海兵隊は今まで何度も存続の危機を乗り越えてきたとのこと。その歴史の中には大きな進化と小さな進化があったようです。
(P176より引用) 水陸両用作戦という概念は、海兵隊の過去の経験の延長から生み出せるものではなかった。それは、現状の改善から生まれる小進化ではなく、過去から不連続的に飛躍する大進化のきっかけになった概念である。概念が生まれれば、それを形にすべく、過去の知識の蓄積と関係が薄くても、必要な知識を創造することができる。概念は、経験を越えて自在に飛べるのである。小進化としての洗練は経験的であることが多いが、大進化としての再創造は経験を越える概念で始まることが多いのではなかろうか。
大進化は、新たな概念に触発された革新的進化ですが、小進化はいわゆる「カイゼン」活動と同系統の地に足の着いた営みです。
この本では、以下のようなシステマティックな具体的プロセスが紹介されています。
(P166より引用) 現在でも海兵隊員は、全員が研究開発に関する情報提供が義務づけられ、訓練終了後ごとに、たとえシャベル一本の改良すべき部分でも発見すれば、部隊から即、開発センターへ知らせるシステムが確立されている。
また、以下のような変革プロセスも「カイゼン」活動の具体的姿のひとつです。
(P168より引用) 組織が過剰適応に陥らず絶えず革新への挑戦を行なっていくためには、組織が基本的なものの見方、認知枠組み、思考前提を日常的に創り変えるプロセスを制度化していることが重要である。
海兵隊の場合、そのための仕組みが二つある。
まず、海兵隊司令官が推薦図書を公表し、隊員全員に議論のきっかけを提供する伝統がある。・・・
さらに、海兵隊将校向けの月刊誌・・・は、「アイデアと争点」という自由投稿の紙面を中心に構成され、・・・海兵隊のあり方をさまざまな視点から絶えず見直している。・・・この紙面の目的は、「自由な議論とアイデア交換の場を提供し、・・・思慮に富む投稿を通じて毎年多数の海兵隊員が、海兵隊の進化と進歩に貢献するアイデアを提起できるようにする」ことであり、「それらに対する反論、意見、補給は建設的なものでなければならない」と付記されている。
後者の「アイデア共有」の仕掛けは結構どこの組織でも見られるものだと思います。
むしろ、前者の「ブックリスト提供」の方が興味深く感じます。何となくアナクロニズム的な感じもしないわけではありませんが、同じ書物を読むことは、問題意識を共有する非常に簡単な方法です。
こういう単純なやり方の方が現実的な実効があがると思います。
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