8月15-16日に蝦夷富士と呼ばれる羊蹄山(1,892.7m)に登った。羊蹄山は百名山の一つだが、あまり強く登りたいと思っていた山ではなかった。その理由は深田久弥の「日本百名山」の次の一文が頭の隅に残っていたことによるものだろう。
「おどろいたことには途中沢をなく水もなく、何の変化もない道をただひたすらに、富士山のように登るのである。それでも中途までは見晴らしが利いて慰めになったが、それから上は霧の中を一途な急坂で、登山というより、体操訓練の一種でしかなかった」
さて余市のゲストハウス余市を7時過ぎにレンタカーで出発し、途中のコンビニエンスストアで朝食を取り、8時半頃半月湖登山口に到着した。羊蹄山には幾つか登山ルートがあるが、一番ポピュラーな倶知安(比羅夫)コースはここからスタートする。
8月15日 8時45分登山開始。天候は曇のち晴。1合目までは緩い登りである。9時31分2合目到着。登山口から2合目までの標準コースタイムは1時間なので重荷(避難小屋で一泊するため食料・水を担いでいる)の割にはまずまずだと安心した。
しかしここから上はところどころ滑りやすい急な斜面の連続であまり眺望もない。気温は高くないが湿度が高いので汗をかく。8合目で昼食を食べたりしてのんびり歩いたので、9合目に到着したのは13時35分だった。登山口から4時間50分かかっている。標準的なコースタイムは4時間ー4時間20分(休憩時間なし)なので、休憩時間を差し引いても標準タイムより少し時間がかかっている。重荷とトムラウシ登山の疲れが残っているためだろう。
9合目に到着する頃は晴れてきて、倶知安の街並みが良く見えた。爽やかな風が吹き渡り気持ちが良い。こうなると現金なもので私はすっかり羊蹄山が好きになっていた。
トラバース道をたどって避難小屋に到着したのは13時43分だった。この日の避難小屋一番乗りだった。
避難小屋には夏の間管理人さんが常駐していて、整備は行き届いている。宿泊の協力金は1,000円だが妥当だと思う。
私はシュラフ・エアマットを持参したので、利用しなかったが寝袋(300円)毛布(200円)の貸出もある。羊蹄山は水場のない山だが、避難小屋では緊急用に天水を分けてくれる。ただしあくまでも緊急用なので水は運び込むべきだ。
小屋の前にはリンドウやチシマギキョウが咲き乱れている。時々顔を見せるシマリスの姿を見ながら持参の焼酎を飲んでのんびりした午後を過ごした。
8月16日 曇時々晴 午前3時前に朝食も食べずに避難小屋を出ていく人がいる。頂上でご来光を見る人たちだ。我々はもう少しゆっくりして5時21分に小屋をでた。気温は8度前後でひんやりしている。5時38分9合目分岐点。ここに荷物を置いて水筒・防寒着をもって頂上に向かった。火口の上にでた時ブロッケン現象をみた。過去にも1度見た経験はあるが写真撮影は今回が初めてだ。
6時22分 山頂到着
霧で視界が良くないので外輪山を一周せず往路を引き返した。7時8分9合目到着。
その下はあまり面白くない急な登山道が続いているが、我々は山頂付近でみたブロッケン現象の感動を抱いてスタスタと降っていった。
9時40分登山口到着。
私にとって羊蹄山は最初苦しくて最後は貴重な経験を与えてくれた楽しい山だった。深田久弥と真逆の印象を持ったのはまさに気象条件の違いとブロッケン現象を見ることができた故であろう。