《試練》――現在史研究のために

日本の新左翼運動をどう総括するのか、今後の方向をどう定めるのか

友への手紙――コメントに答えて~今秋福島県知事選挙へ向けて

2014-05-08 09:20:45 | 反原発
友への手紙――コメントに答えて~今秋福島県知事選挙へ向けて

 鬼の城さん。コメントを寄せてくださり、ありがとうございます。「問題提起には同意」。しかし、「支配者階級の分裂」を「表層的な分析をするのではなく、深く切り込んでいく必要があります」とのこと。同感です。私もこの点は、説明不足、展開不足と感じていましたので若干の補足させていただきます。

1 「支配者階級の分裂」について

 「なぜ支配者階級が分裂したのか」「分裂の原因はなぜか」と同じく重要なのは、これが事実か否かということだと考えています。そこの見極めを誤ると、「なぜ分裂したのか」「原因はなぜか」の意味がなくなります。まず確認すべきは「生起していることは支配者階級の分裂と呼ぶに値するか否か」だと考えます。
 私自身これを聞いた時、「何を大げさな」「そんな重大な事態が起こっているとは信じがたい」と半信半疑でした。確かに小泉は「脱原発」を提起し、記者会見で大々的にぶち上げました(13年9月、10月)。が、これはあくまでも「原発」の領域だけで、自民党安倍政権の政策全てに異を唱えているとは思いませんでした。このあたりは、このブログに投稿した「友への手紙―小泉純一郎の『脱原発』発言の思惑はどこにあるのか」を読んでいただければお分かりいただけると思います。「脱原発」発言にも批判的でしたし、その真意にも懐疑的でした。
 
2 「支配者階級の分裂」はまちがいなき事実

 当初私は半信半疑でした。その私が「これはまちがいない」と確信を持った契機は二つあります。一つは都知事候補として細川が出馬し、その細川を小泉が支援したことです。そして今回の福島県知事選への候補擁立発言です。これは本気で安倍政権に叛旗を翻したなと確信したしだいです。
 いま一つは、小泉純一郎が顧問をしている「国際公共政策研究センター」のホームページです。そのホームページの中で今異変が生じています。国際公共政策研究センターの組織欄が空白=未定という前代未聞の事態が生起しているのです。昨年までは経団連のそうそうたるメンバーが名前を連ねていました。それが現在空白。「ご迷惑をおかけしています。ただ今制作中につき暫くお待ちください」とのコメントが掲載されていますが、これはありえません。新年度に移行してからはや40日。物理的な理由で制作が遅れているとは考えられません。理由はただ一つ。人事をめぐって紛糾=内紛が生じているからに他なりません。人事が決定していないがゆえに公表できない。そう推測するのが妥当です。
 国際公共政策研究センターは去年まで純然たる研究機関でした。そこに名を連ねることは企業にとってプラスでこそあれ、マイナスではありませんでした。東電なども多額の企業献金をしています。しかし、顧問の小泉純一郎が「脱原発」を掲げ、自民党安倍政権に公然と叛旗を翻し始めた。研究機関だと思って参加したのが、反安倍の政治団体とみなされてしまう。これを容認するのかどうかが原因で紛糾していると推測できます。人事が未定というのは権威失墜であり、不名誉なことです。マイナスのイメージは否めません。その恥をさらしてまで人事発表を遅らせる理由は何か。相当大きな人事問題が生じていると考えられます。以下は私の推察ですが、「小泉の顧問は認められない」「顧問を辞めさせろ」の声が組織内から続出しているのではないでしょうか? 小泉顧問を解任するか、それとも「国際公共政策研究センター」を解散するか、事態はそこまで進んでいるのではないでしょうか。

3 分裂の原因は何か

 分裂の原因は、「日本帝国主義国家および日本ブルジョアジーの生き残り戦略」の相違というところにあるのでしょう。
 細川、小泉という歴代の2人の首相を突き動かしているのは、激しい危機感です。このままでは日本の国家もブルジョアジーも生き残れない、消滅しかねないとの焦燥感です。経済・財政・軍事・外交全てに渡り、「このままではダメだ」との強い思いがあることはまちがいありません。
 例えば経済。安倍の経済政策=アベノミクスの第一の矢は金融政策でした。「想定外」の金融緩和で通過を切り下げ、円安を誘導したことで輸出産業は息を吹き返しました。しかし、こうした金融緩和政策で一国の経済が成長した例は過去一度としてありません。第二の矢の財政出動もひどいものです。大量に刷った紙幣をじゃぶじゃぶと市場に流せば「買い」が殺到し、株価が上昇するのは当たり前です。株価という資本主義の幻影が上昇しただけで、そのような愚策で経済が成長した例は歴史上ありません。むしろ歴史が教えているのは、巨額の財政赤字を抱え込む結果となり、国家財政破綻へと突き進むということです。昨年暮れのアメリカを襲った「財政の崖っぷち」さらには「債務不履行の危機」「国家予算不成立の危機」は、対岸の火事ではありません。このままでは、早晩日本の財政危機もそこまで行き着くのは目に見えています。なにせ日本の財政赤字はGDPの240%というダントツのトップを走っているのですから。
 アメリカを筆頭に全世界が金融引き締めへと梶を切っているなかで、唯一金融緩和政策を継続する日本。これは誰が見ても「失政」なのです。この現状に日本のブルジョアジーは心底震え上がっています。われわれ「鉄鎖以外失うものを持たない労働者階級」と異なり、巨大な資本と権益を有する「持てる階級」資本化階級は、戦々恐々として巨大化する国家財政赤字を見ていることはまちがいありません。第三の矢もそうです。ほとんど有効な経済政策を打ち出せない中で、唯一「成果」を挙げているのが「原子力産業」と「兵器産業」の輸出部門です。アベノミクス第三の矢の実態は「死のビジネス」「死の商人」であることが明白になりつつあります。環境ビジネスを中心にして新たな世界市場が形成されつつあるとき、それに乗り遅れるどころか逆行する日本。これも国際公共政策研究センターの目指す21世紀の理念とは矛盾します。
 日本の資本家階級の一部には、「これ以上安倍に任せていていいのか」「アベノミクスに代わる経済政策はないのか」との声が湧き上がりつつことは容易に想像がつきます。

 今回は「支配者階級の分裂」要因を、経済と財政から述べましたが、次の機会には外交と軍事、さらには安倍の政治手法の側面から書いてみたいと考えています。とりあえずは以上です。

追 伸

 ここまで書き終えて、念のためと思い、国際公共政策研究センターのホームページを開いてみました。そこの「組織」の項目をクリックしてみますと、何と空欄が埋め尽くされています。「ご迷惑をおかけしていますが、今しばらくお待ちください」に代わり、以下の組織図が掲載されています。

                       (役職)
国際公共政策研究センター 奥田 碩       会長
             田中直毅       理事長
監事 大橋光夫 昭和電工㈱           最高顧問
理事 芦田昭充 ㈱商船三井           相談役
   釜 和明 ㈱IHI              代表取締役会長
   川村 隆 ㈱日立製作所          相談役
   北島義俊 大日本印刷㈱          代表取締役社長
   小林喜光 ㈱三菱ケミカルホールディングス 代表取締役社長
   鈴木茂晴 ㈱大和証券グループ本社     代表取締役会長
   隅 修三 東京海上日動火災保険㈱     取締役会長
   張 富士夫 トヨタ自動車㈱        名誉会長
   塚本隆史 みずほフィナンシャルグループ  常任顧問
   中村邦晴 住友商事㈱           取締役社長・COO
   樋口雄男 大和ハウス工業㈱        代表取締役会長CEO
   御手洗富士夫 キャノン㈱         代表取締役会長兼社長CEO

 これを見てお分かりでしょうが、「奥田碩 会長、田中直毅 理事長」に続いてあった「小泉純一郎 顧問」の名前がありません。昨年度まではこの3人が最上枠に並んでいたのです。組織問題を小泉の顧問辞任で収拾したのでしょう。

2014年5月7日
竜 奇兵(りゅう・きへい)
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1 コメント

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お返事ありがとうございます (鬼の城)
2014-05-26 09:02:44
お返事ありがとうございます。5月8日にお返事をいただいたのに気付かずおりました。

小泉=細川=鳩山=小沢連合(と一括りして良いのか、と言う問題がありますが、まずは横において)は日帝ブルジョアジーの分裂と、日帝そのものの延命策を安倍路線で行くのか、小泉路線で行くのかと言う現代史上の歴史的選択であると私も思います。そして、早かれ遅かれやがて資本主義は死滅するのでありますが(そのためのプロレタリア党の組織化と、プロレタリア人民の組織化も必要なのですが、これも横に置いて)、安倍路線自体を見ると帝国主義の本来的暴虐性が丸出しであり、これではブルジョアジー内部にも反発は免れません。

その一方小泉路線は安倍の展望なき強圧的な帝国主義にブレーキをかけて、中国スターリン主義と米帝との共調路線、国内においては反原発に舵を取り、廃炉産業で時間稼ぎをするということ、そして、金融政策の抜本的見直しを行うということだろうと思います。

そこで、革命党の不在と言う決定的に不利の立場にある現在、小泉路線を応援して、安倍の反動性を暴露・宣伝することで、日帝内部に亀裂を大きくさせることが当面の課題だと思います。したがって、「安倍も小泉も同じだ。日帝だ」と言う見解は間違いであり、私はこの亀裂をさらに拡大させることが当面の課題だと思います。
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