夕焼け金魚 

不思議な話
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渓谷の少女達

2015-06-29 | 創作
友達から聞いた話です。
友達は沢釣りが趣味で、山に登るときは必ず釣り竿を持っていく程に釣りが好きな人です。
釣り竿は振り出しの物で、小さくたためますがやはり面倒な物です。
それでも持っていくという事はそれだけ好きなのだと思います。
釣り人も山好きな人と同様に人嫌いでありながら人好きな人が多いのです。
釣り場を知られると言って誰も連れに誘わないのに、なぜか釣果については人に語りたがるのです。
釣果が良ければ誰でも「今度、私も連れて行ってください」と言われる事になって「はい」と答える人が多いのですが、誘われたという話は聞いた事がありません。
その点、海釣り好きな人は誘っていく事が多いようです。
これは釣り場が猟師さんが持っているというか、知っているところに連れて行って貰うからだと思っています。
その日は、一人で山奥の沢に釣りに出かけたと言います。
友達だけの釣り場で、県道から少し脇道に入った沢なのだそうです。
獣道があるのですけど、草や木々に覆い被されていてちょっと目には道があると思われないところだそうです。
暫く下り道を進むと目的の沢に出るそうです。
そこは流れが急なのですが大きな岩があってそこだけ淀みになっていて、魚が集まる場所だそうです。
魚も急な流れの処で泳ぎ続けるのは疲れますから、そのような淀みに留まる事が多いそうです。
沢釣りの要点はいかに魚がいるところに糸を垂らせるかという事にあるそうです。
魚のいないところに餌を入れても食いつくわけがないという、分かり切った事なのですがそれが難しいそうです。
谷の底になりますから県道を通る車の音も聞こえずに、鳥のさえずりと木々を揺する風の音だけという釣り人には天国のような処だそうです。
天国がそんな寂しいところだと、行きたくないなぁと思われる方が多いと思いますが。
準備をして釣り糸を垂らして暫くした頃だそうです。
なにやら山の中が騒がしいのだそうです。場違いな少し甲高い笑い声が聞こえてきたそうです。
こんな山のそれもこんな処に女の子かよと思ったそうです。
でも、周りを見渡しても女の子が降りてこられそうな道は無いのですが、徐々に声が大きくなってくると言うのです。
どこから来るのかとキョロキョロしていると、急に声が下から聞こえて来たそうです。
何を話しているのかは、分からないのですけどキャキャと笑い声が釣り場には場違いに響いたそうです。
声が近づいてきたので、どうしてそんな事をしたのか分からないのですが木の陰に隠れたそうです。
そうすると上流から笑いながら女の子が流れてきたと言います。
顔だけ水から出して上流から流れてきて、時々水に潜るときに身体が見えたそうです。
身長は1メートル前後ですから歳は2歳か3歳の女の子が顔だけ上に向けて、時々身を翻して泳ぎ、流れてきてあの淀みの処に集まってきたのだそうです。
そこは俺の釣り場だと思って、思わず木の陰から身を乗り出して見てしまったそうです。その時、川の少女達と目が会ってしまって女の子達はビックリしたような目で友達を見ると、慌てて水に潜ってしまったそうです。
三人の白い裸身が一瞬、見えたけど深緑色の川の淀みの中に潜っていってそのまま見えなくなってしまったそうです。
そのまま暫く、その場に留まっていたそうなのですがついに女の子は顔を出す事はなかったと言います。下流に泳いでいったのかとも思いますが、流れが急で二・三歳の女の子が泳げるとは、なにより釣りに行ったときは梅雨時で水温も冷たかったはずなのです。
上流から顔だけ出して流れてくるなんて、普通は出来ないと思うだと言うのです。
「そう、普通の女の子だと出来るはずがないと思うのだけと、もしかしたら魚の一種なら大丈夫だと」
「手足は見えたのだろう。魚が笑って、手足があったというのかい」と思わず聞きました。「ああ、手足はあった、間違いなく。でも白い裸身と言ったけど背中がキラキラ光っていて鱗のようにも見えたのだよ」と言うのです。

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