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某銀行員日記

とある銀行員の日常を書いたブログ。政治・経済・文化・芸能、硬軟取り混ぜて日々思ったことを主に書きます。

他人事ではない事件

2012年11月23日 00時00分00秒 | 銀行の話
刃物男、信金立てこもり=職員4人が人質、客1人保護―「野田首相辞めろ」・愛知(時事通信) - goo ニュース

銀行には毎日様々なお客様が来店されます。
その中には招かれざるお客様もいらっしゃいます。
愛知県の信金に立てこもった犯人はまさにそうでしょう。

金融機関はどこも防犯訓練をやっています。
しかし、実際に巻き込まれるケースはもちろんかなりまれです。
実際に巻き込まれた場合、冷静に対処する自信は私にはありません。
今回の事件ができるだけ早く解決するように願います。

それと同時に、この日の締め作業や明日の開店作業なんかはどうするんだろうなあと気になるのは、私が銀行員だからでしょうか(苦笑)




休眠預金が民主党の財布に!?

2012年02月15日 23時51分54秒 | 銀行の話
「休眠預金」毎年850億円、政府が活用策検討(読売新聞) - goo ニュース

とんでもないニュースを目にしました。
金融機関の口座に預けられたままの「休眠預金」を起業家や非営利組織(NPO)などに融資することを検討しているというものです。


銀行関係者以外にはなじみがないと思いますが、この「休眠預金」というのは日本の法律が生み出した徒花のようなものです。
銀行取引では様々な法律によって規定されています。
商法上、5年たつと消滅時効が成立し、預金は銀行のものになります。
同様な規定は民法にもあり、民法の場合は10年です。

休眠預金とは、この民法上の条文から規定されているものです。
もっとも日本国内の銀行のほとんどは、取得時効が成立して銀行のものになっているからといって、その預金を貰い受けるなんてことはしません。
本人確認さえできれば、仮に本人が死亡していても相続人からの正当な申し出があれば、払い出しには応じます。
もちろん利息も付けた上でです。

ではなぜ休眠預金のような制度を作っているのかと言うと、銀行側及び税務的な問題があるからです。
休眠預金に指定されるのは、10年以上預金の預け入れ・払い出し・通帳記帳等の取引がない預金口座のことです。
そのような預金口座を、通常の預金口座と同様に常に取り扱いが出来るようにしておくのは非常に無駄です。
オンライン上で管理する預金口座が多ければ多いほど、管理するコストや事故発生のリスクは拡大します。
使われない預金口座はオフラインにしておくことで、無駄を省いているわけです。
(オンライン上にないので、休眠預金は口座開設店でないと手続きが出来ないというわけなのです。)

税務的な問題というのは、休眠預金は一時的にとはいえ銀行の収入としてみなされます。
払い出されたものは除外されますが、銀行の収益は休眠預金の分だけ増加します。
収益が増加すると、支払う税金が増えます。
少しでも税金を取りたい国税庁等からすれば、少しでも収益としてみなせるものは収益として扱うようにした方がいいわけですから、そう指導しているわけです。
銀行側からすれば休眠預金も通常の預金もいつでも支払う預金にかわりはありませんから、本来ならばそんなことはしたくないのですが、そういった指導があるため一時的に収益として扱っているわけです。


通常の預金とほとんどかわらない休眠預金を、政府や民主党が勝手に使えるようにしてしまおう、なんてニュースが流れたわけですから、銀行関係者が仰天するのも当然です。
しかも、起業家やNPOなどに融資するとなっていますが、その審査等が公正に行われるとは思えません。
返済力や担保能力等があれば既存の金融機関が融資するでしょうから、なんらかの問題がある企業家やNPOに融資することになるでしょう。
金融円滑化法のようにただモラルハザードを招くだけで、結局のところ無駄に浪費されるだけになるのが関の山でしょう。

さらにいえば、政府・民主党の関係者・関係団体が資金を受領することも大いに考えられます。
国民の預金を貰って政府・民主党が好き勝手使います、ということなのですからね。
本当に余計な悪知恵ばかり働くものですね。

宗教

2011年11月30日 00時00分44秒 | 銀行の話
今年ももう一月余りとなりました。
銀行内で出るある通達を見ると、あぁもうそんな時期なんだなぁと思うものがあります。
日本最大の宗教法人である創価学会の年末の寄付の振込の取り扱いに関する通達です。

特殊な手続きが必要であり、また銀行側のミスに非常に敏感なため、手続きについて為替担当者とその上司はこの時期常にピリピリする羽目に。
私がその担当になったことはないので具体的な方法は知りませんが、以前取引先から納付を依頼されたとき、どう処理をすればいいのかわからず困ったことがあります。
担当者に丸投げして事なきを得ましたが(苦笑)

この時期になると毎日毎日何十人もの方が振込用紙と現金を持って窓口に来店されます。
1口1万円からで、5口10口される方も珍しくなく、以前は100口される方がかなり多くいたとも聞きます。
(最近は不況のせいか減っているようです)
詳しくはかけませんが、昔興味本位で振込先の口座の残高を調べてみて、驚いたことがあります。

私は3つの宗教を行ったり来たりする典型的な日本人なので、お布施をする方々の気持ちをわかることは出来ません。
しかし、信じるものは救われるというのが現実にあるのかな、と思った瞬間があるのも事実です。

交通事故で高度な障害を被ってしまったお子さんのために、多額の寄付をし、多数の本を買い、イベント等に参加し、その宗派の代表へ帰依していったお客様がいらっしゃいました。
事故後は寝たきりで何も出来なかったその子が少しずつ身の回りのことができるようになり、銀行の伝票に自分の手で住所や氏名、口座番号、金額を書けるようになったとき、ご両親は今にも泣きそうな目でその様子を見ていました。
その事情を私も知っていたので、記入方法を説明しながら泣きそうになりました。

その奇跡が宗教によるものなのか、それとも両親の献身的な介護によるものなのかは私にはわかりません。
おそらく後者だと思いますが、それを証明するものは何もありません。
そのお客様はきっと前者だと思っているのでしょう。

その出来事があってから、例え「カルト」といわれているような宗教でも、本人が幸福で他者に迷惑をかけないならばいいのではないかと思うようになりました。
何が幸福で何が不幸かというのは主観的な問題ですから、本人以外にはわかりません。
その幸福がその人にとって最も感じることが出来れば、表現方法を変えるならば効用が最大化できるのであれば、その宗教の信者でなければ詐欺としか思えないようなことでも自由にやってもよいのではないか、と思うのです。
もちろん後になってから「騙された」と言うのは自己責任としか言えませんが。

銀行と暴力団

2011年08月26日 21時56分32秒 | 銀行の話
島田紳助、涙の電撃引退!暴力団とメール(サンケイスポーツ) - goo ニュース

タレントの島田紳助さんが所属していた吉本興業を退社し引退を表明しました。
散々報道されているのでご存知でしょうが、暴力団との私的な交際が原因です。

記者会見の様子も見ましたが、島田紳助さんからは「なんで付き合っただけで辞めなきゃいけないんだ」という思いを感じ取ることが出来ました。
他の有名芸能人からも、暴力団と付き合うのは普通のことで何が悪いのかわからないというような発言をしている人もいました。
視聴者からのバッシングであわてて弁明したようですが、実際のところ何故悪いのかわかっていないでしょう。

しかし、これは芸能人だけに限ったことではありません。
一般人も、何故暴力団、もっといえば反社会的勢力といわれる「暴力団、暴力団員、暴力団関係企業・団体、またはその関係者、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他反社会的勢力」と交際するのが何故いけないのか、そしてその根拠はなんなのかわかっている人は少ないでしょうか。

ほんの10年ほど前まで、ここまで強い規制はありませんでした。
もちろん暴力団のような反社会的勢力と違法行為を行った場合は処罰されましたが、交際するくらいでは問題はありませんでした。

きっかけになったのは2001年9月11日、そうアメリカで起こったテロ事件です。
あの事件をきっかけに、世界中でテロリズムとの戦いが始まりました。
テロリズムとの戦いの中で、テロ勢力の資金源を押さえ込む動きが起こり、そういったテロ勢力とつながっていた日本の暴力団の資金源を押さえ込まねばならないという方針が日本国政府の中で決まっていったのです。
もちろんもともとそういった反社会的勢力を社会から根絶したいと考えていたのが日本国政府の方針ですから、大義名分が出来たといったところでしょうか。

日本国政府は金融機関に対して、国内外の反社会的勢力との取引根絶を命令しました。
資金源を断つには金融ネットワークから締め出すのが一番手っ取り早いですからね。

日本国政府の命令はもちろん法的根拠はありません。
「暴力団と付き合うのは違法ではない。」と言う人もいますが、これは正解といえば正解です。
しかし、法律だけで国家が運営されるわけではないのです。
法律に規定されていないからといって何をしてもいいというわけではなく、政府の方針に左右されることが数多くあります。
特に銀行のように、政府に生殺与奪を握られている金融業界は、その政府の方針に従う以外に方法はありません。

金融業界への命令は次々にエスカレートしていきました。
銀行業界に限っていえば、融資に限らないあらゆる与信行為は禁止され、預金口座を作ることも使うことも出来なくなりました。
反社会的勢力とわかっているのに取引を継続した場合、銀行がペナルティを受けるようになりました。
そして、反社会的勢力とつながりがある関係者も反社会的勢力とみなされるようになりました。

つまり、銀行取引を続ける上で、反社会的勢力ではないと証明することが法人にも個人にも必要になったのです。
島田紳助さんも会見の中で「芸能界のモラル」「芸能界のルール」というようにいっていましたが、実際はそんな矮小な問題ではないのです。
反社会的勢力とのつながりを絶つことは日本国政府の全国民への命令なのです。
芸能人に限ったことでもないのです。

それが島田紳助さんはわからなかったのです。
一般人になったから大丈夫、そう思っているかもしれませんが、実際は一般人も反社会的勢力とつながりを持つということは日本国で生きる上では致命的なことなのです。
誤解を恐れずにいえば、暴力団をはじめとした反社会的勢力は人だ、というのが日本国政府の見解であり、それに反することは日本国にいる限りは無理なのです。

今後はさらに反社会的勢力への締め付けは厳しくなっていくでしょう。
すでに社会権の一部を剥奪されているような形になっていますが、そのうち生存権すら剥奪されかねません。
それが世界の潮流であり、日本国政府の方針なのです。

島田紳助さんは引退という形で責任が取れてよかったのではないでしょうか。
数年後にはそれが逮捕になっていても全くおかしくは無いのですから。

平成23年が始まって

2011年04月03日 22時55分11秒 | 銀行の話
平成23年が始まりました。
もちろん年度での話です。
普通の暦の上では3ヶ月前に始まっていますが、数多くの企業や官公庁では4月からが平成23年の始まり。
リセットされて新たな1年がスタートするわけですが、私も6年目がスタートし、新たな仲間を迎えるというわけです。

皆さんも新たな生活を迎える人が多いと思います。
環境の変化を迎えて人も多いでしょう。

平成22年の最後の1ヶ月には様々なことがありました。
平成23年が良い年でありますように。


震災の影響

2011年03月28日 23時41分42秒 | 銀行の話
東日本大震災が起こって早3週間がたとうとしています。
原発周辺地域以外は大分落ち着きを取り戻しつつあり、復興への一歩を踏み出しつつあるように思います。

こうなってくると、被災地以外の地域の影響も段々とわかってきます。
計画停電、被災地の企業との取引、自粛ムードに伴う消費の減少等々、原因は様々ですが業況に影響を受けたという話を先週から色々と聞くようになりました。

大多数は悪影響です。
東北地方の企業への売掛金、手形が回収できないかもしれない、
東北地方の企業が主要販売先、主要仕入先だったのにそのルートが断たれてしまった、
計画停電の影響で生産計画が狂ってしまった、商品が売れなくなってしまった・・・
すぐに解決できる問題ではないだけに、その企業の経営者の悩みは深刻です。

ただ、一部には逆の効果を受けた企業もあります。
西日本の商品を東日本へ販売しているような企業は、東日本の商品が無くなっているおかげで売上が急増しているという話を聞きました。
東北地方への売上は激減したそうですが、それ以上に関東地方への売上が急増したそうです。

とはいえ、先ほども書いたとおり、こういった企業は極一握り。
大多数の企業は見えない明日へどう対策を立てようか四苦八苦しています。
私もそれを少しでもお手伝いできれば、と思っていますが、なかなかそれも難しいんですよね。

システム

2011年03月18日 23時35分49秒 | 銀行の話
決済システムダウンの懸念も浮上、みずほ銀のシステムトラブル(トムソンロイター) - goo ニュース

みずほ銀行のシステムトラブルが拡大しています。
なかなかコメントしづらい話題なのですが、これが原因で数多くの人々、企業が迷惑を被り、場合によっては資金繰りに苦慮することもあるかと思います。

私はシステム関係は全くわからないのですが、色々な原因が考えられるにせよ、他の金融機関でもありえることです。
全金融機関のシステム担当者には、この出来事を他山の石として欲しいですね。

災害と銀行

2011年03月12日 10時46分10秒 | 銀行の話

東日本大震災 M8.8世界最大級、沿岸に大津波(朝日新聞) - goo ニュース
終電繰り下げや終夜運転も 鉄道各社の運転状況(朝日新聞) - goo ニュース
「気仙沼港が火の海」 市街地の民家へ延焼、爆発音も(朝日新聞) - goo ニュース

まず、東北地方太平洋沖地震に被災された全ての方々にお見舞いと、亡くなられた方にご冥福を申し上げます。

次々とテレビのニュースに映し出されるその光景が、映画ではないかと目を疑ってしまいます。
「○○市ほぼ壊滅状態」などという言葉が出てきて、土砂や瓦礫に埋まった家屋が出てくると、言葉を失ってしまいます。

ここまで大きな災害にもかかわらず、人々が整然としているのは日本人らしさともいえるでしょう。
とはいえ、地震国日本でも、ここまで大きな自然災害の前では無力なのか、と痛感させられてしまいました。


先ほど、官房長官の記者会見で言ってましたが、通帳等が無くても預貯金がおろせるように金融庁・日本銀行へ指示をだしたとか。
このような大規模災害のとき、顧客保護のため普段では絶対に出来ない通帳や印鑑、カードがなくても現金を受け取れるようなしくみがあるのです。

阪神大震災の時の教訓で整えられたそうですが、全金融機関で対応ができるようになっているはずです。
恐らく、東北地方の金融機関は、今頃その対応に追われているでしょう。
職員や家族に死者行方不明者がいてもおかしくないのに、非常に辛い作業になると思います。

私の近くでこういった災害が起こった場合でも、私も対応をしなくてはなりません。
果たしてその対応が出来るのか…
一応銀行員ですから対応しなければならない義務はあるのですが、大丈夫なのか不安です。

金利の話

2011年03月02日 20時35分53秒 | 銀行の話
大手3行、住宅金利引き上げ 10年固定4.05%(朝日新聞) - goo ニュース

メガバンク3行が住宅ローン金利をいっせいに上げました。
いくら市場によって金利が決定される長期金利に基づくとはいえ、ここまで横並びなのはどうなのか、とも思いますが、今後金利が上昇していくのは間違いないでしょう。

ここで注意してもらいたいのが、金利の上昇を日本の危機と煽る輩が非常に多いことです。
グローバル化、IT化が高度に進み、経済の結びつきが地球規模にまで拡大しつくしてしまった現在、金利と言うのは一国の情勢だけで決まるものではないのです。
同様に、日本の金利が低いのは多額の国債の利払いを減らすために政府や日銀が主導しているなどというのもありえない与太話です。

単純に考えれば、ドルやユーロ、そして株式市場から流入した投資マネーが国債市場に流れ込んでいるため、と言うのが為替、株式相場の動きを踏まえると言えるのではないでしょうか。
まぁ何が原因だとしても、ここ数ヶ月の長期金利の水準が非常に低く、これ以上下がらない水準であったのは事実です。
残されているのは横ばいで推移するか上昇するかだけ。
何かのきっかけで急上昇しても全くおかしなことではありません。

こうなると何が変わるのか?と言うことが問題になりますが、急に何かが変わると言うことは無いでしょう。
そろそろ家を買おう、住宅ローンを借り替えようと思っている人なら、出来るだけ早めにしておいた方がいいでしょうが、それ以外の人に特に大きな影響はありません。

いくら金利が急上昇したとしても、デフレ下の日本ではたかが知れています。
本来なら政府・日銀が何か対策をしなければいけないのですが、余りにも経済オンチすぎて何も対応を取れていません。
参院選の前からそうでしたから、ただ何も考えていないのでしょう。
もっとも、過去何人かの自民党政権が様々な方策をしてもダメだったデフレ対策が、今の民主党政権にできるとは到底思えないですし、余計なことをしない分、まだマシかなとも思ったりもしています。

融資=傘では無い

2011年02月22日 23時30分32秒 | 銀行の話
またずいぶんと前回の更新から間があいてしまいました。
1日でも多く書くと先月言ったばかりなのにこの体たらくです。
うーん、情けない。

本当は書きたいことはとても多いんですけどね。
銀行関係の話だと、守秘義務の壁もあって中々詳細には書けず、
また時間を置かないと私が書いてしまったことがばれると、最悪懲戒解雇もありえるのでなかなか難しいのです。
銀行内部はもちろん、お客さん関係のことは尚更そうです。

ただ、もうすぐ私も銀行員生活が6年目に突入します。
そろそろ詳細をぼかしたり前後関係を曖昧にすれば、数年前のことならば書けるかな、と思い始めています。
おいおい時間が出来ればゆっくり書いていこうと思います。


今日は銀行の内情ではなく、銀行から見た外側の話を。
銀行といえば、晴れの日に傘を貸すと言って、雨の日に傘を貸さないとよく言われます。
まぁ確かに、業況が悪化すると貸出が渋くなり、金利が上がり、しまいには撤退=新規の融資には応じないなんてこともあります。

銀行だって営利企業だだから仕方がない。
いや、銀行の公的性格を考えればそういう時こそ融資すべきだ。
などというありきたりな論議はとりあえず置いておきます。
銀行が何故融資をしないのかというのは別の問題が原因だからなのです。

銀行等の金融機関以外で融資をしている業者、所謂ノンバンクといわれる貸金業者は、自分の資金でお金を融資しています。
その自分の資金は誰かから借りてきたものかもしれませんが、あくまでも自己資金です。
それを誰に貸そうが自由なわけで、だからこそ高金利でリスクをとりながら稼いでいるわけです。
(最近は金利を下げられ、後付の論理で金を取られ、踏んだりけったりで大変だとは思いますが)

しかし、銀行は違います。
融資しているお金は自分の資金ではなく、預金、つまり誰かが「預けた」お金なのです。
誰かから「預かった」お金ですから、大事に運用しなければなりません。
リスクも大きく取れません。
担保を取り、保証を取り、二重三重にも保全を準備するのは、万が一にもそのお金を毀損できないという事情によるものです。

さて、ここで本題に戻りましょう。
ここに潰れそうな会社があります。
融資が必要と言っています。
融資をしたら戻ってこないかもしれませんが、あなたの預金で融資をしてもいいですか?

こう聞くとほとんどの人がノーと答えるでしょう。
だから銀行は融資できないのです。

貸金業者と同じく金利を高くすればいいじゃないか、という人もいるかもしれません。
しかし、それも出来ません。
なぜなら、いくら高金利とはいえ、潰れそうな企業に融資をすると多額の貸し倒れ引当金を準備しなければならないからです。

融資は何があっても回収し、預金の払い出しに備えなければならない。
そのために、万が一のための準備は万全にしろ。
というのが日本の金融行政の根本的な考え方です。
ですから、潰れそうな会社へ融資した場合は、多額の貸し倒れ引当金を準備させられるのです。

貸し倒れ引当金を甘く見てはいけません。
過去、数多くの金融機関が金融庁による貸し倒れ引当金の積み増せという命令によって赤字に転落し、自己資本が減少し、自己資本比率が基準を割り込んでしまい、潰されていきました。


だから雨の日に傘を貸さないのは当然だ、と開き直るわけではありません。
むしろ、傘が必要だ、と思うのが遅すぎると私は思っています。

実際のところ、多少赤字を計上したところで銀行が融資を取りやめることはありません。
日本の企業の大部分は赤字なのですから、それは当然なのです。
銀行が融資を引き上げるという決定をしたということは、もはやこの会社に未来はない末期状態であると判断した時なのです。

なぜそこにいたるまでに備えを怠っていたのでしょうか。
業況がいい時に事業を拡大したり他業種へ進出したりと、業況が悪化した時へ備えることは出来たはずです。
そのために銀行は協力を惜しまないでしょう。
それを「晴れの日の傘」などといいこの世の春を謳歌して冬に備えず、いざ冬になって業況が悪くなり、どうしようもなくなってから融資を申し込んで断られたのに銀行を怨むのは責任転嫁というものです。

銀行の融資はその時の雨をしのぐものではありません。
万が一雨が降った場合に備える屋根と言った方が正しいように思います。
土砂降りの雨の中で屋根を作ったところで遅いのです。

業況がいいときだからこそ融資を受け事業拡大し、業況が悪い時だからこそ借り入れを減らし事業を縮小する。
これが成功への一番の近道なのですが、世の中の経営者のほとんどはこれと間逆のことをやって没落していっています。
だからこそ、「晴れの日の傘」などというのでしょうが。