え。乱暴はいかん。猿類、女類、男類、か。香典千円ここへ置いて行くぜ。」
――太宰治「女類」
太宰治も色男の類いであった。しかし、彼は類いを越えたことをしてしまった。本当は「類」など使いたくないのに、大いに使って文学にしてしまう。恐ろしい才能である。彼はしかもそこに満足していなかったようであり、更にそういう文学者を越えようとしてしまった。坂口安吾の診断によれば、芥川や太宰は不良少年の類いなのであるが、こういう類いは、類いを越えようとするのが特徴であった。