
この三体のある位置は、月・星・太陽の通り道である。それほどに大きな力、支配力を有した提示・暗示である。
一見、白く淡く軽く美しくさえあるこの三体。よく見れば、硬質であり意味を所有している事物であり、地上の人々は尊敬の念をもって崇めているゆえに高く掲げられているとも言える。
引きずり下ろすことの無礼は犯罪に値し、罰せられるかもしれない。
人々が崇敬をもってこの三体を崇める景色は平和だろうか。草木のない荒地は光に満ちているとは言い難い。地上の薄暗さに比して三体は光輝いている。この光では地上の照度は満たしきれない。
マグリットはこの三体に何を重ねたのだろう。
『不穏な天気』とタイトルしている。未来への不安であり、明日への危惧である。
雲の千変万化、いずれ流れて消えて行く宿命としての三体、疑似人間・増幅される命令・大いなる地位・・・これらがもたらす近未来への不安。不安は現実ではなく、あくまで予想する未来である。しかし、《不穏》と形容している予想図は打ち消し難く鑑賞者の胸を刺すのである。
写真は『マグリット』展・図録より
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