
『ハゲタカの公園』
奇妙な空間である。木箱への視点が定まらない。一見納得できる風ではあるが明らかに遠近法的には違和感がある。
黒い山並みは草木の生えない相当に標高の高い場所なのだろうか、しかし雪もない。架空の山並みは《死の世界》を思わせる。
にもかかわらず箱状の囲みの中には樹木が生えている、板面から樹木がという奇異。しかも上部は箱という狭い空間に閉じ込められ押さえつけられている。
ここは遠近法をはじめ、あらゆる物理的条件を外し、不条理で成立する景である。
こんな山奥にパイプや柵、更にはどの地点から伸びているのか不明な円柱がこの絵の空間を突き抜けている。意味はあるのだろうか、因果関係の不明な人為的な操作は、この景に不気味さを与えている。
左にある亀裂の入った円柱だけが少し傾いているが、他は直立である。垂直に立つという工作には人為的なエネルギーが不可欠であるが、この景をどのように解釈したらいいのだろう、少なくとも現世の物理には該当しない景である。
連峰の向こうの空の彩色の異様さ、地面の赤さび色、大量の《血》を暗示しているようでもある。箱の中の樹木は死者の魂だろうか、背後の柵は移動しないための抑止かもしれない。
哀しいまでに暗澹とした景には、攻撃される敵の要素は皆無である。少なくとも地獄のような責めはない。
『ハゲタカの公園』というタイトルは恐怖をそそるが、彷徨いでた新しい霊を護って欲しいという《願い》と《祈り》を描いたものだと思う。
写真は『マグリット展』図録より
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