
『占い』
建物の開口部から海・空・大地を望み、その中央に鼻(鼻のみ)が鎮座しているという光景。背後には例の一葉に模した樹が一本、唐突に立っている。
怪しい雲行きの空、曇天の下の青い海、草木の一本も生えていない地面に一葉の形をした葉脈の代わりに根毛を拡げた天地逆さまの樹(あり得ない空想の樹)がある。
嘘と真の混在、巨大な鼻(嗅覚)が地上に鎮座するという奇怪。
この景色は何を意味しているのだろう・・・「占い」は、未来を予知する感覚的な仕事である。
過去におけるデータの集積、確率論、統計はものを言うかもしれないが、あくまで実体のない空気を読む作業である。
鼻における気体の分析、見えないものを感知する鼻は、化学の領域の作用を有しているかもしれない。
しかし、『占い』は、心理的な領域にのみ作用する判断であって、実質的な計画、物理的な予測ではない。
精神界にのみ通用する『占い』の実態は、ことほど左様に滑稽さが鎮座するものである。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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