某銀行員日記

とある銀行員の日常を書いたブログ。政治・経済・文化・芸能、硬軟取り混ぜて日々思ったことを主に書きます。

銀行と暴力団

2011年08月26日 21時56分32秒 | 銀行の話
島田紳助、涙の電撃引退!暴力団とメール(サンケイスポーツ) - goo ニュース

タレントの島田紳助さんが所属していた吉本興業を退社し引退を表明しました。
散々報道されているのでご存知でしょうが、暴力団との私的な交際が原因です。

記者会見の様子も見ましたが、島田紳助さんからは「なんで付き合っただけで辞めなきゃいけないんだ」という思いを感じ取ることが出来ました。
他の有名芸能人からも、暴力団と付き合うのは普通のことで何が悪いのかわからないというような発言をしている人もいました。
視聴者からのバッシングであわてて弁明したようですが、実際のところ何故悪いのかわかっていないでしょう。

しかし、これは芸能人だけに限ったことではありません。
一般人も、何故暴力団、もっといえば反社会的勢力といわれる「暴力団、暴力団員、暴力団関係企業・団体、またはその関係者、総会屋、社会運動標ぼうゴロ、政治活動標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団、その他反社会的勢力」と交際するのが何故いけないのか、そしてその根拠はなんなのかわかっている人は少ないでしょうか。

ほんの10年ほど前まで、ここまで強い規制はありませんでした。
もちろん暴力団のような反社会的勢力と違法行為を行った場合は処罰されましたが、交際するくらいでは問題はありませんでした。

きっかけになったのは2001年9月11日、そうアメリカで起こったテロ事件です。
あの事件をきっかけに、世界中でテロリズムとの戦いが始まりました。
テロリズムとの戦いの中で、テロ勢力の資金源を押さえ込む動きが起こり、そういったテロ勢力とつながっていた日本の暴力団の資金源を押さえ込まねばならないという方針が日本国政府の中で決まっていったのです。
もちろんもともとそういった反社会的勢力を社会から根絶したいと考えていたのが日本国政府の方針ですから、大義名分が出来たといったところでしょうか。

日本国政府は金融機関に対して、国内外の反社会的勢力との取引根絶を命令しました。
資金源を断つには金融ネットワークから締め出すのが一番手っ取り早いですからね。

日本国政府の命令はもちろん法的根拠はありません。
「暴力団と付き合うのは違法ではない。」と言う人もいますが、これは正解といえば正解です。
しかし、法律だけで国家が運営されるわけではないのです。
法律に規定されていないからといって何をしてもいいというわけではなく、政府の方針に左右されることが数多くあります。
特に銀行のように、政府に生殺与奪を握られている金融業界は、その政府の方針に従う以外に方法はありません。

金融業界への命令は次々にエスカレートしていきました。
銀行業界に限っていえば、融資に限らないあらゆる与信行為は禁止され、預金口座を作ることも使うことも出来なくなりました。
反社会的勢力とわかっているのに取引を継続した場合、銀行がペナルティを受けるようになりました。
そして、反社会的勢力とつながりがある関係者も反社会的勢力とみなされるようになりました。

つまり、銀行取引を続ける上で、反社会的勢力ではないと証明することが法人にも個人にも必要になったのです。
島田紳助さんも会見の中で「芸能界のモラル」「芸能界のルール」というようにいっていましたが、実際はそんな矮小な問題ではないのです。
反社会的勢力とのつながりを絶つことは日本国政府の全国民への命令なのです。
芸能人に限ったことでもないのです。

それが島田紳助さんはわからなかったのです。
一般人になったから大丈夫、そう思っているかもしれませんが、実際は一般人も反社会的勢力とつながりを持つということは日本国で生きる上では致命的なことなのです。
誤解を恐れずにいえば、暴力団をはじめとした反社会的勢力は人だ、というのが日本国政府の見解であり、それに反することは日本国にいる限りは無理なのです。

今後はさらに反社会的勢力への締め付けは厳しくなっていくでしょう。
すでに社会権の一部を剥奪されているような形になっていますが、そのうち生存権すら剥奪されかねません。
それが世界の潮流であり、日本国政府の方針なのです。

島田紳助さんは引退という形で責任が取れてよかったのではないでしょうか。
数年後にはそれが逮捕になっていても全くおかしくは無いのですから。

柔らかい話

2011年08月24日 00時11分01秒 | 日記

久しぶりに更新します。
最近は本当に月に1回出来るか出来ないで、こうかいてばかりのような気がしますが(苦笑)

というのも、日々の仕事が忙しいというのもありますが、書くネタがないというのもあります。
正確にいえば書けるネタがないということでしょうか。

面白い話は確かにあります。
しかし、顧客の情報や社内の機密に関わることで、外部の人間にはなかなか話せないことばかり。
ましてやネットに核なんてとんでもない内容ばかりなのです。
数年たってほとぼりが冷めれば書けるかな、というものもあるのですが、時間がたちすぎて鮮度が落ちてしまい、時機を逸してしまっています。

そのためそれ以外になると、現在の政治経済情勢ネタになってしまうのですが、政治ネタは衆議院の解散まで封印していますし、経済ネタもあまりにも暗い話ばかりなので書きたくも無いというのが正直なところ。
ですから今日は架空の話にツッコミをいれるという野暮だけど柔らかい話を。

今週の週刊少年ジャンプに連載しているバクマンというマンガの中に、ある登場人物がマンガを作るための会社を設立するというネタがのっていました。
明らかに破綻するような設定ですが、実際にどうなのか検証してみます。


とりあえず毎月必要な費用等の支出から。

人件費は受講生の16人及びマンガ喫茶に来ている高校生は全員アルバイトで都内の最低賃金821円とします。
受講生の労働時間は週40時間、高校生は平日は1日平均3時間で100人、土日は平均6時間で100人と仮定します。
単純計算で月1100万円。

4人の講師陣は実力のある漫画家ということで、平均年棒1000万円としても月350万円ほど。

マンガ喫茶運営スタッフも必要です。
毎日100人が来るというわけですから、常時3名程度は必要でしょう。
平日は6時間、土日は12時間として、最低賃金のアルバイトしたとしても月50万円位。
マンガ喫茶のカメラでとった映像を分析する人も必要ですが、ここでは講師と受講生が行うということで考えないでおきます。

受付は土日も開いているでしょうから交代制で3人必要と仮定し、派遣会社を利用するとして月100万円

さらに会社全体を統括する人物も必要でしょう。
まだ若い社長にも、秘書のように使っている漫画家の講師にもそういった手腕があるとは思えないので。
部長クラスが1人、事務員が2人として、人件費で月100万円といったところでしょうか。


無駄にエスカレーターまである5階建ての建物ですから、月の電気代は50万円程度でしょうか。
さらに冒頭に登場した車。
リースだと月20万円程度するでしょう。
講義に必要な備品、マンガ喫茶の椅子、あちらこちらにある観葉植物、そしてマンガを書くのに必要なコピーやスキャナ機能を持った複合機、パソコン等も必要です。
どう考えてもリースで月20万円は必要です。
それ以外の電話やFAX,インターネット等も必須で、安く使ったとしても月10万円ほどでしょうか。

人件費だけで月1700万円、それ以外の諸経費で月100万円。
合計で1800万円が毎月何もしなくても出て行きます。

これには作品内でよく出てくる「ボーナス」は考えていません。
ただ、最低賃金で雇用しているということはある程度ボーナスを豪華にしないとモチベーションが維持しないでしょう。
以前この作品の中で、アシスタントがいいネタを出したら1ネタ1000円というのがありましたが、それを基準に考えても200万円はかかるでしょう。


ざっとページ上に現れているだけでも、月2000万円くらいは必要だと思われます。
さらにこれには社長の役員給与や福利厚生費、社会保険料の企業負担分等は考慮していません。
その他諸々の必要経費や設備があるのでまだまだ経費は膨らみますが、今日のところは考えないでおきます。


一方収入の部。

ベテラン漫画家ということですが、近年余り活躍していない様子でした。
新人が1ページ1万2千円ということですから、2万円程度としておきます。
6割がこの会社の取り分ですから、単純計算で1ページにつき1万2千円の売上です。

上で毎月の支出が2000万円としましたから、単純に毎月1667ページの連載が必要です。
毎週417ページですから、週刊連載を20作品を掲載しなければなりません。
休載があることを考えれば、25作品は最低限必要でしょう。

この会社の特徴として、講師4名と受講生16名全員で一つのネタを考えるというシステムがあります。
クオリティを上げるためのようですが、こんな体制では25作品を支えるということが物理的に不可能であると言えるでしょう。

ヒット1本で黒字に転換などと甘いセリフも中にはありましたが、そういう山師的な考えに金融機関は絶対に融資は行いません。
ベンチャーキャピタルでも難しいのではないでしょうか。
この社長の父親が資産家だから大丈夫という人がいるかもしれませんが、いくら息子でも延々赤字しか生み出さない企業に投資を続けるまともな人はいません。
(まともじゃないひとはいますが、いずれ破綻します。)

また、仮に1本ヒットを作り出したとしても、本当に黒字転換するか疑問です。
マンガの単行本の年間売り上げトップ50に入るくらいの大ヒットだとしても、50万部程度。
その規模の単行本を年間6冊出版したとして、年間300万冊です。
印税が1冊40円、会社側の取り分が6割だとして7200万円です。
(ちなみに、2010年でいうとバカボンドや名探偵コナンクラスの売上ということになります)

年間の必要経費が2億4000万円ですから、まだまだ足りません。
上記の大ヒットを2本出した場合、残りを原稿料で補うとしたら毎週8~9作品の連載が必要です。
大ヒットが3本の場合でやっとその大ヒット以外の定期連載が不要という形になります。
ここまで言えば、この会社のシステムが成立し得ないということがわかるかと思います。


そして、ここには重要な事が省かれています。
あのオシャレなビルのことです。
具体的にいくらくらいかかるのかざっと計算してみました。

土地が50坪程度、自社ビルは5階建て、一般的なビルの構造と異なるため新築と想定しました。
高校生を集めるためある程度交通の便がよいところであるので、都内近郊中央線沿線徒歩10分圏内を想定しました。
ぱっと見100坪くらいありそうだけど、必要な部屋の広さを考えるとこの程度のはずです。
またマンガ喫茶はパソコン、食事等の設備が不要なので最小限の設備で運営するとします。


○自社ビル建設費・・・2億円(坪単価100万円、容積率400%)
○自社ビル用土地購入費・・・1億円(坪単価200万円)
○マンガ喫茶開業費用・・・2000万円

数ページを見るだけで最初に必要な固定費だけでこれだけは必要。
内装もかなり凝っているようなので、自社ビルの建設費用はもっとかかるかもしれません。
これも裕福な父親に出してもらったとも言うのでしょうか。


このシステムを無理やり成立しようとすれば、設備の簡素化と人件費の削減は必須でしょう。
立ち上げたばかりの企業が自社ビルや高級車なんてもっての他。
テナントビルを1部屋借りれば十分で、人も受講生5人講師1人までにおさえ、受付やマンガ喫茶も無くし、必要最小限での運営を行います。
経理関係を行うのは社長の仕事。
先輩漫画家に会いに行く暇なんてありません。
高校生も定期モニターということで、10名程度を週に1~2回呼ぶというような形式にすべきでしょう。

漫画的な表現のために大分豪華にしたのでしょうが、現実的にはこの程度にするべきです。
とはいえ、何も実績が無いわけですから、この程度に抑えても相手にする金融機関があるか微妙なところです。

各商工会議所や信用保証協会、日本政策金融公庫等の創業資金制度は利用できるかもしれませんが、立ち上げから軌道に乗るまでは地獄の日々でしょうね。
私ならこんなビジネスモデルでは、仮に軌道に乗っていたとしても融資の承認を得る自信はありません。
長々と書いてしまいましたが、それほどアンバランスなビジネスモデルなのです。

大場つぐみ先生がこの話をどのようにもっていくのか、非常に興味深いですね。