労働者のこだま(国内政治)

政治・経済問題を扱っています。筆者は主に横井邦彦です。

お答えいたします

2007-05-23 16:06:09 | Weblog
 できることならばしばらく“夏眠”または死んだふりをしようと思っていましたが、いろいろ質問が寄せられておりますので、一応お答えしたいと思います。
 
 第一に、赤星マルクス研究会は拉致家族会のことを目障りと思っているのではないのか、というご質問ですが、まったくその通りです。しかし、これは拉致問題の解決にとってという限定つきでかたられています。つまり、われわれは拉致問題の解決にとって「拉致家族会」は妨害物そのものだから、会として解散した方がいいといっているのです。だからここでどうしてマルクスの名前がでてくるのか理解に苦しみます。
 
 マルクスの時代には、他国民を誘拐して洗脳し、自分たちの道具に使おうという国家は存在しませんでしたから、こういう問題をマルクスに聞こうというのはちょっとスジが違うような気がします。
 
 また、拉致問題の解決にとって、なぜ現在の拉致家族会が妨害物そのものであるのかはわれわれは何度も説明をしたと思っています。
 
 そもそも、われわれは拉致家族会の諸君たちに、君たちの運動は拉致被害者救出運動なのか、拉致被害報復運動なのかはっきりさせよと何度も要求しているのに何の解答もありません。
 
 だから勝手に判断するほかなかったので、『諸君』6月号の櫻井よし子氏と横田夫妻の対話を参考にしたのです。この対談を全文引用してもいいのですが、ここで語られているのは北朝鮮にいかに打撃を与えるのかということだけで、北朝鮮でとらわれている人をいかにして救出すべきかということではありません。だからわれわれは拉致家族会の運動は拉致被害報復運動であり、拉致被害者救出運動にとって有害きわまりないと判断したのです。
 
 もちろん彼らは口では拉致被害者の救出を訴えているのですが、例えば、横田めぐみさんについて、日本政府や拉致家族会は横田めぐみさんが現在も確かに生存しているという確か根拠を持っているのだろうか。
 
 『諸君』の6月号では、横田夫妻はこのようにいっている。
 
 「滋 今でこそ次々に矛盾点が明らかになりましたが、当時は政府発表は一点の誤謬もないものと信じていましたから、ショックは大きかったですね。まあ、妻の直感にも根拠はないのですが(笑)。
 
 早紀江 まったくの勘ですわ(笑)。
 
 櫻井 でもね、早紀江さんのあの一言が、流れを変えたと思うんです。あの時、あの一言を発しなかったら、もう本当にめぐみさんは『死亡』とされたまま事態は推移していたかもしれないんですから。早紀江さんは本当はすごい人だなあって、いつも私は思うんです。
 
 早紀江 いえ、私自身には何の力もないんです。皆様に応援していただいて、いつも何か見えない力に突き動かされているような、自分でも不思議な感じがするんですけどね。
 
 櫻井 でも、そのお陰でずいぶんいろいろなことがわかってきたんですよ。政府が『遺骨を出せ』って言ったら北朝鮮はニセモノを出してきたし、診断書や死亡日時、目撃証言等々、整合性のなさがいくつも明らかになりましたでしょう。」
 
 自分の娘の生き死にに関するもっとも重要な部分で夫婦そろって笑って答えている、しかもその内容自体が「勘」であって、何らかの確証があるものではないことを自ら認めている(!)、ということはいかにも不思議としか言いようがないが、そもそもこの部分は自分たちの娘は生きている、よかった、よかった、という会話ではない。
 
 櫻井よし子氏が言う、その後、「いろいろなことがわかってきた」こと、すなわち、「『遺骨を出せ』って言ったら北朝鮮はニセモノを出してきたし、診断書や死亡日時、目撃証言等々」も横田めぐみさんの生死に関わることではなく、北朝鮮政府の説明には、「整合性がない」、つまりこの問題(横田めぐみさんの生死に関わる問題)で北朝鮮政府は何かを秘匿しており、真実を語ることができない立場にあるということを意味しているだけである。
 
 そして3人(横田夫妻と櫻井よし子氏)の言わんとしていることも、横田めぐみさんが生きているから何とかしなければならないというものではない、「横田めぐみ問題」は北朝鮮政府の弱点であり、この問題をついて行けば北朝鮮政府はおおいに困るだろうということを発見し、誰がこの北朝鮮攻撃の決定的「武器」を発見したのかということをお互いに賞賛しあっているのである。
 
 「横田めぐみさんは生きているから横田めぐみさんを返せ」と言い続ければ、それができない北朝鮮政府窮地に陥るだろうからすばらしい戦術だ、なんてかしこい戦術を考えたことか!などというのは、「横田めぐみさんの生存説」に立脚した戦術ではない。(われわれは横田めぐみさんについては死亡しているとも、生存しているとも分からない、分からない以上生存しているという推定のもとに行動すべきだという観点にたっている。)
 
 とにかく北朝鮮は憎いんだと、許し難いのだと、そういう意識ばかり先行して、いかにして北朝鮮政府に打撃を与えるのかということしか考えていないから、肝心なことが抜け落ちてしまっている。これでは北朝鮮に拉致されて現在も生きている人は永遠に帰ることはできないでしょう。
 
 第2に、横井某が21年前の「鴨田小拉致未遂事件」について語っているのは「釣りっぽい」というご指摘ですが、横井某の「鴨田小学校拉致未遂事件」の関連のブログはこのブログから全部削除しました。それがこの問題に対するわれわれの解答です。
 
 第3に、これは右からも左からも評判がよくないのですが、もう一時きちんと説明します。
 
 『共産党宣言』でマルクスは、
 
 「ブルジョアジーにたいするプロレタリアートの闘争は、内容上ではないが、形式上ははじめは一国的である。どの国のプロレタリアートも、当然、まずもって自国の国のブルジョアジーをかたづけなければならない。」といっています。
 
 こういう観点からするなら、日本政府と闘いたいと熱望している在日朝鮮人の同志に、われわれとともに日本政府と闘いたいのであれば、君は日本国籍を取得すべきだと進言する(あくまでも友人としての忠告であり、命令ではない)いうのは当然のことだと思います。(なお、誤解しないでいただきたいが、われわれはすべての在日朝鮮人にそのように呼びかけたのでなく、われわれとともに日本政府と闘いたいと申し出ている在日朝鮮人に対して、そのように言ったのである。)
 
 またわれわれに意見を寄せてくれた「ああ、労働者」なる人物も、自分がプロレタリアートであるという自覚があり、北朝鮮の金正日体制と闘いたいというのであれば、当然北朝鮮籍をとって北朝鮮のプロレタリアートとして自国政府(北朝鮮政府)打倒の闘いに参加すべきでありましょう。北朝鮮の労働者階級は喜んで君を迎え入れてくれるはずだ。
 
 われわれとしてはまったく当たり前のことを言っているつもりだが、こういう当たり前のことがまったく理解されないのは、こういう人たち、すなわち、われわれのこの見解を聞いて憤激する人々はわれわれとはまったく別の観点から問題に接近しているからにほかならない。つまり、単に民族主義的、排外主義的な観点から、金正日倒せ!日本政府を倒せ!といっているだけであり、日本と北朝鮮の戦争を渇望しているにすぎないのだ。だから「ああ、労働者」氏も自分の本当の名前である「大日本帝国万歳」(おそらく、この場合の「万歳」は「漫才」の誤記であろう)氏と改名する必要があるのではないか。
 
 第4に、われわれが国鉄問題で、労働者であるならどこの職場でも同じ、というビラをくばったそうですが、われわれは最初からこういう観点で問題に接近したのではないはずです。国鉄民営化が決まる直前の名古屋の国労全国大会では、われわれ社労党愛知県委員会は、「今こそ断固として闘え!ストライキを組織せよ!」というビラを国鉄労働者に配っています。(実際にこの時はストライキなどの大衆的な実力闘争のみが事態を転換させうる唯一の手段でしたが、国労本部はそうはしなかった。)
 
 われわれがもしこのようなこと(労働者であるならどこの職場でも同じということ)を主張したとするなら、それはすでに国鉄民営化が決定され、実施されるときでしょう。国鉄闘争が敗北し、国鉄労働者一人一人にどうするのかという問題が切実な問題として提起されているときに、出向や広域採用はいやだ、あくまで現地採用でなければ受け入れられないというのは闘争として観念的だ。すでに体勢が決している以上、広域採用に応じて生まれ育った土地を離れることを選択したり、他業種へ転職するという選択肢も考えられると国鉄労働者に述べることはそんなに非難されるべきことだとは思いません。
 
 労働組合は政党ではありません。ですから大きな闘争に決定的に敗北した労働組合の組合員が、生活のために転職したり、意にそわない出向を受け入れたり、見知らぬ遠隔地への異動を受け入れたりすることを裏切り行為だと非難する権利は誰にもありません。
 
 誰がそこまで組合員を追い込んでしまったのかということこそが問われるべき問題ではないですか。もちろんそれは理不尽な民営化を強行した中曽根自民党であり、国鉄経営陣が第一義的に責任を負うべきものでしょうが、われわれはそれだけではないと思っています。