
『手の力』
水平線と薄雲る空、手前にはブロック(石積み)、その上の建屋(城)、コップに水、バラ一輪・・・。これを持って「手の力」であると。
水平線は決定事項である、それ以外の対象物に関しては疑問が残る。
ブロックの上の建屋、建屋より大きなブロックなど見たことがないし造れるものでもないから、建屋はミニチュアという答えになり、建屋に比してコップは巨大を疑うが、ブロックに比してひどく小さいと思わざるを得ない。バラはコップに準じるが、建屋をひどく小さく見せるものである。
建屋の入口に人を立たせてみると、コップやバラは巨大化し、コップを手に取ろうとすると、入口は矮小化する。
この奇妙なアンバランス、違和感を感じる知覚作用(観念)を謀る(計画)ことこそ、『手の力』である。手は、持ち、支え、投げるといった働きをするばかりではなく、視覚を錯覚させる描法をも持ちうる。もちろん指令は脳にあるが、脳が描くわけではない。
手の力、手の魔術によって精神界を揺さぶり、その深淵に迫ることも可能かもしれない。手には『力』があることの証明である。
写真は『マグリット展』図録より
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