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続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

ホッパー『ガソリンスタンド、1940』

2020-10-04 07:41:38 | 美術ノート

   『ガソリンスタンド、1940』

 消失点が画面のずっと奥(右端)にあるが、この画は画面中央にいる男を真正面から描いている。つまり二つの視点を持ち、この景の空気を心理的に歪めている。
 正面の林は暗く深く何かを隠しているようである。
 下草が総て枯れているのは秋というより晩秋(冬)であるが、空は青く影も淡い。建屋の灯りと自然光とが混濁しているのは夏の終わりの夕べという印象である。

 晩秋と晩夏が入り混じり、視点も左右にわかれ、景色をやや上方から俯瞰しているのに、左端からの景(林)はより下にある。
 時空は切れ切れであるのに連鎖を装っている。
 この画になかには大きな矛盾が潜んでいる。円形の三つが鑑賞者の注意を一点に集めてはいるが、集合と拡散が一体化する空気である。不自然であり、危うい空気に満ちている。その下、警告・危険を暗示するかのような真っ赤な三本、そしてその陰に作業中の少し屈んだ一人の男の姿がある。

 1940年アメリカ。1939年、第二次世界大戦開始の状況下である。
 不穏な空気は、このガソリンスタンドという猛烈なエネルギー源を蓄えた場所にあって鮮烈な恐怖と不安を醸し出す。
 1940年、ガソリンスタンド…多くを孕みつつ静かに時をやり過ごしている。


 写真は『HOPPER』(岩波 世界の巨匠 ホッパーより)


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