労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

時よ止まれ、お前は美しい

2009-03-26 01:47:46 | Weblog
 ゲーテの『ファウスト』の最後の場面で、年老いて盲目となったファウストは、死霊レムルたちがファウストのために墓穴を掘っているシャベルの音を、建設の音とかんちがいして、

生活でも自由でも、これに値するのは
それを日々に獲得してやまぬだけだ。
だから、ここでは、危険に取りまかれて、
子どもも、おとなも、老人も有為な年をすごす。
わしもそういう人々の群れを見て、
自由な土地に自由な民とともに立ちたい。
その時は、瞬間に向かってこう言ってもよいだろう。
とどまれ、お前は実に美しい!と。

 という。

 こういって、ファウストは息をひきとるのだが、悪魔であるメフィストは、ファウストと、彼が現状に満足すれば、その魂を自分のものにできるという契約を結んでいた。

 劇では、死んだファウストの肉体から分離しようとする魂を自分のものにしようとするメフィストの試みは、バラの花をふりまきながらやってきた天使によって妨害され、天使に導かれてファウストの魂は天国へとのぼっていくことになっている。

 ちなみに、天使がファウストを助けたのは「だれにせよ、努めてたゆまぬものを、われらは救うことができる」からだそうです。

 これはゲーテが、キリスト教色の強いドイツの作家だったから、そうなのであって、神も仏も消滅しつつある現在の世界ではこういう結末にはならないかもしれない。

 ところで、ファウストが、死霊が墓穴を掘っているシャベルの音を「自由な土地の自由な民」の建設運動と聞き違えたのは、彼が目が見えなかったからであるが、現在でもこういう人はたくさんいる。

 その一人がアメリカ大統領のオバマ氏であるが、彼は通貨当局や中央銀行の公信用の拡大による通貨の過剰発行によって、金余り現象がすでに起きており、あちこちでインフレの前兆であるマイクロ・バブルが発生している現状をアメリカ経済の「改善の兆し」としてとらえており、政府と日銀による円安誘導政策の結果としてある、現在の円安(ドル高)を「現在、ドルはきわめて強い、投資家は米国は世界で最強の経済で、もっとも安定した政治システムがあるとみているからだ」と自画自賛している。

 これでは世界が

とまった!
時計は真夜中のように黙っている。
針が落ちる。
事は終わった。

 となってしまうではないか。

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