『会話術』
会話ではなく会話術である。会話をする手段、意思疎通の手立て、人と人の間をつなぐ《言語》という記号は、自然発生的に必要欠くべからざるものとして確立されたのに違いない。
会話は、形を伴わず消失を免れない共通の約束であれば、声の届く範囲での現象に過ぎないので、残存し記録化されることのない方法である。
しかし、にもかかわらずここでは切り出された石で意味(夢/REVE)を持つ単語を表意しており、そしてこれを以って会話術と名付けている。少なくともこの言語を知る民族ならば共通のイメージを認識しうるはずであるが、知らない他民族においてはただの石の積み重ね(設置)に過ぎず、会話(意思疎通)は成立しない。
会話は集積されたデータ(約束)の下に為されるものであるが、その約束は口伝よりも、文字に書き記したものを学習するほうがより効率的であり、伝達の対象として大衆の範囲にまで広げることが可能になる。要するに会話の術は、文字の学習により多くの人たちとの共有を許容することである。
人為的にカットされた巨石が文字の形をとることは通常ではありえないが、現実そのもののように感じる《夢》としての現出(幻想)は、会話が何らかの情報を媒介にしているという示唆である。
(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)
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