ねえ、キンモクセイの秋
去年は仙台の坂の町で。
おととしは埼玉の深夜のバイトの帰り道。
秋の淋しい夜空に孤独な星がまたたく
フォーマルハウト、みなみのうお座の一等星
私はこの季節がものすごく好きだけど
やっぱり、やっぱり。
くるしくなってしまう
どこへ行ってもキンモクセイはあるんだなあと
不思議な気分になる
私にとっては、
私にとってこのにおいは
思い出の象徴で、せつなさの象徴で
私のすきになったひとは自然が好きだったな
祥太は、春を告げる椿の花を教えてくれた
キンモクセイの枝を花瓶にさしていた
私にとって祥太は、やさしさだけでできたような、ひと
だから、いま、私は祥太に結婚の報告もできなくて
なんでかなあって、不思議だよ。
でもいずれ誰かの口から伝わるのだと思うから
それでいいなとおもう
できれば自分の口から伝えたかったけれど。
もう、どこに行ってしまったのかわからないひとになってしまっていた
中学生の淡い恋だった。儚い恋愛だったね。
だけど祥太に教えてもらったこと、私たくさん今も持ってる。
おもえば、ことばを綴ることを教えてくれたのも
祥太だったね。
私にたくさんのことばをくれた。
それは簡単な言葉で、だけど私に沁みこんだ。
だからいま、私はこうして文字がかけているのかもしれないなあ
ありがとうね。