
お知らせ。
【劇団芝居屋は本年10月26日~30日にポケット上演で企画しております、記念すべき第40回公演の出演希望者のワークショップを行います。まだ感染状況などで確定ではありませんが3月中ほどを目安に募集する予定です。
沢山の皆様のご応募お待ちしております。
詳しくは劇団芝居屋HPにてお知らせいたします。
劇団芝居屋HP http//www.gekidanshibaiya.sakura.ne.jp】
さあ、第四場の始まり始まり。
今日はキートンにとって台本にまつわる大事な集まりがある日でした。
さて、キートンの母絹代は今は一人でおでん屋を切り盛りしておりますが、キートンが大人の事情とやらが理解できる様になった頃、キートンの父とは別れており、今は吉崎という男性の囲い者になっておりました。
絹代はキートンに吉崎の機嫌を損ねない為に仲良くしてくれるように頼むが、それを拒み続けていたキートンでした。

絹代が部屋には遠慮がちに入って来ます。
絹代 「・・・孝之」
キートン 「・・・何だよ」
絹代 「それがね・・・」
キートン 「早く言えよ、何か頼みがあるんだべ」
絹代 「アラ、わかる?」
キートン 「わかるじゃねよ。何だか知らねえけどここんとこずっと俺の機嫌とってるべや」
絹代 「へえ、わかってたんだ・・・」
キートン 「用があるんならサッサと言えよ、もうすぐみんなが来るんだから」
絹代 「実はさ・・・吉崎さんがあんたと話したいんだと」
キートン 「あいつが・・・何の話よ」
絹代 「あんたの今後の事さ。ねえ、お願いだよ、会って話して」

絹代 「分かってるよ。大学行きたいんだろう、あんた。だけどね、ウチにはあんたを大学に行かせるお金はないんだよ。だから・・」
キートン 「だから、あいつと話せってんだろう。金出してくれる様に頼めって言うのかよ」
絹代 「そんな事言ってないよ。あの人はあんたと仲良くなりたいだけなんだよ。わかるだろう、もう子供じゃないんだから。仲良くなって気心が分かり合えば、何にも云わなくたって大学に行くお金だって出してくれるんだから」
キートン 「二号の連れ子だからな、妾の連れ子だからな」

絹代 「バカヤロウ!ああ、そうだ。あたしは二号だよ、妾だよ。それがどうした。それが何だっていうんだよ。この恩知らず!」

絹代 「それもこれも小さなお前を抱えて生きて来なけりゃいけなかったからじゃないか。それをお前が非難できるのか。お前が何をした。誰のおかげで暮らしてるんだい。あたしじゃないか、あたしが身を粉にして働いているからだろう。あたしがこうなったのもみんなあんたの親父の所為なんだよ。あたしたちを捨てて出て行ったあんたの親父の所為なんだ。あんたの親父がしっかりしてさえいればこんな事にはならなかったんだ!」

キートン 「父さんの事を悪く言うな」
それはキートンの初めての具体的反抗でした。
いつの間にか息子は男に成長していました。
驚き慌てる絹代でしたが・・・・

しかし絹代はしたたかでした。
絹代 「カアサンだって寂しかったんだ、誰か頼れる人が欲しかったんだよ。・・・しょうがないじゃないか。あたしの周りには誰もいなかったんだから・・・こんなあたしが嫌ならここから出て一人で暮らせばいいじゃないか。どうせあんたも、母さんを捨ててどこかへいくんだ、そうだろう。あの人の子だもんね、そうに決まってる」

絹代 「ああ、ウソ!今言った事はみんなウソだよ。そんな事あたしが思って入る訳がないじゃないか。そうだろう。あんたはあたしのたった一人の息子なんだ、大事な大事な息子なんだよ。お前だって分かっているよね。ねえ、分かってるよね」ねえ、母さん見て。わかってるでしょう!わかってるよね!」
脅し、透かし、泣き落とし。
どんな手を使ってもキートンに「わかった」と言わせる絹代でした。

絹代 「だったら、吉崎のおじさんと会って話してくれる?大学の話なんかしなくていんだよ、世間話だけでもいいんだ。吉崎さんと話しくれればいいんだ。ねえ、お願いだよ。ねえ、話しておくれよ。話してくれるよね」
キートン 「・・・わかった」
受け入れたキートンを見てから絹代の変貌ぶりはお見事としか言えません。
絹代 「・・・(満面の笑み)ああ、そう。ああ、よかった。そう、わかってくれたんだ。よかったよかった。ねえ、何時がいい。そうだ、あの人に連絡して日取りを決めなきゃね。こっちの都合だけじゃ決められないからね。そうだ、電話。電話しなきゃ」
ノッチンの声 「お邪魔します」
絹代 「あら、孝之、お仲間だよ。(大きく)さあ、どうぞどうぞ、上がって」
もうみんなが集まって来る時間でした。
続く。
撮影鏡田伸幸
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