夕焼け金魚 

不思議な話
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暗い水槽の奥で

2015-06-27 | 創作

ある夫婦の話なのですが、奥さんが熱帯魚が大好きだったそうです。
夫婦の部屋には、大きな水槽が壁際にドンと置かれていて、色とりどりの熱帯魚が泳いでいたと言います。
旦那はあまり好きではなかったようですが、妻が好きだというので許していたそうです。
旦那が「君は魚の生まれ変わりじゃないのか」と冗談に言ってみたら「ええ、私の前世はきっと魚だったと思うの。もしもよ、もしも私が亡くなったら水葬にしてくれる」と真顔で言ったと言います。
表面的には仲の良い夫婦のように見えましたが、旦那は陰で愛人を作っていたという噂でした。
そんなある日、奥さんが事故で亡くなったというのです。
大好きな熱帯魚の世話をしていて、水槽に誤って落ちて溺れたというのです。
ちょっと信じられない事故なので、奥さんは自殺じゃないのかとか、旦那に殺されたのではと噂になったと言います。
奥さんが飼っていた熱帯魚はすぐに処分されたのですが、水槽は水だけになっても部屋に残されていたと言います。
「どうして水だけの水槽を置いてあるのだよ」と人が聞くと「娘がこのままにしてと言って泣くのだよ」と旦那は答えたと言います。
水槽の水を抜こうとすると娘さんが、激しく泣いて止めるのだそうです。
娘さんは、お母さんが水槽の世話をしていた光景を覚えていて、水槽が無くなるとお母さんの面影もなくなると思っていたようでした。
そんなある日、旦那と愛人が部屋の窓から飛び降りて亡くなったとそうです。
二人が飛び降りる理由が無いので、殺人かと言う事で警察が捜査したそうですが、犯人は分からなかったそうです。
唯一人の目撃者として、その夜、同じ部屋にいた娘さんの証言が残っているそうです。
「お父さんとオバサンがどうして、窓から落ちたのか話してくれる」と刑事が聞くと「お父さんの大きな声がしたので、部屋を見たら水槽の中からお母さんがずぶ濡れで起きてきたの。おとうさんとおばさんは大きな声上げて窓の方に逃げ出して、窓を開けると外に飛び出していったの」と言うのです。
「窓を開けてと言っても、この窓、上に挙げるタイプのものだからドアと間違えるはず無いのじゃない」
「でも、その時、窓は押すと外に向かって大きく開いたの」と言うのです。
玄関の処には防犯カメラがついていて、その夜は旦那と愛人と娘さん以外が入った形跡は無かったのです。十階建ての五階の部屋です。 
エレベータや廊下の防犯カメラに写らないように部屋に入るのは無理だったそうです。
部屋の中は水槽の水が半分以上も漏れて水浸しのようになっていたとも言います。
しかも水槽の縁には真新しい指紋が残されていて、それが亡くなった奥さんの物だと後で確認されたそうです。
結局、警察では事故として片づけざるを得なかったと言います。
でも、この話を聞いて金魚は考えたのです。
水槽の中にお母さんがいるといつも娘さんが言っていて、その日、水槽の中からマネキンでも紐で引き上げたら、旦那と愛人はビックリして逃げ出すのでは。
水藻の生えた水草は中に何か入っていても気付かないものですから。
水槽の縁の真新しい指紋だって、セロテープに奥さんの指紋が残っていたら出来る小細工です。
突然、水槽から人の形をした物が出てきたら、いつも娘が亡くなったお母さんが水槽の中にいると言われていたら、その時、開いた窓にドアの写真でも貼ってあったら、ドアだと思って飛び出すのでは。部屋の窓は消防のはしご車が来たら助けられるように、大きな窓だったのですから。
「たらの続く犯罪ですが、無いとは言えないのでは」というと。
「だけど、もし金魚の言う通りだとしたら犯人は、小学生の娘と言う事になるけど、小学生には無理があるのでは」と友達は言うのですけど、皆さんはどう思いますか。

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