
『観光案内人』
擬人化されたビルボケ三体はローブを身に着けている。三体の時代を表すものというより、空気間を肌で感じる着衣と考えてもいいかもしれない。
時代は特定できないが、彼が手にもつ燭台は、明らかに現代の建築物である。これを見本として指し示すということは、未来の時空である。背景の海や空の雲に変りはないので他の星ではなく、やはり地球の果てなく続く未来という設定だと思う。
観光案内人であれば、観光をする人々も又、同じような風袋なのだろうか。彼らは何かを模して案内をしているのだろうか。極めて表情を読み取りにくいが、大きな口から《火》を噴いている。怒りだろうか、告発だろうか、言葉は失われ現象《火》が伝達手段となる時代なのだろうか。
今(現代)を結ぶものは背景の海と空の自然、そして手に掲げられた建物だけである。この時空はいったい何時なのか、既知の過去でも現在でもない、とすれば未来しか残らない。
観光案内人は何を案内しているのだろう。燭台(現代の建物)を持って火を噴いているということは今ある現代への説明(批判)に違いない。
未来に於いて怒りや告発をもって説明(案内)される現代への警告かもしれない。
写真は『マグリット』展・図録より
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