
『Valleys』
道は真っ直ぐ続いている、両脇は急な勾配の遮蔽がある。金属質の壁は到底人力では登りきることが困難な勾配である。
作品は永久に続く状態の一端を切断して見せたものであり、完結ではない。地球は丸いということを知っているが、見渡す限りでは地平線は平らであり、海は水平にしか見えない。
継続、元に戻る道(通路)の一端であることは、突然の切断面で推測される。
しかし、突然の開口は《死》であり《生》の出入り口をも示唆している。続行しているが、終末であり発足であるという重複がある。
美しさの排除、善悪の起伏も消されている。ただ、道が続き、起点と終点の判別を不明にして、存在すべき空間だけが厳然と在る。
無だろうか、有だろうか。確かに刻まれた時空は、天空に向かって開かれている。とりとめもないほどの解放は自由を保障するが、地上に立つ生きた人間に許された道は一つしかない。しかも掟のようにはだかる壁は頑強であり無言の圧力と拘束がある。
解放と拘束、始まりと終わり、しかし道は続き歩き続けなければならない。
作品は、作家自身の人生に対する問いであり答えではないか。
写真は『若林奮ーVALLEYS』横須賀美術館
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