
『飛葉と振動』
台座の上に頭部だけを出した白い布にくるまれた人体と幾本かの様々な棒状のものが林立している。ただそれだけの漠たる光景である。
飛葉は樹木から離れた葉のことであり、つまりは葉の終末である。消滅しつつある死へ向かうしかない在りようの刹那である。
振動とは揺れ動くことであり、一定の周期をもって運動を繰り返すことである。つまりは生命のリズムであり、生の証明である。
《頭部だけ出した、白い布にくるまれた人体》と《木の葉を落とした樹木の林立(飛葉に主眼)》の対峙。
すなわち、生と死の狭間である死への覚悟、死に向かうものの仮葬ともいうべき愁然の光景である。
この作品を思うたびに、胸につまされ慟哭の思いに駆られてしまう。
(写真は神奈川県立近代美術館/葉山『若林奮 飛葉と振動』展・図録より)
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