続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

マグリット『冒険の衣服』

2015-12-20 07:09:11 | 美術ノート

 『冒険の衣服』…衣服はどこに?元来衣服など持たないオサガメと裸身の女体の画面である。オサガメが浮遊し、幾重かの地層も見えるということは場面は海底である。時空は古代といってもいいかもしれない。

 そこに目をつむり、両手を伸ばす若い女人。オサガメは彼女に触れなんばかりに低く遊泳している。
 オサガメである条件は何だろう。巨体であることと頭部が男根を暗示しているような気がしなくもない。裸身の女体に対する何か・・・男根のイメージの可能性が強い。

 だとしたら、女の高く掲げた両手はそれを拒否するもの、あるいは招くものという相反する要素を含んだポーズ(形体)ということになる。
 どちらも脊椎動物亜門ではあるがオサガメは爬虫綱、人間は哺乳綱である。両者における生殖はありえず、種の保存は成立不可である。

 しかし、現実ではない夢幻の世界である。女の髪は長年かけて伸ばした白髪であり、女としての時間を現わす要素が含まれている。
 元来生物は海から誕生したと言われている。海底深くの古代の物語は誰も知らない。
 人のDNAは女性からしか辿れないと聞いているが、求めるとも拒むとも思える夢想の中で人類のお母さんは今日の祖となったのだろうか。

 『冒険の衣服』に着衣は見えない。海底の深い眠りの時空こそが、冒険の衣服なのかもしれない。
 『大家族』の鳩がオリーブの葉を咥え持ってきたときから始まったとされる人類の新たな歴史に、対をなす大胆な空想である。


(写真は国立新美術館『マグリット』展・図録より)


『銀河鉄道の夜』174。

2015-12-20 06:52:29 | 宮沢賢治

「大きいね、このくるみ、倍あるね。こいつはすこしもいたんでない。」
「早くあすこへ行って見よう。きっと何か掘ってるから。」
 二人は、ぎざぎざの黒いくるみの実を持ちながら、またさっきの方へ近よって行きました。


☆代(いれかわる)媒(なかだち)は総て現れる化(形、性質を変えて別のものになる)の屈(まげる)の字の図りごとであると告げる。
  実(内容)を示すのは法(神仏の教え)であり、金(尊い)講(はなし)である。


『城』2179。

2015-12-20 06:38:42 | カフカ覚書

あの子がお城のある官房にはいっていって、数人の役人たちのなかからひとりをしめして、これがクラムだと言われたとき、彼は、クラムだと見わけられず、そのごも長いあいだ、この役人がクラムだという考えにどうしてもなじめないでいるのです。


☆終結(死)のある官庁(世襲的階級)に出現したとき、幾らかの反抗を先祖が示しましたが、それを言ってもクラム(氏族)だと認められず、そのご長い間クラム(氏族)だということになじめないでいるのです。