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続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

若林奮『無題』

2021-04-07 06:33:09 | 美術ノート

   『無題』

 名づけようがないもの、名づけられないものとしての形象。しかし、これを形態に留める必然性を感じざるを得なかったもの・・・。
 鑑賞者にとっては難しい提示である。

 地表から緩やかな坂(勾配)があるが、地表に等しくえぐられた穴がある。この二つの地表面に等しい穴は、地表面からすれば続きであり属しているが、坂(勾配/山)から見れば、地下である。この二つの面には緑色の着色があるが、これは植物を指しているのだろうか。
 とすれば、天地が逆である。同じ堀跡に見える形には微妙に差異がある。同じではないという主張、しかし意味を見いだせない。この二つの堀跡はつながっていると思われるが断絶かもしれない。見えないものは事実を隠している。

 二つの堀跡の周囲の線上には連続した穴がある、何を報せるものだろう。心理的な暗示であって物理的な根拠に欠ける点描である、
 作家は何を意図してこの形を決定するに至ったのか。

雑多な思惑を捨ててみれば、これは大地、地表の模型である。ただ違っているのは人為的に刻み掘られた類似(二つ)の地表に続く穴があることで、これは説明としての断面かもしれない。
 地表にあるはずの緑が地下に見えるという位相、これは解き難い。しかし、この大地には過去の眠りが隠れているという事実ではないか。

 幾層にも重ねられた地表の記憶(神秘)、作家はこれをごく単純化して示唆しているのだと思う。


 写真は『若林奮ーVALLEYS』展より・横須賀美術館


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