本棚7個じゃ足りません!

引っ越しのたびに蔵書の山に悩む主婦…
最近は二匹の猫の話題ばかりです

『夏期限定トロピカルパフェ事件』

2006年04月25日 | 

つい装丁買いした『春期限定いちごタルト事件』を読んだ日から、
この続編を待っていたのですよ!
(その間に『氷菓』『愚者のエンドロール』を慌てて揃えました。
好きな作家さんが増えるって、幸せー♪)

高校二年の夏休み、小鳩常悟朗と小山内ゆきの
<小山内スイーツセレクション・夏>めぐりはどうなるのか?!
連続する小さな謎…が一転して大きな伏線になる。
好きなパターンです。

青春小説としても味があるけれど、
ミステリとしてもきちんと完成されているし。
推理モノで多く見られる執拗なまでの薀蓄はないけれど、
爽やかで淡々とした筆致が読みやすく、
すいすい読んでいるうちに佳境でのめり込んでしまう。

しかも、結構フェア、なんです。


『夏期限定トロピカルパフェ事件』米澤穂信 東京創元社 2006

 小鳩君と小山内さん。傍目には、ごくごく普通の地味なカップルと映るだろう、この二人。実は恋愛関係でも依存関係でも無く、ことがあればお互いに利用しあう、純粋な互恵関係、なのである。
 …思い切り周囲から浮いてしまった中学時代の教訓から、高校では異能(性癖?)を封印し、まっとうな“小市民”を目指すことを誓った彼ら。己の本性を否定し、日常を平々凡々と過ごすためには、互いの存在がいい隠れ蓑。もしどちらかが誓いを忘れて“小市民”ラインを超えたとしても、すかさずもう一人が制止するという、暗黙の了解もできている。
 小鳩君の過去を知る同級生の健吾が、時々表舞台に引っ張り出そうとするけれど、群集の中に埋没してひっそり生きようという決意は固い。不思議な問題に気をとられてはいけないのである。
 しかしながら、世間には誘惑の種は尽きない。些細な事件が積み重なり、巨大な波となる。さて巻き込まれた二人は小市民を貫けるのか?!今回はこれまでになく小山内さんが危険だぞ!


<注:以下ネタバレありかも、です!>

小山内さんのアノ性格が好きです。

二人が、自分の厭な部分を変えたい、
と思う気持ちは分からない訳でもない。
理想が“小市民”というのも、頷ける。
当たり障り無く過ごすって、意外に難しいものだから…。
わたしだって、“世間様と同じような”ことを
無理なくできる自分になれなくて、幾つになっても、もがいています。
猫を背中にしょいすぎて、なにが“ありのままの自分”なのか、
今となっては判然としないこともあるし。
ありのままに生きることが果たして幸せなのかと、
自分に問うこともあるし…。

でもでも、小山内さんの“狼”は魅力的だと思うの。
あのカウンターも、さすがー!な感じ。
いっそ開き直って、次々と企んでほしいくらいよ。

小鳩君にはついイラッとするけど(笑)。
名探偵の苦悩ほど、傲慢に見えるものはないね~。
小鳩君、嫌いじゃないよ。嫌いじゃないけど。
結局推理、やめられないじゃん!と突っ込みたくなります。
もう逃れられないサガですね。
そういえば名探偵って、大抵頭の中で謎解きをするだけでは止まらず、
最後には犯人を名指しして、じわじわ責めていますね。
性格悪い人が多いのかしらっ。
(ま、そういう話も好きなんだけど)

ともかく、時折描かれるこの二人の知恵比べは楽しいです。
小鳩君は小憎たらしい賢しさで相手を読もうとするけど、
(だから、嫌いじゃないよ!
小山内さんの回転の速さにも敬服です。

そうだ、健吾だって、そう馬鹿にしたものでも…。
男気があって、ウザイほどまっすぐで。
日頃小鳩君から軽んじられているくせに、
助けを求められると向こう見ずに駆けつけるなんて。
一昔前の少年マンガなら、主役級の性格よ。
(しかしミステリには、やはり小鳩君ぐらい複雑な青年が相応しい…)

最後は続編へとつながりそうな終わりかた、でした。
どうなるんでしょうね、あの二人。
4部作くらいで、少し心の成長もあって完、だといいんだけどな。
とりあえず<小山内スイーツセレクション・夏>類似商品でも食べて、
続きを待つことにいたします♪
シャルロットとりんごあめが食べたいわ




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