女は下を見ているように見える。視線の先が太腿を抑える男の手にあるのか、他に思いを馳せているのか、恐怖のためなのかは分からない。
髪の乱れは少なくとも平常心ではないということであるが、男を拒否し離れさせようとしているのか、あるいはこちらへ引き寄せようとしているのかは不明なままである。
観点は女があらかじめ裸体であることで、男を誘い込んだとも思えるし、不用意に襲われているとも思える。逆の観点を双方許容した同等のバランスにも見て取れる。
性を喚起させる光景でありながら、官能的な要素はなく、むしろ強姦のイメージである。
背景は深緑という時代を特定しない時空であり、過去・現在・未来において、いずれの時代にも相当し得る倫理を超えた暴力(セクハラ)があるということではないか。
男の側からばかりでなく、剛腕な女の側もあり得ると。
(写真は新国立美術館『マグリット』展/図録より)
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