
『すみれの歌』
石化した紳士が二人、石壁、岩場の荒れ地に立っている光景、これを『すみれの歌』と称している。二人とも足を踏み出そうとしている、進行形のまま時が止まってしまったようである。
かつてポンペイの遺跡から空洞を固めて見たら人型が現出し、当時の生活状況などが判明したという報告を見たことがある。
現代もまたずっと遠くの未来から見たら、このような形で発掘されるかもしれない。
すみれは小さな野草である。『すみれの歌』というのは、微かな声の暗示ではないか。(スミレの花言葉は「謙虚/つつましやか」)
この光景に小さな声がする。この紳士(男)から垣間見える時代の名残り、主張などは、小さなすみれのつぶやき位にしか相当しないということかもしれない。
ある日突然時空が遮断される、それは死と呼ばれる。どこかへ行こうとしてその前に終わってしまう人生の息遣い。
時代の集積は、必ずしもすべてを包括しない。削られ、忘れられ、あるいは人型くらいは何かのはずみで発見される奇跡があるかもしれない。
マグリットの自嘲である。
(写真は『マグリット』西村書店刊)
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