労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

社民党は何もわかっていない

2007-02-27 02:34:14 | Weblog
 現在、すでに日本の政治は7月の参議院選挙に向けて動き出している。ところがわれわれ赤星マルクス研究会はこの公然たる政治闘争に参加しない方針である。
 
 われわれがこの公然たる政治闘争に参加しない理由は、一つには、われわれの力量不足もあるが、それ以上に、われわれは今回の政治闘争では自民党を追い落とすために活動しようという熱意がないからである。
 
 われわれにそのような熱意がないのは、現時点で「自民党を追い落とすために活動する」ということは、事実上、民主党を支持すると言うことを意味するからである。
 
 そして、われわれ赤星マルクス研究会は、民主党が先の国会で防衛庁の防衛省への昇格に賛成したり、民主党自らが「愛国心」を掲げて安倍晋三政権による教育基本法の破壊、(これはブルジョア民主主義教育の破壊でもある)を黙認したことは断じて容認できないことであると考えている。
 
 民主党が自民党とさほど変わりがない政党であるなら、労働者が民主党のために活動しなければならない理由は何一つないであろう。
 
 ましてや参議院選挙後に“政界再編成”がささやかれ、民主党のある部分と自民党のある部分が合流するということであれば、今の時点で「自民党を追い落とすために活動しよう」と労働者に訴えることは無責任なことであろう。
 
 またわれわれは、われわれが“ブルジョア民主主義”と呼んでいるものを破壊しようとしている勢力とは闘うが、“ブルジョア民主主義”を守るためには活動しないということも明言している。むしろわれわれは“労働者の民主主義”を指向しているのであって、そういう観点から、何の民主主義であれ(どのような階級関係に基づく“民主主義”であれ)、民主主義の諸原則そのものを形骸化したり、否定したりする勢力は容認できないと考えているからである。
 
 だから、われわれは今回の参議院選挙を“ブルジョア民主主義”防衛の「最終決戦」として闘おうとしている人々とも今回は一緒に活動することを見送ることにした。
 
 そしてわれわれが参議院選挙(これはひょっとすると衆議院選挙との同日選挙になるかもしれない)を頂点とする公然たる政治闘争に参加しないと決めた以上、あれこれの政治問題について発言することはあまりいいことではないと考えるので、われわれは必要最低限のものに限って、重大な問題に限って発言することにしたいと考える。
 
 社民党が『社会新報』に掲載した「主張」はそんなわれわれが見逃すことができない一つなので、今回あえて取り上げることにした。
 
 『社会新報』の「主張」では、
 
 「(六ヵ国協議の)合意文書には、初期段階措置として北朝鮮が60日以内に、寧辺にある核施設の稼動停止・封印し、国際原子力機関(IAEA)の査察を受け入れた上で、すべての核計画を申告するよう明記した。他の5ヵ国は60日以内に、重油5万トンを提供し、米国のテロ支援国家指定解除などの議論を開始する。さらにすべての核施設解体などの追加措置を取れば最大で重油95万トンに相当するエネルギー支援と人道援助を行なうことを明記し、日朝国交正常化など5分野の作業部会の設置を盛り込んだ。初期段階措置が実施された後、6ヵ国外相会議を開くことでも合意した。」
 
と述べられている。
 
 この党(社民党)はまったく不正確で理解力のない政党で、これだけの文章の中だけでもいくつもの誤りがある。
 
 最初に、60日以内に行われなければならないのは、寧辺にある核施設の「停止」であって、「封印」ではない。「停止」の意味は、稼働している核施設の運用をやめることであり、「核施設の稼動停止」のことである。
 
 これに対して、「最大で重油95万トンに相当するエネルギー支援」が行われるのは「核施設の閉鎖」であって、「核施設の解体」ではない。「核施設の閉鎖」の意味は核施設にセメントを流し込んだりして「封印」し、再使用できない状態にすることである。(北朝鮮には原子炉を解体する技術力がない。)
 
 それ以上に問題なのは、「他の5ヵ国」ではなく、「他の4ヵ国」であることだ。
 
 われわれが2月18日の『赤旗』の議事録を引用したように、正確な合意事項は
 
 「アメリカ合衆国、中華人民共和国、ロシア連邦、大韓民国は各国政府の決定に従って、(共同文書)第二条5項および第四条に規定された朝鮮民主主義人民共和国に対する支援負担を、平等と均衡の原則に基づき分担することに合意し、日本が自国の憂慮事項が扱われ次第、同一の原則に従って参加することを期待し、またこの過程で国際社会の参加を歓迎する。」となっている。
 
 
 六ヵ国協議は、確かに、六ヵ国(北朝鮮、アメリカ、中国、ロシア、韓国、日本)で行われたが、合意したのは北朝鮮と「他の4ヵ国」(アメリカ、中国、ロシア、韓国)の5ヵ国であり、日本は合意国には入っていない。
 
 これは日本政府が「自国の憂慮事項」(拉致問題)を抱えており、この問題ゆえに合意国には加われないと主張したからである。
 
 中国とロシアが、「拉致問題の重要性を理解する」と言っているのは、日本が拉致問題を理由にして、5ヵ国合意に加わらなかったという日本の立場を理解するということであり、もっと簡単に言えば、日本が5ヵ国合意に加わらなかったことを根拠にして日本を非難したり、制裁の対象にはしないということである。
 
 またアメリカのチェイニー副大統領や国務副長官がわざわざ来日して、“日米同盟”と“拉致問題”の重要性を確認するのは、アメリカもまた日本が5ヵ国合意に加わらなかったことを根拠にして日本を非難することはないと日本政府に説明するためである。
 
 日本が5ヵ国合意に加わらなかったことを公然と批判した韓国を除けば、中国、ロシア、アメリカは日本の立場を理解するといっているのであり、日本の立場を支持すると言っているのではない。(この点で安倍晋三政権には大きな誤解がある。)
 
 だから、合意文書では、「日本が自国の憂慮事項が扱われ次第、同一の原則に従って参加することを期待」するとなっており、中国、ロシア、アメリカ、韓国は日本が「自国の憂慮事項が扱われ次第」(すなわち、日朝作業部会が開かれた段階で)「同一の原則に従って参加することを期待」するともといっているのである。
 
 これは中国、ロシア、アメリカ、韓国は日朝作業部会が開かれるまで、日本が5ヵ国合意に加わらないことを容認し、猶予を与えるということでもある。
 
 ところが安倍晋三政権は「同一の原則に従って参加する」時期を、拉致問題が前進を見たとき、といい変えており、「拉致家族会」会長の横田滋は「前は“拉致問題が解決した時”といっていたが、今は“拉致問題が前進した時”といっている、どう違うか安倍晋三に一度聞いてみたい」といい。これを受けて政府はあわてて“拉致問題が解決した時”と言いかえている。
 
 そして塩崎官房長官によれば“拉致問題の解決”というのは①拉致被害者とその家族の帰国②拉致事件の真相究明③拉致関係者の日本への引き渡しを意味するといっている。
 
 こういった塩崎が提示した条件すべてを北朝鮮政府が受け入れることはまずないことを考えると、日本が「他の4ヵ国」と「同一の原則に従って参加する」日が来ることはありえないであろうという当然の結論が出てくる。
 
 つまり、「他の4ヵ国」(中国、韓国、ロシア、アメリカ)は日本の特殊な事情を考慮して、日朝作業部会が開かれるまで、六ヵ国体制からの日本の脱落を容認しようというのだが、日本政府は日本が六ヵ国体制に復帰することはもうないと世界に向かって宣言しているのである。
 
 そして社民党は、「今回の合意文書には、社民党が00年以降、韓国、モンゴル、中国など周辺国の首脳と会談し提唱し続けてきた北東アジア非核地帯設置と同総合安全保障機構創設を含む『21世紀の平和構想』と合致する内容が盛り込まれており、6ヵ国の合意を歓迎する。日本政府は、積極的に北東アジアの総合安全保障機構創設に努力すべきである。」といっている。
 
 しかし北朝鮮の核開発を契機に開かれた「六ヵ国協議」は北東アジアの主要国がもれなく参加しているという意味において、すでに事実上「北東アジアの総合安全保障機構」となっている。そして日本はこの地域的な「北東アジアの総合安全保障機構」から完全に脱落してしまって、復帰する見込みはまったくないのである。
 
 日本の国際社会からの孤立はすでに決定的なのである。

     

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1 コメント

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通りすがりの者ですが (カゼノモンジロウ)
2007-02-27 06:19:09
今の民主党は自民党の二軍みたいものですが、安倍の「美しい国」をぶっ壊すには頼りない野党に票を投じるしか手段がないというのが現時点での現実ではないでしょうか?

民主党に国政を委ねたくないという気持ちは私も一緒ですが、与党にノーを突き付けるという点では意味ある行動だと思いますよ。「悪政にはノーを」という国民の意志を阿呆な政治家に伝えることこそ、政治改革の第一歩だと私は考えます。自公、民主に代わる第三勢力があればいいんですが、第三勢力台頭の気配は当分無さそうですね・・・。

駄文を長々と書き連ねてしまい、大変失礼致しました。
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