
『嵐の装い』
難破船(多くの死者)を迎える冥府での装い(礼服)。
ここに感情はない、ただ空漠とした光景に鑑賞者はそれぞれの想いを募らせる。作家(マグリット)の眼差しは二つにつないだ世界をさらに遠くの視点から客観視している。作家は難破船(現世)の側の存在者だが、来世、亡くなった母親(死者)の視線に寄り添っている。
生きることは辛苦の渦中、難破船の宿命に酷似している。あの難破船の中にわたし(マグリット)はいる、と。暗い海に光はないが、母がいるであろう来世にはきっと光が射しており、その礼装は、無限に広がる世界(慈愛)を刻んだものに違いない。
マグリットは自分(難破船)を見つめ、苦笑しているかもしれない。
写真は『マグリット』展・図録より
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