OMOI-KOMI - 我流の作法 -

For Ordinary Business People

我が身を守る法律知識 (瀬木 比呂志)

2023-09-15 09:24:10 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。

 私自身、大学は “法学部”出身 ではありますが、民法も総則と物権法ぐらいしか履修していませんし訴訟法系はノータッチ、社会人になってからも「法務」を専門的に所掌したことはありません。さらには、いわゆる “生活の中の法律” という切り口いえば、その実務的な法的知識は全くの素人レベルという恥ずかしい有様です。

 ということで、少しはこの手の法律知識も整理しておきたいと思い、本書を手に取った次第です。

 まず、著者が本書を記すにあたって掲げた基本コンセプトですが、それは「予防法学」です。
 「予防法学」とは、「法的紛争を防ぐための知識、知恵、法的リテラシー」のことだと定義づけていますが、本書でその重要性を説くに至った問題意識について、著者はこう語っています。

(p32より引用) 法的知識といっても、専門書に書かれるような難しい内容ではなく、普通の市民にも十分に理解できる事柄です。
 しかし、先に述べた「所有権」や「契約」の例からもわかるとおり、日本人にはこうした法的常識ないし感覚が欠けていることが多いのです。

 わが国の場合、このあたりの基本的な知識の付与は、中学校での「公民」でなされる建付けになっているのでしょうが、現実の受験科目を意識した教育実態から思うに、当該科目で十分な成果を求めるのは難しそうですね。

 そうだとすると、多くの人たちは、結局、実際に法的トラブルに直面して初めて、あれこれ調べ回らざるを得なくなるのですが、そういった事態を少しでも回避させたいと著者は考えたようです。

 その手助けとなり得る “最低限の法的リテラシー” の付与を目的として、本書では、「交通事故」「不動産トラブル」「家庭トラブル」等、身近にも起こり得るような法的紛争の実例を数多く取り上げています。
 そして、それらに対する予防対応の解説を加えていくのですが、その語り口は、純粋な法解釈や裁判事例に基づきつつも、とても具体的かつ平易で、著者の姿勢として “法学初心者”への分かりやすさ を意識していることは強く感じられます。

 併せて、印象に残ったところですが、読者への期待として、著者独自の価値観を映し出しているような記述もありました。たとえば「相続税対策(節税対策)」についてのこういったくだりです。

(p192より引用) 私自身は、合法的な節税はもちろん否定しませんが、基本的には、税金は払うべきだという考えです。そして、その上で、政治家と官僚による無駄遣い・・・については、徹底的に批判してやめさせ、また、税負担については、弱者への配慮を前提としつつも、公平公正を徹底させるべきだと思います。
 人々が税金対策に血道を上げ、税の使い方や負担の公平の問題がその陰に隠れてしまう事態は、もしかしたら、為政者、また、権力、富、既得権をもつ人々にとって、大変好都合なことかもしれません。そのことも、考えてみていただければと思います。

 そうですね。制度面での妥当性・公平性がある程度確保されていることが大前提にはなりますが、確かに著者の主張には一理あるように私も思います。

 身近で個人的な法的課題に止まらず、ひろく政治的・社会的課題についても問題意識をもつことは、とても大切な “法的リテラシー”ですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生

2023-09-14 18:07:23 | 映画

 
 2016年に公開されたアメリカ映画です。
 
 「マン・オブ・スティール」の続編との位置づけですが、スーパーマンとバットマンを戦わせるとは思い切った構想ですね。私の感覚では、この組み合わせは、“ゴジラ対ガメラ” に相当するぐらいのインパクトです。
 
 複数のヒーローたちが登場するパターンとしては、「アベンジャーズ」のようにオールスターチームのメンバーとして参集するタイプのものがありますが、本作の場合は、“正義のヒーローどうし” がガチで戦うという点で、とても画期的ですね。
 その分、戦いの背景や理由の作り込みが悩ましく、本作では「ガメラ3 邪神覚醒」のパターンに類似した動機を採用しています。
 
 ちなみに、ラストの「ワンダーウーマン」の参戦は、後続シリーズへの導線という意味が大きいのでしょうが、唐突であってもガル・ガドットを引っ張り出したのはエンターテイメント作品として正解でしたね。こういった “サービス精神” はさすがだと思います。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕パイレーツ・オブ・カリビアン/最後の海賊

2023-09-13 10:54:36 | 映画

 
 2017年に制作されたアメリカ映画です。
 
 定番の人気シリーズ、主人公のジャック・スパロウはジョニー・デップの “はまり役” ですし、彼にとっても代表作ですね。
 
 たぶん作品の出来としては極々“並” だと思いますが、エンターテイメント作品としてはそこそこの水準はキープしています。
 加えて、今回登場した新キャラクタの設定は、過去のシリーズからのコアファンにとっては結構楽しめたのではないでしょうか。
 
 あと、特にラスト、あまりにも唐突ですが、キーラ・ナイトレイの登場はインパクトがありましたね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヤラセと情熱 水曜スペシャル『川口浩探検隊』の真実 (プチ鹿島)

2023-09-12 11:22:13 | 本と雑誌

 

 以前聴いていた「未来授業」というpodcastの番組に著者のプチ鹿島さんがゲスト出演していて紹介していた著作です。

 1970年代後半から1980年代にかけて登場した “娯楽としてのテレビ番組”は、昨今のバラエティとは全く別物で異様に高揚したエネルギーに包まれていました。

 本書は、そのころの「エンターテインメント番組の制作現場」を、当時の関係者からの取材をもとに掘り下げた気になる内容だったので、楽しみに手に取ってみました。“『川口浩探検隊』の探検隊” というコンセプトもいいですね。
 実際、期待どおりとても刺激的なトピックが満載だったのですが、それらの中から特に印象に残ったものをいくつか書き留めておきましょう。

 まずは、制作現場の実体、放映された映像以外の部分
 “川口浩探検隊” の放映で「見えているところ(テレビで映しているところ)」には、当然その前後のプロセスとしての舞台裏があるのですが、そこの方が圧倒的に面白いといいます。

(p55より引用) つまりは「スポットが当たってるところだけしか見てない」ことになる。それは本当のジャーナリズムなのか。わかりやすさはテレビでは善で正義だ。しかしそこのみに収束してしまうとすごく大事なものまでが一緒に斬り捨てられることはないだろうか。“真実らしきもの"を知るためには多分のめんどくささが必要だ。多角的に見て、大いなる無駄を経て、やっとおぼろげにたどり着けるはず。

 そういった“まわり道”を知る当時のスタッフ、“川口浩探検隊” の黎明期から関わっていた小山均さんのの回顧譚。この番組に付いて回った「ヤラセ」についての本音です。

(p167より引用) 「現場はどんどん面白くなっちゃうんですよ。視聴率に関係なく、もっと何かできないかって探求してしまうんです。・・・」
 この言葉は深い。テレビのヤラセは視聴率主義が原因だと外野は一言でまとめたがるが、現場にはまったく別の価値観もあったのだという。良く言えば、作り手の業の深さであり情熱である。

 「視聴率を狙ったヤラセじゃない」、現場での高揚感のスパイラルを感じますね。この気持ちは理解できます。

 さて、当時の番組制作関係者からの取材で見えてきた “川口浩探検隊” とは何だったのか?

(p125より引用) バラエティでもない、ましてやドキュメンタリーでもない。目的地は『インディ・ジョーンズ』。彼らのライバルはハリウッド映画だったのである。
 その世界観を聞くと、ヤラセという言葉から解放感を感じる。他の番組ではドキュメンタリーになりそうな土地にたどり着いても、探検隊はせっせとロケのための荷物を運び、理想の絵面を探すだけ。
「本当にそのつもりでやったら、ちゃんとしたドキュメンタリー番組にもできましたよ。NHKでも放送できるようなね。貴重な映像もいっぱい撮れています。だけどそういうのは、しなかったですね」

 これも当時の “テレビマンの矜持” でしょう。
  “川口浩探検隊”、現在の制作環境では作り得ない突き抜けた番組だったようです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ミラクル・ニール!

2023-09-11 09:06:42 | 映画

 
 2015年に制作されたイギリス映画です。
 
 SF・コメディ作品なので “荒唐無稽” でもいいのですが、着想もストーリーも、私の好みのテイストではなく、まったく楽しめるものではありませんでした。
 
 モンティ・パイソンといっても、私には特段の思い入れはありませんし、その “笑い” の波長は私にはどうにも合わなかったですね。
 
 登場するキャラクタの設定も共感できるところはなく、エイリアンたちの造型にもセンスを感じません。
 せっかくのケイト・ベッキンセイルが出演も、残念な結果で、もったいなかったですね。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔アニメ〕機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096

2023-09-10 09:38:15 | 映画

 
 2016年に放送されたアニメ作品です。
 
 遥か昔のガンダムを知っている人からみると懐かしいでしょう。“宇宙世紀” を舞台にしたテレビアニメシリーズは久しぶりです。
 
 ストーリー自体は、「ラプラスの箱」というモチーフについての納得感はともかく、シンプルです。
 
 だとすると、登場人物の魅力がポイントになるのですが、ともかく一番光っていたのは「マリーダ・クルス」ですね。そのキャラクタ設定は秀逸で、儚くも強烈な存在感がありました。
 
 反面「?」だったのは敵役の「フル・フロンタル」。こちらは、キャラクタの表情・姿・ファッション・・・、どれをとっても、もったりと時代がかっていて垢抜けない印象でした。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

バカと無知 (橘 玲)

2023-09-09 17:16:23 | 本と雑誌

 

 以前聴いていたTokyo FMのpodcastの番組「未来授業」橘玲さんが講師として出演したとき紹介していた著作ですが、その内容が面白そうだったので読んでみたものです。

 かなり評判になっている本なので図書館での貸出の待ち行列が長く、手にするまでにかなりの時間がかかってしまいました。

 刺激的なタイトルですが、内容も橘さんの主張がストレートに表明されていて思い切りの良さを感じますね。それらの中から特に印象に残ったところをいくつか書き留めておきます。

 まずは、“ほめて伸ばす子育て/教育” についての考察。「やっかいな自尊心」の項からです。

 1970年代にアメリカ社会で “自尊心ブーム”があり、“ほめて伸ばす教育” が提唱されました。しかしながら、 近年の研究では、ほめる(=自尊心を高める)教育は学業の成績とは無関係だというのです。

(p124より引用) 自尊心の高さは成績にわずかに相関していたが、・・・これをわかりやすくいうと、「恵まれた家庭に生まれ育った賢い子どもは、学校でうまくやっていけるので、成績も よく自尊心も高い」のだ。
 このようにして、「自尊心は原因ではなく結果」だという当たり前のことが科学的"に証明された。自尊心が高いと学業成績がよくなるのではなく、テストでよい点数をとることで自尊心が高まるのだ。

 よくある “相関関係と因果関係のいたずら(混乱)”ですね。

 もうひとつ、脳科学で考察された「記憶の仕掛け」について。

(p261より引用) 脳というのは「ニューロンの活動から生じる複雑系の動的ネットワーク」で、それ以上でもそれ以下でもない。記憶を保存しておくハードディスクやメモリはどこにもない のだ。
 では、記憶とはなんだろうか。それは原理的には、ニューロン間の「つながりやすさ」と「つながりにくさ」の組み合わせでしかない。脳がなんらかの刺激を受けたとき、つながりやすいニューロンが発火し、つながりにくいニューロンは沈黙する。脳にはこれ以外の機能はないのだから、こうしてつくられるネットワークのある状態が、特定の 記憶を意識させると考えるほかはない。

 さらに、解説は続きます。

(p263より引用) 記憶は特定の刺激によってその都度、脳のネットワーク内で再構成される。それ以外のときに存在するのはニューロンの痕跡だけだ。だからこそ、記憶が生成される瞬間に、それを生理学的に阻害すると、ふたたびその記憶をつくりだすことができなくなってしまうのだろう。

 これは、記憶を呼び起こそうとするとき、何等かの刺激(電気・薬剤・視覚等)が与えられると、その影響が記憶内容を歪めてしまう可能性を指摘しています。
 このような経緯で生まれる “虚偽記憶”が、「冤罪」やPTSD等の「精神疾患」の原因にもなっているというのはショッキングですね。

 さて、本書、タイトルは「バカと無知」というかなり乱暴でなもので、読む前は(勝手に)昨今のSNS上の「炎上問題」や「フェイクニュース」といった問題を扱っているのではと思っていたのですが、それは見当外れでした。
 「差別」「偏見」といった人間の感覚や行動を、脳科学や心理学・行動経済学的視座から橘さん流に解説した小文集です。

 「週刊新潮」の連載の再録とのことで、テンポよく話題が展開するので取っつきやすい著作だと思います。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕ユナイテッド93

2023-09-08 10:20:30 | 映画

 
 2006年に公開されたアメリカ映画です。
 
 「9.11(アメリカ同時多発テロ)」でハイジャックされた航空機のうちの1機を舞台とした作品です。
 
 乗員・乗客・テロリスト・航空関係者・軍関係者、それぞれのハイジャック時の様子をリアリスティックに描き出しています。そのため出演者も有名な俳優は敢えて起用せず、役柄によっては、当該業務経験者や当時現場にいた当事者も起用したという徹底ぶりです。
 
 重いテーマですし、結末もショッキングな作品ですから、私見をもってどうこう評価するのは避けたいと思います。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕DUNE/デューン 砂の惑星

2023-09-07 12:07:14 | 映画

 
 2021年に公開されたアメリカ映画です。
 
 SF小説「デューン砂の惑星」を原作とした作品の前編ですが、それだけで155分、全体ではかなりの大作ですね。
 
 同名の映画は、今から40年ほど前、1984年に映画館で観ています。残念ながら「砂漠の怪物」の印象だけで、ストーリーは全く記憶に残っていません。
 
 本作も、前半部分ということもあってあまりインパクトのない展開ですし、舞台も “砂漠” で平板です。とはいえ、その割には、映像自体は結構見応えがありました。
 
 あと、出演者でいえばレベッカ・ファーガソン。「ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE」では、最後の出演になって残念だったのですが、こちらの方で、いい役にはまっているようです。
 
 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

戦争の地政学 (篠田 英朗)

2023-09-06 11:24:16 | 本と雑誌

 いつも利用している図書館の新着本リストで目についた本です。

 このところ “地政学” という言葉をよく目にします。今日の世界情勢を理解するに必須の視点を提示しているようですが、私は全く勉強したことがありません。ということで、手近な本書を手に取ってみました。

 私のような初学者にとって、初めの一歩としては馴染みやすい構成ですね。さっそく、私の興味を惹いたところをいくつか書き留めておきます。

 まずは、「地政学」の基礎としての “2つの異なる源流” について。「英米系地政学」と「大陸系地政学」の世界観の整理です。

(p53より引用) マッキンダー地政学は、地理的条件によって作り出される構造的な要因で生まれる二つの政治共同体のグループの間の葛藤を描き出したうえで、シー・パワー群のネットワークが持つべき普遍主義の世界観にそった政策がどのようなものでありうるかを示す。ハウスホーファー地政学は、特定の民族と特定の領土との有機的結びつきを洞察したうえで、力の強い政治共同体の生存圏の存在を認めていく。そして複数の生存圏の相互関係が織りなす多元主義の世界観にそって進めていくべき政策の方向性を示そうとする。

 この2つの世界観はあまりにも異なっていることから、本書ではこの点についてはこれ以上議論を深めるのではなく、2つの考え方の並存を前提として解説を進めて行きます。

 ちなみに、最近の大きな事件である「ロシアのウクライナ侵攻」の地政学的位置づけについては、こう言及しています。

(p110より引用) 国連憲章体制は英米系地政学理論に裏付けられたものであると言えば、それはそうだろう。ロシア・ウクライナ戦争は、英米的な地政学理論の世界観と、大陸的な地政学理論の世界観のせめぎあいの発露としての性格も持っている。正式な国際秩序を支えているのは、より英米的な地政学理論に根差した世界観のほうである。大陸的な地政学理論は、秩序攪乱要素として働いて いる。

 さらに、ひろく現代の紛争の構図を “ふたつの地政学の考え方” で整理すると以下のように言えます。

(p179より引用) 対テロ戦争は、英米系地政学の論理に沿ったアメリカの積極的な対外行動によってもたらされた。しかしユーラシア大陸の旧ソ連外縁部における一連の紛争は、大陸系地政学の発想に沿ったロシアの拡張主義的な対外行動によってもたらされている。この違いを見極めることなく、雑駁に混同してしまうならば、現代世界の紛争の構図を見通すことはでき ないだろう。

 そして、もう一点、この二つの地政学の盛衰の実例として、とても興味深く感じたのが “日本における地政学の捉え方” の変遷です。

(p121より引用) 日本において地政学は、大日本帝国時代の帝国主義的政策と結びついていたがゆえに、第二次世界大戦後の時代にタブー視されるに至った。そのため地政学が1970年代以降に徐々に注目されていった際、地政学は戦後の日本で禁止された「悪の論理」であると喧伝された。タブー視されていた歴史が、逆に秘密の教えとしての特殊な魅力の源泉となったのである。

 外見的には、英米系から大陸系へ、そして戦後は、また英米系へ回帰という変遷を見せた日本の「地政学」の歴史ですが、その文脈で戦時中に “大東亜共栄圏”思想 として隆盛し、戦後否定されたのは「ハウスホーファーに代表される大陸系地政学」でした。

(p121より引用) 日独同盟の理論的基盤であったと言える有機的国家観を基盤にした勢力圏の思想が衰退し、ナチス・ドイツの生存圏の思想および大日本帝国の大東亜共栄圏の思想がタブー視された。終戦直後から、大陸系地政学のタブー視と、マッキンダー理論が代表する英米系地政学の重視は、表裏一体の関係をとって、戦後の日本の外交政策を特徴づけてきた。

 現実的には、日本においてはこの二つの地政学の違いは強く意識されなかったようですが、「マッキンダー理論(英米系地政学)」は、たとえば、シー・パワー同盟である現代の日米同盟を明確に説明する理論だということなのです。

 さて最後に、本書を読んで、最も腹に落ちた解説です。

(p165より引用) 民族自決原則を普遍的に適用し、一度独立した地域には主権平等と武力行使禁止の原則を一律に適用していく国連憲章体制は、国家間紛争を防ぐことに優先順位を置き、内戦の防止を主眼としたものとは言えない。・・・20世紀以降の国連憲章体制が作り出した国際的な安全保障体制は、どうしても大国間戦争を防ぎ、何とかして国家間戦争を防ぎ、できれば国家内の紛争も防ぎたい、という考え方で成立している。

 第二次世界大戦以降の武力紛争のうち「内戦」の数が大半である所以がよく分かります。
 未成熟な体制下での新興国の誕生は、基本理念としては望ましいものの、現実社会という点では、国際政治における無責任さの拡散であるといった性格も否定できないようです。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔アニメ〕蒼天の拳 REGENESIS

2023-09-05 15:11:20 | 映画

 
 2018年に放送されたアニメ作品です。
 
 一世を風靡したコミック「北斗の拳」の流れを汲むシリーズですが、本作は、メッセージ性が強かったり、絵のトーンが柔らかになったりとかなりテイストが変わっています
 
 特に異なっているのは “主人公のキャラクタ” でしょう。“ストイック”な北斗の拳の「ケンシロウ」と、“茫洋”とした蒼天の拳の「霞拳志郎」、好みは分かれますね。
 ちなみに、私は“もったりとしながら理屈っぽい”「拳志郎」よりも、一本気で素直な「ケンシロウ」の方が好きですね。
 
 また「コミックの北斗の拳」を読み直すとしましょうか。
 
 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕マン・オブ・スティール

2023-09-04 09:16:40 | 映画

 
 2013年に公開されたアメリカ映画です。
 
 「スーパーマン」が主役のヒーローものですが、以前に クリストファー・リーヴ がスーパーマン役を演じた作品も制作されているので、スーパーマン誕生時から描いている作品としては “リブート版” ということになります。
 
 ストーリーは大雑把、映像も派手で、特に終盤のニューヨークの摩天楼での戦闘シーンは少々やり過ぎ感も否定できません。ただ、SFエンターテイメント作品ですから、このくらい思い切ってもいいのかも知れませんね。
 
 批評家のスコアはバラバラのようですが、それでも、しっかりした作りだと感じるのはキャスティングに手を抜いていないからだと思います。
 ヒロインのエイミー・アダムスもよかったですが、ケビン・コスナー、ラッセル・クロウ、ダイアン・レインという重量級の布陣は、なかなかの存在感でした。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ぜんぶ、すてれば (中野 善壽)

2023-09-03 11:47:14 | 本と雑誌

 

 会社の友人がSNSで紹介していた本です。
 刺激的なタイトルなので、大いに気になりました。

 著者の中野善壽さんは、日本や台湾の企業にて要職を勤めた後、2011年からは寺田倉庫の代表取締役社長兼CEOとして幅広い分野で活躍された方です。

 本書では、その中野さんのユニーク?な思考が気さくな語り口で開陳されています。なかなかマネできるものではありませんが、期待どおりのメッセージの中から特に印象に残ったものを覚えに書き留めておきます。

 まずは、「慣れを捨てる」

(p58より引用) 人間は慣れるとバカになる。
頭を使わなくなって、衰えていく。
だから、できるだけ不慣れな機会に身を置くことが大切だと、
普段から意識しています。

 私は、初対面の人が苦手で、人付き合いが下手です。ズボラな性格なので、あちこち出歩くこともありません。そういう私にとっての “不慣れな機会” のひとつが行き当たりばったりの読書なんですね。雑読で “頭が慣れる” のに何とか抵抗を試みているつもりです。

 もうひとつ、「こだわりを捨て、相手が求めるものを差し出す」の章から。

(p152より引用) 一番大事なのは、こだわりを捨てること。
 「こういう店をつくりたい」というイメージをガチッと固めてから挑まないほうがいい。

 戦略的ではありますが、その戦略は “ゼロベースの柔軟な発想” に委ねるというもののようです。委ねるのは、その土地の「文化」や「ルール」といったもの。すなわち「相手」です。

 さて、経営者としてとてもユニークな中野さんですが、もう50年来毎日欠かさないことがあります。
 それは “自分自身に誓いを立てるお祈り” 。始めたきっかけが「自己啓発本」を読んで影響を受けたからだそうです。

 他人のアドバイスであっても納得できるものは素直に受け入れる、この “素直な心の構え” が、“自分自身に対して正直に生きる” 中野さんの本質なのだろうと思いました。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

2023-09-02 10:37:42 | 映画

 
 2008年に公開されたアメリカ映画です。
 
 「インディ・ジョーンズ」シリーズの第4作。
 ちょうど今年(2023年)、第5作目にあたる「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」が公開されたのですが、劇場で見損ねてしまったので、代わりにその直前の作品である本作を観直したということです。前作といっても「15年」も経っているんですね。
 
 ちなみに、公開時のこの作品の評価はかなり酷かったようです。
 ケイト・ブランシェットのアカデミー賞受賞後の出演作としては、少々もったいない役どころだったり、核実験のシーンのように意味不明な演出もあったりしましたが、宝探しの途上の仕掛けやドタバタも適度でしたし、プロット自体はそれほど悪くは無いですよ。
 
 定番のエンターテイメント作品としては、今でも十分楽しめる出来だと思います。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

〔映画〕大怪獣ガメラ

2023-09-01 11:50:01 | 映画

 
 1965年に公開された日本映画です。
 
 東宝の “ゴジラ”シリーズに対抗して作られた大映の “ガメラ” シリーズ第1作目の作品です。
 昭和ガメラシリーズは、第2作目の「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」以降の作品は、劇場公開時も含め結構何度も観ているのですが、この第1作目は初めて観ました。
 
 この時期までに東宝のゴジラシリーズは、モスラやキングギドラといった人気怪獣が登場していたので、怪獣映画は日本映画のヒットコンテンツとしては定着しつつありました。そういう時流に乗って、大映としても後発ではありますが当時の社長の肝煎りで手掛けたそうです。
 
 さて、その大看板の “ガメラ”、文字通り「カメ」がモチーフですが、口から火を噴き、頭や手足を引っ込めたところからの火炎噴射で空を飛ぶという奇抜なアイデアは大当たりしました。
 
 ゴジラシリーズは途中から下手なギャグを取り込んで急激に劣化していきましたが、ガメラシリーズも、特撮に力が入っていて何とか観られるのは、この第1作目からギャオスが登場する第3作目までですね。それ以降はゴジラと同じく “お子さま映画” になっていきました。

 

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする